ブログ開設3周年記念特別SS 魔界鎮圧作戦 ~Chapter10~

「……ねぇ、あの山の中腹辺りにある城壁に囲まれた場所って……」

「ああ、あそこが魔界の本拠、魔界宮殿のある首都だ」

「ついにここまで来たんだね……」

 ネレイスの視線の先には山の中腹辺りに広がっている丘陵地帯の奥、大きな湖のほとりにある堅牢な城壁に囲まれた場所があった。あそこが目指す魔界首都でありそこに倒すべき相手、魔界王がいるはずである。

「こうして見ると……確かに守り堅そうだね……」

「ああ、首都正門前はバッチリ固められてる。さらに首都へ向かう街道上もほぼほぼ配置は完了済み、それを避けて攻め込むのは……現実的じゃないな」

「どういうこと……?」

「んじゃ……ちょっと待ってろ」

 するとファラは1枚の紙を取り出していた。

「……簡単で悪いんだが……首都周辺はこんな感じになっている……」 



首都までの道のり 模式図



「★印が目指す魔界首都、右下の●が現在地付近だ。首都近郊から流れている青色が湖と流れ落ちる滝、そして川。灰色が街道で茶色が山岳、緑が森林地帯だな。あと首都近郊の薄い茶色の辺りは高原地帯だってことを示してる」

「奥の黒いとこは何?」

「あそこは崖だな……魔界首都は背後に急峻な山、両サイドは谷底と湖に守られた厄介な場所に作られている」

「……しかも下から攻める相手を上から迎え撃てるのは強いよね……」

「……で、だ。オレの見立てだとこういう感じに部隊を敷いてあると見てる」

 そしてファラは模式図に赤いペンで印を書き加えていった。



首都までの道のり 敵予想配置



「魔界の部隊は少なくともこう配置されている」

「……ランディさん!」

「どうしたんだい?」

 ここでネレイスはランディを呼び一緒に作戦を練ることにした。

「ランディ、こういう地形で敵の配置がこうなっている。アンタならどうする?」

 ファラは一通りランディに説明をすると意見を仰いだ。

「なるほどね、ところでこの破線は何だい?」

 まずランディは近くの山岳部分に引かれていた白の破線について聞いてきた。

「ああ、こいつはこの山を通り抜けて向こうの街道まで行けるトンネルだ」

「何かメリットがあるのかい?」

「北側の街道への抜け道ってとこだな……それくらいのメリットしかないが今なら……」

「選択肢が増えるってことだね……」

 ランディが思考を巡らしている横でさらにネレイスが指摘をした。

「湖のほとりにあるこの四角はなに?」

「……それがな……そこに魔界の兵器工場があるんだよ」

「兵器工場?」

「……ああ、オレも詳しくは知らんが……正直放置していいものかと……」

「まぁとりあえず考えられる進軍ルートはこうなるんじゃないかな?」

 その間にランディは進軍ルートを割り出していた。



首都までの道のり 進軍ルート案



「恐らく考えられそうなルートはこの3つだね」

 ランディは白い矢印で進軍ルートを示していた。まずは先ほど示した山岳部のトンネルを通り奥の街道から首都を目指すルート。次に川沿いを走る街道から首都を目指すルート。そして街道を通らず森林と湖を超え首都正面を避けて突入するルート。この3つが挙げられていた。

「……ネレイス、君はどう思う?」

「……あたしだったら中央の街道を進むルートを選ぶかなー」

「どうしてだい?」

「……トンネルを通るにしろ森を通るにしろ野生の魔物との遭遇を考えるといらない手間が入りそうだし……」

「そうだね……」

「特にトンネルを通るルートだと中央の街道の部隊との戦闘も避けられなくなりそうだしね」

 首都との位置関係上中央の街道の敵を排除する前に首都正面の敵とは戦えない。しかし中央の街道を先に押さえておけば奥の街道からくる部隊をミディアあたりが食い止めれば余計な戦闘なく首都防衛の本隊と戦えるだろう。

「じゃあ兵器工場はどうするんだい?」

「……叩いた方がいいと思う」

「……何があるか分からないけど?」

「……首都攻略中に背後を突かれるとそれこそマズイから……」

「……賢明な判断だね」

 兵器工場と言うくらいならば当然相当の戦力となる兵器があるはずである。それを利用されれば首都攻略にとっての大きな障害となりかねないが、もしかしたら……

「……敵の兵器工場を潰せれば敵の戦力を削ることにもなるし、うまくすれば奪取してこちらが利用できるかもしれない。そういう意味でもここは叩いておきたいね」

 さらに戦力向上を計れる可能性があるのであれば当然押さえるべきであろう。そこの意見はランディも同じようだ。

「……ただ僕が今回推したいのは……」

 そう言ってランディは新しくルートを示した。



首都までの道のり ランディ献策



「……このルートで行きたいと思う」

「……なるほど」

 ランディの示したルートは概ね中央の街道を通るルートを利用したものであったが、途中から湖を超えて首都正面を避けるルートが別働隊で用意されていた。

「……ひとまずみんなを呼ぼうか」

 そしてランディはそう言うとみんなを集めて本格的な作戦会議を始めた。





 川沿いを沿うようにして引かれた街道の先で魔界の部隊はしっかりと陣を敷いて待ち構えていた。そこへネレイスが率いる神界勢力も陣形を崩さずに迫ってきていた。部隊の戦闘に立っていたのはヴァレリア率いる天界の部隊と騎神ヘリオス、そして空神エミリオであった。その後ろにはルミナス、フィアの聖女2人と精霊界の部隊が支援のために控えており、その中央にネレイスがいた。

「…………」

 しかしそのネレイスの様子は少しおかしかった。紫の綺麗な髪をしていたが顔色はいつもより青く、どことなくぎこちない手つきで水色の剣と盾を携えていた。

「リヴィ……失礼しました、ネレイス様」

「構いませんよ……」

 このネレイスはネレイス本人ではなく、精霊界の部隊を率いてきたリヴィエールが変装をしたものであった。

 ・
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 ・

「ネレイス、君は将軍とファラ、そしてクロノスを連れて湖を渡るんだ」

「……そうだね……あたしたちはできるだけ消耗したくないしね……」

 ランディの献策はまず首都に侵入し魔界王とその取り巻きを倒す特別部隊を編成していた。そのメンバーとして選ばれたのはまず魔界王と決着をつける役割を持つネレイス、そして首都や宮殿内の勝手が多少なりとも分かるであろうファラ、その付き人としての将軍、そして最後に選ばれたのはこれまで全く出番のなかったクロノスであった。

