スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

不定期開催ミニコーナー ~SS(ショートショート編)~植物界女王の目覚め(前編)




これは後に植物の精霊を統べる存在となるフローラが精霊になるまでのお話である










「今日も日の光が心地いいですわ~」

 貴族が暮らしていそうな立派な宮殿の裏庭に造られているような手入れの行き届いた色とりどりの花や草木が植えられている庭園。ここはフローラが将軍たちの元を離れ久しぶりに戻ってきた故郷とも言える場所にあるかつて彼女が暮らしていた小さな家に造られた自慢の庭である。
そこそこ裕福な家庭に産まれたフローラは幼い時から植物と触れ合う機会が多く、十代の頃から茶道や華道を習いその腕前は大人顔負けだと言われていた。そんなフローラは成人すると実家よりも自然に溢れた田舎のほうで暮らしたいと思い単身この地にやってきて、茶道や華道を教える傍ら植物や作物を育てて生活をしていたのだった。その時からフローラの元には植物の精霊たちが姿を見せるようになり、その力を借りた植物魔法も習得できるようになった。その時ぶらりと立ち寄った将軍たちに珍しい植物の力を面白がられたことから将軍たちと行動を共にするようになったという。将軍たちと共に世界を渡っていく中でまだ見ぬ様々な植物たちを多数見ることがあった一方で失われていく自然を目の当たりにしてきたフローラは自然を守るためにも戻ってきたこの地で再び草木を育て植物の精霊たちと対話を続けていくことにしたのである。
そんなある晴れた日の昼下がりである。いつものようにフローラは庭先で午後の暖かな太陽の光を浴びながら庭を眺めていた。

「……しかしそれにしても植物たちが元気になってくれませんわ……どうしたのでしょうか」

 庭を眺めていたフローラはそう心配そうにつぶやいた。一目見た感じでは分からないのだが、フローラのように長く植物を育てる経験を積んできた者であればすぐに分かるくらいに庭の植物たちの様子は明らかに違っていた。
最初にこのことに気付いたのは三日ほど前のことであった。すぐに普段と違うことは分かったのだが、とりあえず様々な手は尽くしてみたものの元気になってくれる様子はなく、その原因は流石のフローラにもすぐには分からなかったのである。

「……精霊たちも今日は姿を見せてくれませんし……何かあったのでしょうか……」

 気がかりなのはその日を境に精霊たちの数も少なくなってきていることである。将軍たちと共に旅をしていた時代に当時精霊界の王女とも言えるネレイスから精霊の話はいろいろ聞くことができたのだが、精霊は自然の力の源であり、当然植物の精霊は植物の力の源であることから植物の調子が悪くなれば必然的にその精霊も調子を崩すことになり、また逆に精霊が調子を崩せば植物も元気がなくなってしまうこともあることを知ったために、フローラは精霊たちの身を案じるようになった。こうして欠かさず植物の手入れをしているのも植物の手入れをすることで精霊が少しでも楽になってくれるであろうという理由もあった。

「……あぁ……でもこんな暖かい日の光を浴びてしまうと眠くなってしまいますわ……」

 精霊のことを心配してはいるものの暖かな日の光はフローラを強烈に眠りに誘っていた。フローラは植物を育てることが好きであるのだが、それと同じかそれ以上にお昼寝が大好きである。草木の手入れをした後や天気のいい昼下がりなどは庭先でいつも気持ちよさそうにお昼寝をするのが習慣になっていた。今日の陽気もお昼寝をするにはぴったりでフローラは早速いつものロッキングチェアに座って日の光を浴びながらうとうとし始めた。

「すやすや……」

 将軍たちとの旅をしている時も昼寝の多さと寝付くまでの早さには定評があった。心地よい日の光と風に吹かれゆらゆらと揺れながらフローラは気持ちよさそうに整った寝息を立てて眠りについてしまった。










「ふぁぁ……よく眠りましたわ~……」

 恐らく二時間ほど眠っていただろう。ぐっすりと気持ちよく昼寝ができたフローラはゆっくりと体を起こした。

「……あら……?」

 しかしすぐに何かがおかしいことに気付いた。ロッキングチェアに揺られながら寝ていたはずなのに起きた時には緑の葉のベッドのような場所に寝かされていた。周囲の様子も見覚えのない霞のかかった森のような場所になっていた。