「え、オレ役に立つの!?」

「……うん、貴方はこっちの切り札だからね。是非来てもらいたいんだよ」

「……仕方ないなぁ……」

 避神と呼ばれる実力を持つクロノスの力を借りる場面は今のところなかったが、ネレイスにはどうしてもクロノスの力を借りなければいけない場面があることが分かっていたようである。

「……ただ……その間に僕らのとこにネレイスがいないということがバレると危険だからね……誰かに“ネレイスの代わり”をやってもらいたいんだけど……」

「……そこは私の仕事ですね」

 そしてこの作戦の実行に非常に重大な役割を持つ“もう1人のネレイス”に名乗りを上げたのがリヴィエールであった。

「……やってくれるかい?」

「はい、それが恐らくエメローネ様が……そして精霊界のみんなが私に託した使命なのでしょうから……」

「リヴィエール……」

 そのリヴィエールをネレイスは心配そうに見つめていた。

「ネレイス様、エメローネ様がネレイス様の面影がうっすらとあるような私をここに派遣してくださったということは即ち……」

「……リヴィエール、貴女に……命令するよ」

「何でしょうか?」

「……変な考えはしないこと……ちゃんとこれが終わったら任務完遂の報告をすること、いい?」

「……分かりました」

 ネレイスが言いたいことはリヴィエールもよく分かっていた。ネレイスの代わりになるということはそれだけ危険な状況に何度も晒されることとなり、下手をすれば命を失うことにもなりかねない。自分のために他のものを犠牲にすることをよしとしないネレイスにとっては誰にも犠牲になってほしくないと心から願っていたのである。

「じゃあ残りのみんなはまず街道に陣取っている魔界の部隊を排除しよう。排除した後の動きはまた後で伝えるからね」

 そしてランディは最後にそう言うと立ちあがって散会とした。

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「……ネレイス、心の準備は大丈夫かい?」

「ランディさん……正直……まだ……」

 リヴィエールの隣にはランディが来ていた。ネレイス、もといリヴィエールの補佐としてランディは常に隣に控えていた。

「……ネレイス様に言われた言葉が効いてるのかい?」

「……そう……ですね……」

「……大丈夫だよ、多分それが無茶な注文だってことは分かっているだろうからね……」

「……」

「……さ、ネレイス。どうやら相手は普通の魔界の部隊のようだ」

 前方に展開していた部隊は数こそこちらの数倍の部隊ではあったが、ファラが警戒するように言い残していた魔界十二使徒の部隊ではなかったようであり、殲滅するのにさほど苦労はしないものと思われた。

「……私たちがここで全力で戦闘を行っている間に将軍様たちが森の影も利用しながら高地の湖を渡り首都を目指すのですね」

「そうだね……」

 そんな中魔界の部隊もこちらが十分に接近してきたことを見て陣形の調整と迎撃の準備を進めていた。

「……ネレイス、相手はどうやら守備に徹してくるようだ。ここはどうするのがいいと思う?」

「……来ないのであればこちらから仕掛けます……それも……」

 リヴィエールは剣を握る右手を上げた。ネレイスから借り受けた精霊界の至宝エンジェルティアによく似たその剣は偽物とは言えそれなりの風格を漂わせる力はあった。

「……遠距離攻撃で!」

 そして上げた剣でびしっと前を指しながらそう言うと精霊界の部隊左右で準備をしていたルミナスとフィアの2人が揃って光法撃を放ち先制攻撃を行った2人の聖女からの先制攻撃を喰らった魔界の部隊にはわずかではあるが乱れができつつあった。

「……向こうに動きがあるまで法撃は続けます!」

 聖女の法撃に守備の陣形を取っていた魔界の部隊は完全に乱され攻勢に転じざるを得なくなったようであり、敵の前線部隊が距離を詰めてきていた。

「……天界の皆さん、迎撃をお願いします!」

「承知した!!」

 いかにして早く法撃の脅威を消せるかを考えて陣形を乱した魔界の部隊をヴァレリア率いる天使たちは的確に叩いていった。

「……流石だね、普通に精霊界の部隊を指揮していた時もなかなか素質があると思って見ていたけど……総大将となっても変わらずしっかり戦況を見据えて的確に指示が出しているね」

「……今はうまいこと行ってるだけです。真価が問われるのはこの先……ですよ」

 先制攻撃を決めたものの、魔界の部隊も次第に陣形を組み直していきやがては数で勝る魔界の部隊にやや押される形となってきたようである。

「……精霊のみんな!」

 そこですかさずリヴィエールが精霊たちに指示を送ると様々な属性の法撃攻撃を放ち苦戦している天界の部隊を援護していった。これまで光属性単独での法撃だったところに多彩な属性の法撃が加わったことで再び魔界の部隊に対策を要しさせた。

「みなさん!いまのうちに!」

 その間にヘリオス、エミリオにさらに後方で待機していたSkyBlueのメンバーが次々と攻撃を仕掛けていった。こうして少しずつ陣形を崩しながら根気強く戦いを続けていった。





「……始まったみたいだね、行こう……」

 その戦いをかなり後ろの方から見ていたネレイスは頃合いを見てそう言うと風の加護を展開し、将軍たちに飛行能力を付与した。そして川の水面ギリギリの高さを飛んでいき対岸へと渡っていった。

「……うん、大丈夫……」

 その様子は前方で戦闘をしていた魔界の部隊に悟られることはなかった。後はこのまま森の影も利用しながら前方に見える滝の上にある湖を渡り首都を目指すだけである。

「ネレイス様、あんまし出すぎるなよ。向こうの部隊と多少足並み揃えないと意味ないからな」

「分かってるよ……森の影で様子を見ながら行くから」

「……森の方はオレが気を配っとく……野生の雑魚くらいなら追い返せる自信はあるからな」

 ファラはネレイスに助言をしながら森の様子を注意深く観察していた。湖を超えて首都に接近しようという考えは当然魔界王側にとっても容易に考え付くことであることからここにも魔界の部隊を展開しているであろうことをファラは警戒していた。

(……魔界十二使徒の気配はないな……ならなんとかなるかもしれないが)

 死神としての能力の一端である目の良さは事前に標的の動きを察知したりするのに便利であり、これまでも敵の布陣を事前に把握することができていたが流石にこの森林地帯ではその力も大分弱まってしまっていた。

(……ここにいるやつらとはできるだけやりあいたくねぇな)

 不意打ちを食らえばネレイスが危険である以上ファラはいつになく気を張っていた。これまで魔界十二使徒として活躍していた時代でもこれほどまでに真剣に仕事に取り組んだ覚えはファラにはなかった。

(……主が違うだけでここまで変われるもの……か)

 このままネレイスが魔界王を倒し魔界に新しい時代が来るとしたら……

「おいファラ、ボーっとすんなよ」

「してねぇよ!」

 注意力が散漫になっていたのか将軍にそう言われてやっとファラは我へと返った。

(……まだ早いか……そのことは魔界宮殿に入ってから……だな)

 そして再びファラは森の方に細心の注意を払いながら少しずつ前へと進んで行った。

「…………」

 その隣にいたネレイスも本隊の戦況を逐一真剣な表情で見つめながら少しずつ進んで行く。

「……やれやれ……気負いすぎると空回りしそうで心配なんだがなぁ……」

「だったら言ってやればいいんじゃ……」

「……いや、それくらいの気概があるってことだ、それを邪魔しちゃ悪いだろう」

 そしてその後に落ち着いた様子の将軍とクロノスがついていった。



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ブログ開設3周年記念特別SS 魔界鎮圧作戦 ~Chapter9~

「報告です!」

「……今度は何だ?」

「……ゼクトール様とトロスニア様が……」

「敗れたか……所詮は知恵のない獣と浅はかな知恵のゴミムシだったか」

 ゼクトールとトロスニアが破れたことはすぐにベルガザスの元に報告されていた。魔界十二使徒という有能な手勢をまた失ったことになるが、ベルガザスはそんなことは意にも介さぬ様子で玉座の上でふんぞり返っていた。

「……天界と精霊界の様子はどうだ?」

「……はっ、天界と交戦中の部隊は比較的優勢と聞いています。天界の守りは想定以上に薄いということでしょう……さらに精霊界から戻ってきた斥候部隊の報告では精霊界の防備を強固にしているような感じもないとのことでした」

「ほぅ、それはいい報告だな……早速精霊界を叩きつぶす準備を始めよ!」

「はっ!」

 配下からの報告を聞いたベルガザスはすぐに精霊界侵攻の準備を始めさせていた。自身も攻め込む気満々のようで玉座から立ち上がり肩慣らしのような仕草をして体を作っていた。

「……陛下……?」

「……精霊界侵攻の指揮はオレが執る」

「へ……陛下御身が!?」

「当然だ、向こうは精霊界女王が直々に攻め込んでいるのだからな。こちらも王自らが攻め込むというものだろう」

 ベルガザスは不敵な笑みを見せていた。正直自分一人でも精霊界を叩きつぶすくらいできると思っていたベルガザスにとっては願ってもないチャンスであった。魔界の防備に割ける戦力はまだまだ十分にあり、十二使徒もまだ5人残っている。魔界が陥ちる前に精霊界を陥とすことは十分に可能、そういう目算であった。

「……分かりました……では魔界の防備は……」

「今レゾーナは反逆者の捜索を行っている……だからアモンに任せる」

「アモン様ですね、畏まりました」

「……仕事ですね?」

「アモン様!?」

 ベルガザスがアモンという言葉を口にした瞬間には既にアモンが伝令役の隣で跪いていた。

「アモン、お前はここで精霊界女王を迎え撃て」

「迎え撃つ……でよろしいのですね?」

「時間を稼げばそれでいい、その間に精霊界を攻め滅ぼしてくるからな」

 自信満々に言ったベルガザスであったがアモンの表情がやや優れない。

「……陛下、失礼ながらお1つ……」

「何だ?」

「……精霊界女王が負の気の呪いを解いた際に……精霊界の防護壁のようなものがありまして……」

「防護壁?」

 アモンは精霊界再生の際に攻め入った時のことを話した。今でこそしっかり生え変わったものの、あの時あそこでアモンは自慢の牙をへし折られていた。そのことをはっきりと覚えていたアモンにとっては少々気がかりであった。

「……くだらん……そんなもの」

「……だといいのですが……」

「……魔界王という格の違いを見せつけてやろう」

「……分かりました、出すぎたことを申しました」

 しかしベルガザスはその心配を一蹴した。アモンもそれ以上は気にすることをやめたようである。

「では行ってくる、魔界は任せた」

「はっ、お気をつけて……」

 そしてベルガザスは玉座の間を後にしていった。

「……結局お留守番かよ、つまんねぇ」

 ベルガザスがいなくなるとアモンは人が変わったかのように口調を変えて悪態をついた。

「……レゾーナもいねぇんだしなぁ……仕方ねぇ……」

 そして早速アモンはベルガザスの指示を破りだした。

「おい、ゲルデシアとゾルホス!仕事だ!」

 残った魔界十二使徒の戦闘能力も非常に優れた2人を呼び出すと何やら指示を出したようである。





「……く……これほどまで厳重にプロテクトをかけてくるとは……」

 レゾーナは地下室へ向かう階段で足止めされていた。グレモルとバレンシアが潜伏しているであろう場所にかけられていた防壁を次々と突破をしていたものの、レゾーナの力をもってして突破に相当の時間を要するほどの高度な術式をレゾーナが想像していた以上に展開されていたことによりレゾーナには疲れの色が見えていた。さらに今レゾーナが破ろうとしていた術式は力押しできればすぐに突破できそうなものであったものの、力の強くないレゾーナでは易々と破れないタイプの防護壁であり苦戦していた。

「常日頃よりこのような術式を用意していたということなのか……」

 レゾーナが伸ばした左手の先にはレゾーナの魔力が集中していた。これくらいの力を集中させるのは魔界十二使徒クラスであれば造作もないことであるのだがレゾーナにとってはかなり労力のいる作業であった。集中させた魔力を防護壁に押し当てていくとやっとのことで防護壁にひびが入り、少しして目の前の防護壁はガラスのように砕け散っていった。

「……く……これもすべてグレモルの読み通りだったというわけか……」

 レゾーナは息を切らせたまらずその場にへたり込んだ。まだ地下室までは半分ほど階段が残っており、地下室の内部にもまだ術式が大量に施されているであろうことを考えると1人で来てしまったことを深く後悔していた。しかしグレモルが仕込んでいた防壁には一度突破をしたとしても一定時間が経つことで再び閉じてしまう時限式のものがところどころ配置されており、戻って再び仲間を連れて再突入しようにも手間がかかる。