「……これは……夢でしょうか……?」

 辺りの空気もどことなくこれまでに感じたことのない不安定なものであった。周囲が森であるためか植物の力を感じるのだがその力には揺らぎがあり、時には今にも消えてしまいそうなほど弱くなってしまうこともあった。

「……あ」

 そんなフローラの前にフローラが庭先でいつも見かけていた植物の精霊がやってきていた。その精霊はフローラが気付いたことが分かると一目散に森の奥の方へと駆け出していってしまった。

「待って下さいな!ここはどこなのですか……!?私に何があったのですか……!?」

 フローラはすぐさまそう言ったが精霊はフローラの呼びかけに応えることはなかった。

「……仕方ありませんわ……追いかけてみましょう」

 今のこの状況は精霊たちが何か知っているはずである。森の奥へと消えた精霊の後を追いフローラも森の奥へと踏み入れていった。





「……どこに行ってしまったのでしょうか……」

 森の中に道はなく、進んでいっても景色がほとんど一緒であり、さらには徐々に濃くなっていく霞の影響があり普通の人間であったら間違いなく道に迷ってしまっていたであろう。しかしフローラはそれでもただひたすらに精霊が消えていった方向に向かって森の中を突き進んでいた。

「……森を抜けましたわ……」

 やがてフローラは森を抜け再び先ほど寝ていた広場のような場所にやってきた。一瞬もといた場所に戻ってきてしまったのではないかと考えたが、霞の奥から先ほどは見えなかった淡い緑色の光がうっすらと見えた。そこをめがけさらにフローラは歩みを進めていく。

「これは……こんな立派な樹があるだなんて……」

 霞の奥に広がっていたのはフローラもいまだかつて見たこともないような巨大な樹であった。その幅はフローラが両手を広げた幅の三倍くらいはあり、高さは見上げても全くてっぺんが見えないほどであった。

「……でも……今にも枯れてしまいそうですわ……」

 しかしその幹、枝はボロボロであり、葉は大部分が枯れてしまっていた。足元には折れた枝や葉が散乱しており、先ほどから見えていた淡い緑色の光は幹についた傷から発せられていた。樹木医の免許も持っているフローラであったが、当然この樹が何であるのか分からない以上処置をしてあげることはできなかった。それにもし仮にこの樹が何なのか分かっていたとしてももう手遅れであっただろう。

「……こんなに立派だというのに……残念ですわ……」

 目の前で一本の巨木の命が尽きてしまう。それが心苦しく、なにも出来ない自分の無力さがあふれ出てきた。

「……あなた……は……」

 不意に樹の方から苦しそうな声が聞こえてきた。フローラは自分でも分からなかったがすぐにこれがこの樹の精霊のものであるということが分かった。

「何があったのですか……!?」

「……貴女が……みんなの言っていた……私の……」

 幹に大きくついた傷の間から全身蔦や葉に覆われた女性のような精霊が姿を現した。体はもうボロボロであり、これまで見てきた淡い緑色をした精霊の力の源と思われるものが流れ出続けていた。

「……お願いです……この樹を……助けて下さい……」

「どうやって……!?」

 フローラはこの樹を、この精霊を救ってあげたかった。というよりも救わなくてはいけないような気がしていた。

「……もう私は助かりません……ほどなくして消えてしまうでしょう。私が消えればこの木も枯れてしまうでしょう……この木が枯れてしまえば……世界中の植物が枯れてしまうことになるかもしれません……」

「なんですって……!?」

 精霊が発した言葉はフローラにとって衝撃的な言葉であった。不意に聞こえた声が精霊のものだと分かったこともこの木を救わないといけないと分かったこともこの一本の巨木が世界中のすべての植物を支えている命の木であったことを本能的に感じ取っていたからなのかもしれない。

「……貴女のことはみなさんから聞いています。……世界で一番植物と接し植物を愛している人間だと……」

「……そう……言って頂けるのであれば……光栄ですわ」

「ですから……貴女にこの樹を……」

 言いかけた精霊の傷口がさらにぱっくりと開き緑の光が噴出していった。

「!!」

「……時間がありません……貴女に……」

 一段と精霊の声は弱弱しくなる中、精霊の口からフローラの将来を決める言葉が発せられた。

「……この樹の精霊になってもらいたいのです……」



(後編に続く)
スポンサーサイト

不定期開催ミニコーナー ~SS(ショートショート編)~神を支える“神”(後編)Part3

「……もう少しです……!」

 ルミナスの足元には複雑に何重にも重なった魔方陣が描かれていた。魔方陣の大きさ、複雑さはその威力や消費魔力に比例していることから今回ルミナスが使おうとしているものは最大級の威力を誇るものであることが想像できた。

「絶対に後ろには攻撃を通しませんよ!」

 そのルミナスを守るようにして立つミディアは見た目こそボロボロであるものの、いかなる攻撃をも防ぐ盾としての役割を果たすには十分すぎるほどの力強さと輝きがあった。

「遅い遅いっ!」

 そもそもルミナスに攻撃を向けさせないために注意を引き続けるネレイスは高速で飛び回り翻弄しながら両腕につけたボウガンを乱射し切れ目のない弾幕を張ってゴーエムの視線を釘付けにしている。

「……狙い放題だな」

「そうだね、本当にネレイスは優秀だね」

 ラヴィスはその間に背後から何回も攻撃を叩き込んでいく。手負いのランディも折を見て攻撃参加をしている。ここまではランディが指示している通りに事が進んでいた。

「……準備できました……行けますよ……!」

 そこにルミナスがそう知らせてきた。髪の青さがより鮮やかとなり展開した光の翼はより一層輝きを増していた。

「じゃあ決めちゃっていいよ」

「任せて下さい……」

 そしてルミナスの足元の魔方陣が光を放ちながら回り始めた。

「我,天界女王の名に於いて……全てを滅する破邪の光をここに……」

 天界言語による詠唱が始まりミディアは盾を地面に突き立てた。そこから薄い光の壁が前方を覆っていく。ミディアの究極守護術である絶対守護障壁と双璧をなしている広域守護術砂塵の城砦である。個人に効果がある絶対守護障壁とは違い一定範囲に効果を発揮するもののその分消耗も激しく連発が難しい。ここぞと言う場面に使う切り札のような技である。ルミナスを守るようにして障壁が張られたことで磐石の状態が作られた。

「……最終審判!!」

 ルミナスが右腕を振り下ろすと上空から大きな光の槍が1本寸分違わずゴーレムを貫き通した。その一撃によりゴーレムは爆砕、ルミナスは魔力を使いきりその場に崩れ落ちた。

「……よし、片付いたかな」

「……やれやれ、思いっきりやれとは言ったが倒れるまではやらなくていいだろうに」

 ラヴィスはルミナスを抱えあげた。ぐったりとしてはいるが息はあるので心配はないだろう。

「調査隊のみんなもみんな無事みたいだよ~」

「ただ……遺跡……大分壊れちゃいましたね……」

 ネレイスは調査隊の面々を連れてやってきた。ゴーレムの攻撃や吹き飛ばされたミディアの影響で遺跡は大分傷んでしまっており、それを心配しているようであったがひとまずは自分たちが無事だったので安堵しているようである。

「……そうだね、大分被害は出たけどラヴィスたちが救援に来てくれたから大分抑えられたと思う、助かったよ」

「何、すぐに行けなくて悪かった。お前らは神界に引っ込んで怪我の手当てをして来い。後はネレイスがやってくれる」

「あはは……まぁ大丈夫だよ、ゆっくり休んできなよ」

 ミディアほどではないがランディの体からも大分血が滲んでいた。我慢していたわけではなかったのだが一段落したところで落ち着いたせいか思い出したように体が痛み始めてきたようである。

「……そうだね、お言葉に甘えてそうさせてもらうよ」

「あ……はい、では失礼します……」

 ランディはミディアを連れて一足先に戻っていった。

「じゃあ我もルミナスを連れてく、後は任せた」

「はーい、気をつけてね」

 ラヴィスもルミナスを抱えて天界へと向かった。

「……じゃあ行こうか~♪」

 そして残されたネレイスは調査隊の面々を引き連れ護衛の任務を開始した。





「く……これでよく動けてたな……」

 神界の医務室のような場所でランディは横になっていた。隣でミディアも同じように横になっており、ランディよりもはるかに重傷なのだが当の本人は平然と治療にあたってくれているスタッフと言葉を交わしていた。