「……私ももう退けないのだな……」

 レゾーナは一息つくと再び立ち上がった。目を瞑り集中した面持ちを見せるレゾーナの周りの空気がどんどん張りつめていく。

「……ならば……!!」

 そしてレゾーナが目を見開いた瞬間、レゾーナの姿が変化をしていくと同時に一瞬にして前2枚の防護壁が弾け飛んでいった。

「……使わせてもらうぞ、私の力」

 レゾーナの背中からは光の翼が生え体からは白く淡い光が漂い始め、体中には青白い光を放つラインが現れていった。魔界十二使徒は各々人のような姿とは別に本来の姿を持っているのであるが、レゾーナのその本来の姿を見た者は数少ないとされていた。さらにその姿は猪のゼクトールや土蜘蛛のトロスニア、さらには死神のファラといった本来の姿がいかにも魔獣や悪魔といったいかにも凶悪そうなものとはまるで違う、非常に幻想的で何がモチーフとなっているのかがさっぱり分からないものであった。

「………!!」

 魔物というよりかは精霊と呼んだ方が近い姿となったレゾーナは微動だにしていなかったのだが、レゾーナの先にあった防護壁は次々と破られていた。

「……もう少しだな……」





「……レゾーナが本気を出したな」

 防護壁の先にある地下室にいたグレモルにもレゾーナの変化は感じ取れていた。流石のグレモルにも多少焦りの色が見え始めていたがそれでもまだ余裕があるような表情を保っていた。

「……兄上、準備が整いました」

「そうか、じゃあバレンシア、合図を出したらすぐに向かってくれ」

「分かりました……」

 奥の方で何やら端末を操作していたバレンシアも準備が整ったことを報告していた。端末の画面には座標軸コードが入力されているようであり、すぐに転送ができる状態が整っておりここがどうやら逃亡先に決めた場所であるのだろう。

「……ところで兄上は?」

「……レゾーナの問いかけに答える義務がある、レゾーナは物分かりもいいから問答無用で手打ちにしてくることはないだろうし……それを防ぐ術式も敷いてある。レゾーナが満足するまで答えた後にすぐそっちに行くよ」

「……気を付けてくださいね……」

「……安心しろ」

 レゾーナの強さをよく知っているバレンシアは兄のグレモルを残して先に逃げることに後ろめたさを感じていた。兄のことは当然信頼はしているものの不安はぬぐい切れていなかった。

「……来るな」

「兄上……」

 バレンシアにもレゾーナの気配が伝わってきていた。普段レゾーナが内に秘めている強大な力、それを解放しあっという間にこの部屋の近くにまで来ており、じきにこの部屋の扉も開けられてしまうのだろう。

「…………レゾーナ、君に我らの行き先が読めるかな……?」





「……なんとか……片付いたね……」

 ネレイスたちはやっとのことで魔界の部隊を退けていた。ルミナスとフィアの聖女コンビがかなり活躍をしてくれていたものの、その疲労も大きくなっており途中からは流石に休憩をとっていた。

「やれやれ……流石にこれ以上はしんどいぞ……」

「そうだね……将軍様たちまだかな……」

 そう言ったネレイスの視線の先にまた新しい部隊が現れていた。

「……あれは……」

 それが魔界の部隊でないことは一目瞭然であった。その部隊には天使と精霊が入り混じるようにして存在していた。

「やれやれ……やっと追い付いたぜ……」

「将軍様……!!」

 混成部隊の戦闘には見慣れた将軍の姿があった。さらには途中離脱していったランディ、ヘリオス、エミリオも揃って一緒にやってきていた。

「……辛そうな顔してるな」

「当たり前だよぉ……」

 将軍たちが戻ってきたことに安心したのかネレイスは表情を緩め、そのまま地面に座り込んでしまった。

「……天界と精霊界からの部隊も一緒に連れてきた。今のところ誰1人として欠けてはいないそうだ」

「ひとまず双方の代表が総大将に挨拶をしておきたいそうだよ」

 将軍の横にいたランディは後ろにいた天界、精霊界の部隊長に目配せをすると共にネレイスの前へと歩み出ていた。

「……貴女が精霊界女王のネレイス様……ですね?私は今回魔界鎮圧作戦における天界の魔界侵攻部隊を率いている天界十二聖女の第6聖女、ヴァレリアと申します」

 まずはヴァレリアがネレイスの前で膝をつき丁寧にそう挨拶した。

「……第6聖女……」

「はい、貴女のことはルミナス様、およびフィア様から窺っております。精霊界を繁栄へと導く希望の王……お目にかかれて大変光栄です……」

「……えっと……ゴメン、なんか今はそんな感じ全然しないよね……」

 疲れきって座り込んでいるネレイスであったがヴァレリアの丁寧な姿勢は揺らぐことがなかった。

「これより我らの部隊は貴女の指揮下に入ります。我々天界の部隊は皆聖女の加護により破邪の力を得ています……魔物の部隊相手に有効に戦えると自負をしておりますので遠慮なく我々をお使いくださいませ……」

「あ……うん……天界のみんなの力……期待しているからね」

「お任せください……」

 ヴァレリアはそう言うと面を上げ立ち上がると後ろへと下がっていった。その代わりに精霊界の部隊長が前へとでて跪いた。

「お初にお目にかかります。私、このたび魔界鎮圧作戦における精霊界の部隊をお預かりさせていただいている……」

「清流のリヴィエール……でしょ?いいよ、面を上げて」

「え……!?ははははいぃぃっ!」

「あはは……落ち着いてよ……」

 ヴァレリアと同じように丁寧に挨拶をしようとしていたリヴィエールであったが、ネレイスが自分のことを知っていたということに衝撃を受けて取り乱してしまったようである。そのリヴィエールをネレイスはそっとなだめた。