「……昔から体は丈夫だったからな……」

 ランディとミディアが出会ったのははるか昔のことだった。将軍と共に世界を回っていたあの時代に立ち寄ったとある町でとても名の知れていた精霊使いがミディアであった。その時はまだ鎧ではなく白いワンピース姿で鋼の力を宿した精霊を操っていた。そのミディアがひょんなことから一緒に来ることになり、その時に面倒を見たのがランディだった。その時は特に意識していたわけではなかったのだがいつの頃からかランディは当時から戦場で鋼の精霊と共に戦い勇ましいようなミディアが普段は“女の子らしくない”ことや少々抜けていて時々突拍子もないことを言ってしまうことを恥ずかしがっていることが可愛らしく思えるようになってきた。またミディアも戦いの場では冷静かつ的確に指示を出しているランディが自分の前では皆の前で見せてくれない表情を見せてくれることが少し嬉しかったのである。お互いに心を寄せ合うようになりやがて結ばれることとなった。

「……ぐっ……」

「ランディさん!大丈夫ですか?」

 体勢を動かしたら傷が開いてしまったのかランディが思わずうめき声を上げると隣のミディアが心配そうに声をかけてきた。

「……大丈夫だ、それよりミディア、君の方が重傷だろう?」

「これくらい平気です、骨が折れなければ重傷なんて言えませんよ!」

 ミディアはランディと結ばれると“ランディさんを守りたい”という思いから鋼の精霊を使っていた経験とそのために鍛えていた体を生かして重装兵になろうと決意をした。将軍やランディの元を離れて数ヶ月後、再び将軍とランディの目の前に帰ってきたミディアは今の緑と橙色の鎧を身に纏った立派な重装兵としての姿だった。重装兵として帰ってきたミディアはランディだけでなく将軍たちみんなを守る盾として大いに活躍していくことになった。そのミディアをランディは頼もしく思いつつも常に最前線に立たせることに不安を感じつつもあった。今回も結局はミディアにここまでの重傷を負わせる事になってしまい申し訳なく思っていた。

「……骨折れてるんじゃなかったのかい?」

「あ……でっ……でも重傷だったとしてもこれくらい平気ですっ!」

「……ま、君は大丈夫ってことを言いたいのはよくわかったよ」

「……でも……その……ランディさんは大丈夫ですか?」

 しかしそれはミディアも同じだった。突発ではあったとはいえランディを守れなかった事をかなり気にしているようであった。

「……ミディア、気にしなくて大丈夫だよ」

「あ……はい」

 そんなミディアの思いをくんでそっと声をかけた。この生活を始めてから相当の年月が経ち、ラヴィスとルミナスほどではないにしろ互いのことはよく理解している自信はある。

「……とりあえずお互いにまずは傷を癒そう。そしたら……頑張ってくれたんだ、少し労わってあげるよ」

「ランディさん……分かりました」

 神界八将の1人、智神と呼ばれるランディは他の“神”たちを支える重要な存在である。それは勿論鎧神のミディアも例外ではない。しかしそのランディを一番支えているのはミディアなのである。この2人に支えられてこれからもSkyBlueは、そして神界は安定した未来を歩んでいくことになるだろう……




~SS編~ 神を支える“神”(後編) 完


本日の更新内容

・用語集精霊界編  盲目の精霊 



どうも、ラヴィスです。就職活動の影響でなかなか思うように作業進められませんでしたね……。

早いところこのコワレタセカイ編ともう1つやりたいことをやっていきたいんですけどね……就職活動とうまく調整しながらやっていきたいと思います、はい。

それではまた次回の更新で~


本日の更新内容

・用語集天界編  十翼の天使 



どうも、ラヴィスです。今回の更新はちょっと簡単なものに、コワレタセカイ編の関係者を追加です。

SSランディ編はもう少しでできそうです……こちらも頑張って進めていきますねー。

それではまた次回の更新で~



コワレタセカイ ノ モノガタリ ~フコウノセカイ 探索編~



「……これだけ歩いても何も見つからないか……」

 将軍は何もない世界をひたすら歩きまわっていたが、この世界には石ころ1つも転がっていなかった。ただの真っ白で何もないということは創造主が何かの手違いで空間だけしか作ることができなかったのか、それもとここにあった世界が何か都合の悪いことをしたために消し去られたのか……

「……いずれにしても神界が絡んでくるのか……これは報告ものだな」

 これ以上の探索は諦めて一旦将軍は戻ろうとした。しかし異世界の扉は今のところうんともすんとも言わない。異世界の扉はたどり着いた世界でなすべきことを終わらせないと次の世界へは渡れない不思議な特性を持っている。恐らくはこの何もない世界で“何か”を見つけ出さないとこの世界から脱出する事すらできないのだろう。

「……通信もつながらないし……こりゃ参ったな……」

 将軍は被っていた帽子を外して頭を掻いた。一度大きく溜息をついたがすぐに将軍はにやりと笑っている。

「……だが面白くなってきたじゃねぇか。この世界の謎……暴いてやるとするか」

 再び帽子をかぶり直し将軍は再び果てしなき無の世界を進んでいった。





「……地上をこれ以上探してもやはり何も出てこないだろうな」

 しばらく捜索を続けたもののやはりこれ以上歩き回っても何も見つけられないと悟った将軍は意を決したように1本の刀を抜いた。木刀のような質感をした将軍の愛用する刀の1つ、黙黒橅であった。地属性を有したこの刀を将軍は下に向けると真っ白な地面に向かって突き立てた。刀から大地の力が発せられ、その力に呼応するかのようにして地面を抉り大地の力が吹き上がっていった。

「……地面からは反応なし……か」

 しかし刀が刺さった部分に特に変化は無かった。ここの地面に何か隠されているということはないのだろう。

「……じゃあ今度は……」

 地面に刺した黙黒橅を回収して鞘にしまうと今度はまた別の刀を抜いた。緑色の美しい刀身を持った風舞蔓である。風属性を有したこの刀を抜き空へと向けた。

「こっちはどうだ!?」

 そして一気に振り下ろすと衝撃波が発生しそのまま将軍の前方はるか先まで飛んでいった。

「…………」

 将軍は飛んでいった衝撃波をじっと見ていた。

「……怪しいな」

 特に目に見えた変化は無かったように思えたが将軍は何かを感じ取っていたようである。将軍はもう一度向きを少しずらして衝撃波を放った。その衝撃波は先程と同じように将軍の前方へと飛んでいったのだが、途中で何かに弾かれるようにして消えた。

「……みっけ!後はここを……」

 そしてさらに将軍はもう1本の刀を抜いた。宵闇色の刀身をした軍神将軍を代表する刀、夢宵桜である。右手に夢宵桜を、左手に風舞蔓を握り両腕を大きく広げて構えると目を閉じて集中し始めた。やがて刀は宵闇色と薄緑色の光を集め刀の長さは倍近くにも見えるようになり、そこで将軍はゆっくりと両手の刀を頭の上へと振り上げていった。

「……おらぁっ!」

 頭の上で2本の刀を重ねて同時に思いっきり振り下ろした。1つにまとまった光の刃から発せられた衝撃波は1本の時とは全く比べ物にならないほど長く大きなものとなり、まるではるか彼方まで延びる一続きの巨大な刀を振り下ろしたかのようになっていた。その力で先程衝撃波が弾かれた謎の空間はガラスのように砕け散り、その先にまた新しい空間が広がっていた。

「よっ!」

 将軍は迷うことなくその空間に飛び込んだ。開いた空間は将軍が飛び込むと閉じられてしまい、帰ることはできなくなった。

「……こっちに来たもののここもさっきのところと変わってないじゃねぇか……ん?」

 一見先程までの空間となんら変わりがないように思えたが、周囲を見回してみると少し遠くの方から先程まではなかった青白い光が見えた。恐らくあそこに行けば何かがあるのだろう。

「……よし、これでこの世界の謎が少し解けるんじゃないか?」

 将軍は2本の刀をしまい足早に青白い光が見える方向へと向かった。





「……おいおい……これは……」

 将軍が見た青白い光の正体は精霊のようであった。しかしその姿は精霊だといえ既に原型をとどめていないようなものであった。ネレイスから話を聞いたことがあったため分かったことだが、この青白い光は精霊の生命エネルギーであり、ところどころ体の一部だったと思われる部位も見られることから既にこの精霊は命が尽きているはずである。しかしそうなればとうに消滅していてもおかしくはないはずであった。それでもこの精霊は体を失ってもなお生き続けているようであった。