「精霊界の防備にエメローネを付けるときに話は聞いているわ、有能な水の精霊だってね」

「ゆ……有能だなんて……!!わ……私なんてまだ……!!」

 まだ取り乱した様子のリヴィエールはあたふたする間にまだ見たこともない自分の主君と目が合ってしまった。

「……え……」

「それに……あたしにちょっと似てるってエメローネも言ってたけど本当だったんだね」

 初めて見たネレイスの顔、それは水面に映して見ていた自らの顔とどことなく雰囲気が似ているような気がするものであった。

「……そ……そんな……!!私の体は水ですし……そんな綺麗な紫の髪でもないですし……!」

「あはは……まぁそうだけどさ、でも言われてみると結構似てるかなーって思うけど……」

「…………」

 確かに言われてみればだんだんネレイスの顔が自分の顔のようにも見えるような気がしていた。そしてそれと同時にリヴィエールは何故精霊界では名もそんなに知られてない、力もあるわけでもない自分がネレイスの下へと派遣されたのか……自分を指名したエメローネの意図がどことなく分かったような気がしていた。

「……リヴィエール?どうしたの?」

「……いえ、少し落ち着こうと……」

「んー、そっかぁ」

「……ネレイス様。寄せ集めの有志部隊ですが……ネレイス様のために精一杯援護致しますのでなんなりとお申し付けください」

「うん、期待してるよ」

 この仕事は恐らく自分にしかできないことだったのだろう。精霊界防備のために今回傍にいられなかったエメローネの代わりに自分に託された使命に気付いたことでリヴィエールも落ち着きを取り戻したようである。最後にしっかり挨拶をして締めくくるとランディの後ろへと下がっていった。

「……これで魔界軍の部隊との戦いも楽になるよ……」

「そうだな……」

 ネレイスの言葉に同意したのはファラであったが、その表情はあまり優れてはおらず視線はずっと先の方を向いていた。

「……ただ魔界の部隊もほぼほぼ守りの陣形を固めきってる。あれを突破するのは骨が折れるぞ……」

「……そうかもね、でも大丈夫だよ。天界、精霊界のみんなも一緒に戦ってくれるし……もちろんSkyBlueのみんなも一緒だし……魔界十二使徒のファラだっているもんね」

「……ヘッ……まぁそうだな……」

 自分のことを信頼されていることにファラは珍しく素直に照れているようであった。

「……おいおい、“SkyBlueのみんな”ってとこに我々は入っているのか?」

「はい……私たちのこと……忘れていませんよね?」

「あっ……ラヴィスにミディアさん……」

 そこに鎧を着直したミディアとその手伝いをしたラヴィスも戻ってきて合流をした。これで魔界鎮圧作戦における全メンバーが揃ったことになった。

「……忘れてたな……?」

「あはは……」

「さて、じゃあ全員揃ったところで……ネレイス、号令でもかけろよ」

「……うん、分かったよ……」

 そしてネレイスは背中に羽を展開するとみんなの前へと飛び立った。

「結構奥まで来たけどまだまだ本番はこれから……みんな、世界の安定のために力を貸して!」

「任せろ……」

「……魔界鎮圧部隊……出撃!!」

「「「オォーーッ!!」」」

 ネレイスが飛ばした檄にSkyBlueのみんな、そして天界、精霊界の部隊のみんなも一斉に応えた。そして目指す魔界宮殿へと向けて進軍を開始した。



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ブログ開設3周年記念特別SS 魔界鎮圧作戦 ~Chapter8~

「お、前方で戦闘発生中!誰だ誰だ~?」

「将軍……」

「ヴァレリア、部隊を指揮して援護の準備だ!リヴィエールは戦ってるオレらの仲間のサポートに入ってくれ」

「……承知した」

「了解です!」

 援軍と合流した将軍とランディはようやくエミリオとヘリオスが戦っていた近辺までやってきていた。将軍たちのいる場所からはまだ戦っている姿は見えていなかったが数はおおよそ援軍で来ていた天界勢力のおよそ半分ほどであり、天界勢力の加勢があればすぐに片付くであろう状態であった。

「……しかし将軍はまだまだ元気だね」

「ん?まぁな、お前よりは体力あるだろう」

「元気いっぱいなら将軍も戦ってくればいいじゃないか」

「……いや、ここはオレが出る幕ではない。天界勢には総じて対魔物特効が働いているようだからな……それに第6聖女というだけはある指揮能力……見ているだけでも心配ない」

「……ふむ……じゃあ僕もその戦いぶりを見させてもらおうかな」

 ランディは天界勢力の戦いぶりを眺めながら腰を下ろした。

「……ねぇ、将軍」

「どうした?」

「……この戦い……ネレイスはどうすると思う?」

「……どうした、急に……」

「……徹底的に魔界を叩く……そのつもりなのかな?」

「……そりゃないだろ」

「……そうかい?」

「……あいつが叩こうとしてるのは今の魔界王とその取り巻きだけだろうよ。魔界の魔物を根絶やしにしようとかそういう意志は全くない」

「……そうだよね」

 ランディはポケットに入れていたヴァンフレアの翅を出すと赤紫色の靄で霞む空に透かせた。

「ん?それは?」

「……ヴァンフレアの翅だよ」

「何だ、ぶっ飛ばした相手のものを集める趣味なんてあったのか?」

「いや、そうじゃないよ。ただ……ネレイスなら救いかねない存在だったからね」

「ん?どういうことだ?」

 将軍がそう言うとランディは推察ではあるもののヴァンフレアの素性を話した。

「……なるほどな」

「……これから先戦う相手にもこういう存在がいるかもしれない……その時にネレイスはどうすうんだろうね」

「……どうだろうな」

 ネレイスは人と精霊たちが共存できる世界を創り上げる理想を掲げてここまで来ていた。魔界の中でも表には出さなくともその理想に共感している存在は少なくはない。しかしそういった気持ちがありながら自分たちと戦わなければならない存在も当然出てくるだろう。

「……ただ……オレらにそいつらを救えという指示は出さないだろうよ」

「……そうだね、本心ではネレイスもそういう存在をみんな救いたいと思っていても現実は不可能だってことは承知しているだろうね。それに……そういった存在を助けようとした結果僕らを危険にさらすわけにはいかないと思ってるだろうしね」

「……ま、あいつらしいっちゃあいつらしいよな」

「そうだね」

 今回の魔界鎮圧作戦はネレイスにとって心身ともに非常に負担のかかるものであった。負の気で体力を削られ辛い気持ちを押し殺しながらも周りには気丈にふるまう姿しか見せないのがネレイスなのである。

「……ま、今の総大将はあいつなんだ。その総大将を支えるのがオレらの仕事だ」

「普段は支えてもらってる立場だからね」

「……まーな」

 そう言ったところでヴァレリアたちが戻ってきた。見事な戦いぶりですぐに魔界の部隊を殲滅しきっていた。

「……将軍殿、殲滅完了した」

「ああ、ご苦労」

 天界の部隊は負傷者1人もなく帰ってきていた。これほどの実力があれば魔界の大部隊と正面から立ち向かっても心強い戦力となってくれそうである。

「……将軍か……助かった」

 さらにヴァレリアの後ろから馬を引きながらヘリオスがやってきていた。目立った外傷等はなかったようだが大分疲労は溜まっている様子であった。

「ん、ヘリオスか……お前1人で戦ってたのか?」

「いや、エミリオもいるぞ……向こうで休んでいる」

 ヘリオスが指差した先では風竜の上で横になっていたエミリオにリヴィエールが寄り添って手当てのようなことをしていた。

「……助かります……」

「私もこれくらいならお手伝いできます……」

 リヴィエールは癒しの効果を持つ水の補助系魔法の扱いに長けていることからエミリオの回復を行っていた。優しい青の光がエミリオを包みこんでいくと体が軽く水の中で浮かんでいるような感覚になっていった。

「……にしても何だ?神界八将のうち四将が離脱してたってことか?」

「そういうことになるな……」

「……戦力的に大分不安だよね」

 この間にもネレイスたちは魔界の部隊との戦闘を余儀なくされているのだろうが、戦い手の減少は当然残りのメンバーの負担の増加に繋がる。さらに早急な合流が必要な状況であることを特に将軍は感じていた。

「ヘリオス、行けるか?」

「……そうそう休んでもいられない。ネレイスにも早急に片付け戻ってきてくれることを期待されているだろうからな」

 ヘリオスの方は心配なさそうであったのでエミリオの方を見たが、そのエミリオも風竜にまたがりこちらへと来ていた。

「……お待たせ、私ももう大丈夫よ」

「よし、なら行くか……」

 両者とも平気なのを確認すると将軍は部隊をまとめて本隊との合流を急いだ。





「……チィ……」

 剣を構えた体勢のままラヴィスは固まっていた。というのも先ほどから対峙していたトロスニアはカウンターを狙っているような構えを見せており迂闊に手を出すことができない状態が続いていたのである。

「……これじゃあ埒が明かない……」

 ラヴィスが牽制目的でトロスニアの足に一撃を喰らわせたが、やはり固い殻に攻撃は阻まれ構えも変えることはなく状況は一向に変わらなかった。

「……ラヴィスさん……」

「……向こうから動きがない分楽なんだが……分が悪いか……」

 ラヴィスは闘神という名を冠しているもののずば抜けて戦闘能力が高いというわけではなかった。大剣を振るうには少々その体つきは心許なく、その一撃も破壊力のあるものではない。しかしそれでも闘神と呼ばれるほどの実力がラヴィスにはあった。非力な部分は技術力でカバーをし、特に弱点や急所を見定める力はSkyBlue内でも随一だと言われている。そのため本来であれば1対1ではなく味方がいてくれる時ほどその力は増加するのだが今回はそうはいかない。

「……仕方ない……あまり使いたくはないんだが……」

 そこでラヴィスはデバイスのようなものを出すと右目の前に取り付けていた。青みがかったそのデバイスにはトロスニアの姿が映されておりその体のほとんどが黒い色で示されていた。

「……」

 しばらくじっと見ていたが次第に黒い色で示された部分が少しずつ少なくなっていき、その瞬間をねらって剣を振り抜いた。やはり殻によってその威力はかなり抑えられてしまっていたもののトロスニアはどことなくいらつかせた様子を見せていた。

「……弱点なし、カウンターゾーンと耐性ゾーンばっかりとか面倒なヤツだな……」

 ラヴィスがデバイスを通して見ていたのは相手の状態を分析して攻撃が通りやすい場所通りにくい場所、耐性や弱点を的確に示してくれている映像であった。その画像が示すトロスニアには黒で示された攻撃をするには危険な場所、赤で示された耐性の高く攻撃が通りにくい場所で全体が示されており、どこを攻撃してもダメージが通らないということを表していた。

「…………」

 ちらりとミディアの方を向くと今のミディアはほとんどが青色の低耐性で示されていた。その他にも黄色で示される弱点部分も出てしまっており非常に脆い状態であることがここでもはっきりと分かってしまっていた。

「……なら仕方ないか……」

 このまま戦っても埒が明かないであろうことを判断したラヴィスは持っていた大剣をしまうと今度は両剣を取り出した。淡い光を放つその両剣は実体を持っておらず、実体両刃剣を愛用しているラヴィスにしては珍しい異質な武器であった。さらにはその姿もいつもの傭兵服から金の装飾が施された黒い鎧へと変わっていた。

「ら……ラヴィスさん?」

「……あんましやりたくはなかったんだがな……」

 纏う空気が急に変わったこともあり近くにいたミディアも心配そうに声をかけるくらいの変貌ぶりであった。

「……ミディア、心配はいらん。あまり見せないだけで我もこれくらいのことはできるだけだ」

「は……はい……」

 ミディアを見るラヴィスの目つきは鋭く、普段の優しげな雰囲気が一切消えていた。ラヴィスのことをよく見ているミディアにとっては衝撃が強かったのか寒気すら感じるほどであった。

「……これだけ守りが堅く弱点もないのなら……」

 心なしか声のトーンも低くなっているような気がするラヴィスはそう言うと迷いなく両剣を振り回しながらトロスニアの前足に近付いていた。デバイスでは黒の危険個所である。攻撃が当たると堅い殻に弾かれると同時にトロスニアは待っていたかのようにカウンターで鎌のような足を振り上げて来ていた。

「……やはりな!」

 当然カウンターが来ることを見越していたラヴィスは最小限の動きでかわしていた。さらにはデバイスが振り上げた足が低耐性の青色に変化したのが見えていた。その瞬間を見逃さずラヴィスの両剣は足の1本を捉えるとその一撃で簡単に斬り落とした。

「……攻撃の隙でやはり弱点はでてくるか……さらに……」

 1本足を斬り落としたことで体のバランスが崩れたためか耐性が落ちた部分が何箇所か現れ始めていた。

「…………」

 鋭い目つきでその場所を捉えるとラヴィスは次々と的確に両剣を当てていき足を叩き斬っていった。

「……これで足は全部折ったか……ん?」

 あっという間にラヴィスはトロスニアの8本の足を斬り落としていた。するとトロスニアの高さが下がり背中側の方も見えてきて背中側には耐性の低い青色の部位が多く、その中央に弱点部位を示す黄色の場所があるのを確認した。