「……アナタハ……」

 やがてその精霊は将軍に静かに語りかけてきた。その声は苦しみと嘆きに満ちた女性のような声であった。

「……オレはただの風来坊だ。……名前は……将軍ってことにしてくれ」

「……ナゼ……ココニ……?」

 将軍の来訪に精霊は驚いているような感じがした。

「……さぁな、オレは世界を適当にふらついている。たまたまこの世界にやってきたんだが……」

「……ココハ……モウホロンダセカイ……ダレモ……フミイレレラナイセカイ……」

「……誰も踏み入れられない……?」

「……スベテ……ワタシノセイ……ワタシガツヨケレバ……コノセカイハホロビナカッタ……」

「なぁ、聞かせてくれよ。この世界は一体なんなんだ?」

「……ゴメンナサイ……ソレハ……デキマセン」

 精霊に将軍は質問をぶつけていくが精霊は何も教えてくれなかった。

「……どうしてだ?」

「…………」

「……そうかい、じゃあもういいよ」

「……イマハ……ナニモイエマセン……デスガ……」

「……ん?」

「……アナタガ……モシ……フタタビコノセカイニフミイレルコトガデキタノデアレバ……オハナシデキルカモシレマセン……」

「……いいだろう、約束してやろう」

「……ワカリマシタ……」

 精霊はそう言うと将軍の目の前に小さな石ころのようなものを造りだした。

「……なんだコレは」

「……ココデアナタガワタシトアッタシルシ……」

「……これを持って再びお前に会いに来いと」

「ハイ……」

 将軍が受け取った石ころのようなものはこの世界の地面を削り取ったかのように真っ白であったが、ある一部分だけ何かの模様が掘り込まれているようであった。

「確かに受け取った……じゃあそろそろ帰らせてくれよ」

「……ワタシヲカイホウシテクダサイ……」

「……解放……?」

「ハイ……コノセカイハワタシノノコシタオモイデツクラレテイル……ダカラワタシヲカイホウスレバ……」

 精霊が意味するところの“解放”が何を意味しているのか将軍にはすぐに察しがついた。

「いいのか?お前を解放しちまったらもう会えないんじゃないか?」

「ダイジョウブ……コノセカイニシバラレタワタシハイチドカイホウサレテモマタスグコノセカイニシバラレル……」

「……あーなるほど、どこかで聞いたことある感じだな」

 この精霊も将軍たちと同じように世界の理から逸脱した存在なのであろう。自分たちも仮に死んだとしても再び転生される……それと同じなのだろう。

「じゃあ……行くぜ」

 将軍は夢宵桜を抜いた。既にバラバラとなっている精霊を斬ることに若干抵抗はあったものの迷いは無かった。

「……雲散霧消!」

 将軍は一文字に夢宵桜を振りぬいた。その刃は青白い光を発する中心部を寸分違わず捕らえていた。

「……アリガトウ……」

斬られた精霊の体は霧のようになって消えていった。

「お、異世界の扉が勝手に……!」

 空間の主である精霊がいなくなったことにより将軍のいる空間は崩壊を始めた。将軍はすぐに光の海に飛び込みこの空間を脱出した。異世界の扉は崩壊する世界とともに砕け散るようにして消えていった。

「……マ…テマス……チケ…ノ……ニナ…………ソウ…ウシュノ……ス……テ……」

 異世界の扉の中で聞こえた精霊が最後に残したその言葉の意味を将軍が理解できるようになるのはまだまだ先のことであった。










「……本当だ、座標入力してるのに行けねぇ……」

 異世界の扉を通り将軍がやってきたのは神界であった。早速接続履歴から先程の世界と接続を試みたのだが何度やっても“その座標軸コードは存在しません”というエラーが出てきていた。

「……まぁ崩壊した直後だしな……」

 将軍は諦めたようにそう言うと神界宮殿の方を向いた。

「……ひとまずこれは報告しないといけないしな」

 将軍は神界宮殿に向かって歩き出した。その手には先程託された石ころが握り締められていた。



~コワレタセカイ 調査編に続く~

プロフィール

ラヴィス

Author:ラヴィス
パソコン使えないくせにブログに手を出した愚か者。
……温かい目で見てもらえるとうれしいです。

毎週月曜に大小の違いはあれど更新中です。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
来客者数
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。