「……よし、見えてきたな……」

 その矢先、トロスニアは顎を器用に使い地面に潜っていった。その動きはラヴィスの攻撃から一旦逃げようとしたようでもある。

「…………」

 ラヴィスは地面の様子を冷静に観察していた。ラヴィスが見ていたデバイス越しの地面にはトロスニアのものと思われる大きな影が映っていた。地面からの奇襲を仕掛けてこようとしていたようであるが全部ラヴィスに筒抜けであった。

「……足元から……来る!」

 ラヴィスはいち早く地面から顎をを突き上げてくる攻撃を察知し前転回避をした。するとラヴィスが立っていた位置にトロスニアの大きな顎が突き上がってきていた。さらにその顎の中心に耐性の低い青色の部分が見えたのでそこにラヴィスは両剣を投げ込んだ。口を裂かれたトロスニアは怒り狂ったように地面から飛び出てきていた。

「後は背中をいかにして狙うか……」

 トロスニアの大顎の攻撃をかわしながらトロスニアの背後をどう狙うか考えていた。トロスニアの攻撃はもう大顎による攻撃しか残っていないようであり、これを壊してしまえば耐性など関係なく叩きつぶすこともできるのであるがデバイスは大顎を常に高耐性の赤で示されており破壊は困難であろうということが窺えた。となれば攻撃の隙を狙って背後を取る動きが必要になりそうであるがトロスニアの攻撃は大振りになったわりには隙が小さく、すぐに次の攻撃に移られてしまうためになかなか攻撃ができない状態であった。

「…………」

 ラヴィスはデバイス越しに映るトロスニアの姿をじっくり観察し続けていた。そしてついにあることに気付いた。

「……あの殻の下にも弱点があるな……」

 トロスニアの大顎の上にあるトロスニアの体に少し盛り上がっているような部位があり、そこはしっかりと殻に覆われておりデバイスでも赤で示されていたが、どの個所もその中心一点だけは黄色に見えるような場所があったのである。

「……あの一点を……」

 それを見たラヴィスは両剣を斬る構えから突き刺す構えに変えていた。それに合わせて光の両剣の刃も細く長く変わっていた。

「……突く!」

 そしてトロスニアが大顎で挟み込んできたところを狙ってラヴィスはその大顎を足場にして体に登った。近くにまで来たことでデバイスにもはっきりと映るようになり、ラヴィスの見立て通り殻に覆われた赤い部位の中心にわずか数センチ四方の黄色い弱点部位があったことが分かった。そしてそこを目掛けて思いっきりラヴィスは光の両剣を突き立てた。

「……っと!」

 そこはトロスニアが獲物を視認するための目玉の1つであり、深々と両剣を突き立てられたトロスニアは激痛で奇声を上げながら体を持ち上げた。その勢いでラヴィスははね上げられたが、丁度そのままトロスニアの背後に回ることができていた。トロスニアの背中には1点だけ殻に覆われていない場所があり、その部位ははっきりと黄色の弱点として示されていた。

「……もらった!!」

 光の両剣はトロスニアの目に突き立てたままであったため武器を持っていなかったラヴィスの手には最初に握っていた大剣が現れていた。特別目立った装飾も効果もなさそうな剣であったが、ラヴィスはこの剣をずっと愛用してきていた。というのもこの剣はSkyBlue代表となった日に愛妻ルミナスが贈ってくれた思い出の大剣であった。

「……この剣に秘められし聖女の加護の力……ここに!」

 この剣にはルミナスの強力な加護が込められており、それがラヴィスに闘神と呼ばれるほどの力を与えてくれていた。ラヴィスの持つ大剣が一際輝きを増すと大剣は光に包まれ、さらにラヴィスの背中にはルミナスの背中にもあるような立派な光の羽が現れた。

「……はぁぁぁっ!」

 ラヴィスはそのまま急降下し背中の弱点に大剣を突き立てた。守るものがないその弱点部位に光の大剣は深く突き刺さり、腹部まで貫いて地面にまで達した。耳をつんざくようなトロスニアの断末魔の叫びは遠くにいたネレイスたちにも届くのではないかと思うほどのものであった。やがて体の内側から光が突きぬけていくとその光に浄化されるようにしてトロスニアの姿はかき消えていった。

「……やれやれ……」

 まずは目に突き立てていた両剣をラヴィスは拾い上げると血と体液を振り払ってから虚空に向けて軽く投げた。するとその両剣はぱっと消え、ラヴィスの姿もいつものものへと戻っていた。

「……ラヴィスさん……あの姿は一体……」

「ああ、気にするな。それよりお前も鎧を脱いだところを見たことないな……」

「あっ……あんまり見ないでください……」

「……ま、我もそれと同じようなことだ。あれは見なかったことにしてくれ」

「分かりました……」

 恥ずかしそうに顔を背けるミディアにそう言うとラヴィスは愛用の大剣を抜き背中へとしまった。輝きがなくなったラヴィスの愛剣は本当にただの大剣と変わらず見えていた。

「さてミディア、戻るぞ」

「えっ……その……この姿じゃ……」

「新しい鎧はないのか?」

「ありますけど……私1人で鎧着られないんです……」

「は……?」

「ですから……恥ずかしいのですが……」

「……やれやれ」

 ラヴィスは仕方なくミディアの鎧の着付けを手伝ってあげた。ミディアの世話をしているランディの苦労がなんとなくわかった気がしたような一方で、先ほどまで戦っていた状態から気分を転換できたのはこれから先も戦力として活躍していかなければならないラヴィスにとっても非常にいいことであった。



←Chapter7     Chapter9→



ブログ開設3周年記念特別SS 魔界鎮圧作戦 ~Chapter7~

「まだまだです……っ!」

 7回目の絶対守護障壁は既に崩壊寸前であったが、それでもミディアはゼクトールを跳ね返して転ばせていた。何度も転ばされたゼクトールは大分気が立っているようで体は大分傷だらけになっていたが突進の威力はだんだんと増しているような気もしていた。対するミディアの絶対守護障壁は疲労もあり回を重ねるごとに効果は弱まっており、次の突進を止められるかどうかはもう分からなかった。

「……十分足止めにはなってますが……このままでは……」

 ゼクトールは再び立ちあがると前足で地面を蹴りながら威嚇をしていた。その姿を見てミディアは再び盾を構え直す。

「……く……絶対守護障壁っ!!」

 ミディアは8回目の絶対守護障壁を展開した。展開された光の壁は最初からひびがいっぱいですぐにも壊れてしまいそうなものであったがそれでもミディアはゼクトールを迎え撃った。

「……う……く……」

 激突したゼクトールと光の壁の間に火花が散った。最初はやはりゼクトールが圧倒的に押し込んでいたようであるが、ミディアの絶対守護障壁もなかなか破られなかった。

「…………っっ!!」

 これまでであればそろそろゼクトールの勢いを止めることができる頃合いであったが、今回はその勢いが全く衰えていなかった。

「……くぅぅ……負ける……訳には……っ!!」

 その時ピキッと光の壁に亀裂が入る音が聞こえた。その音にミディアが一瞬動揺したところで亀裂は一気に広がってしまった。

「……がぁぁぁぅっ!!」

 光の壁が破られゼクトールの突進と牙の突き上げを直接食らってしまったミディアはダンプカーに轢かれたような衝撃を受け跳ね飛ばされてしまった。さらには地面に叩きつけられ何回転かした後にさらにゼクトールの突き上げを食らって跳ね飛ばされた。ミディアを跳ね飛ばしたところでゼクトールの突進は止まった。

「……う……ぅぅ……」

 しかしあれだけ衝撃を受けていたのにもかかわらずミディアはよろよろとではあるが立ちあがった。自慢の鎧は割れたりへこんでぼこぼこになり、盾にも突き上げを食らった際にできたであろう牙が擦れた傷ができてしまっていた。

「……う……けほっ!」

 鎧の隙間からは血が滲み、さらには血を吐くほどのダメージを負っていたがミディアは再び盾を構えようとした。しかし先ほどの衝撃の影響か盾を持つ手は痺れてしまっておりうまく構えることができていなかった。

「……体が……全然……」

 霞む視界の中ゼクトールは再び突進をしようと前足で地面を蹴り土煙を立たせていた。恐らくはミディアが立ち上がれなくなるまで叩きつぶそうということなのだろう。

「…………」

 ミディアは意識が薄れぼーっとしていた。次の一撃を食らえばもう体はもたないということは当然分かっていたが、その体を動かす気力もミディアには尽きかけていた。その中でゼクトールはミディアめがけて突進を開始していた。

「……ランディ……さん……」

 ミディアの最期に助けを求めるようにそう呟いた。

「……ミディア」

「えっ……!?」

 ミディアはその声で我に返った。ランディはこの場にはいないはずなのにその声はまさしくランディのものであった。

「っ!!ぁぁっ!」

 とっさに盾を構えたミディアであったが止めることができるはずもなく再び跳ね飛ばされてしまった。地面に叩きつけられ多少転がったが不思議と先ほどよりかは痛みを感じることはなかった。

「……そっか……」

 ミディアは地面に転がったままでいた。その中でミディアはランディの言葉を思い返していた。

 ・
 ・
 ・

「……ミディア、君に1つ大技を教えておきたい」

「大技……ですか?絶対守護障壁とは別に?」

「そうだね、僕では真似できない……君だからこそできる大技だ」

 遥か昔の時代、まだミディアが普通の人間であった時のことである。ある立派な城の中庭でミディアはランディと一緒に特訓をしていた。その特訓の最後の方になってランディはこう切り出したのであった。

「……私だからですか?」

「そうだよ、魔力を使うんだ」

「私魔法なんて使えませんよ……!?」

「ははは、そういう意味じゃないんだよ」

 ミディアの素直な言葉にランディは笑顔を見せたが、またすぐに真剣な表情に戻った。

「……人間だれしも“魔力”は持っているんだ。大抵の人間はそのことに気付いていないかもしくは気付いていても上手く利用することができないんだ。だから魔法を扱える人はわずかでその人たちは魔法を使う才能があるってことさ」

「そ……そうなんですね……」

「でもミディア、君は残念ながら魔法を扱う才能はないみたいだったね。そんな君でも“魔力”はあるんだよ」

「は……はい……」

「……その魔力を使う方法を今から教えてあげるよ。それができれば君にしかできない大技ができる」

「……教えてください、ランディさん……」

 ・
 ・
 ・

「……忘れてました……ランディさんに教えてもらった……あの大技を……」

 ミディアはゼクトールとの距離が多少離れていたことを確認するとゆっくり立ち上がった。先ほどはよろよろとようやく立ち上がるような感じであったが、今回はすぐに立ち上がることができた。立ち上がったミディアはゆっくり目を閉じると体の前で持っている白銀の刃を持った立派な槍をバトントワリングのようにぐるぐると回し始めた。

「……集中して……自分の内に流れている魔力を感じる……」

 ミディアが槍を回し始めるとミディアが身に着けていた鎧がぼろぼろと剥がれ落ち始めていた。

「私の魔力は……守備の能力を引き上げてくれるもの……これを……」

 ゼクトールはミディアが立ちあがったことを確認するとまた突進の準備を始めていた。その間にもミディアの鎧は剥がれ落ちていき、ついには全ての鎧が剥がれ落ちていった。鎧の下に着ていた服はボロボロで血が滲み真っ赤になっていた。

「……攻撃能力の強化に転換する……つまり……」

 準備の整ったゼクトールはミディアに向かって突進を開始した。その足音を感じ取ったミディアは目を開けるとゼクトールをしっかりと視界に捉えた。

「攻守置換!」

 ミディアの体からは仄かに赤いオーラが湧き出ていた。そして突進してくるゼクトールを思いっきり正面から薙ぎ払った。

「……私の守備の力が……そのまま攻撃力となる……」

 その一撃はゼクトールの牙に当たり簡単にへし折ると同時に、ゼクトールの体勢を少し持ち上げていた。

「つまり……絶対守護の力が……」

 ミディアはさらに逆方向から薙ぎ払った。その一撃はゼクトールの牙を薙ぎ払うと共にゼクトールの体を完全に持ち上げていた。

「……絶対破壊の力に変貌する……」

 持ち上がったことで丸見えとなったゼクトールの腹にミディアは鋭い突きをかました。切り裂くことに特化したミディアの槍はゼクトールの体に深々と刺さると内側から切り裂いていった。

「……まだ……立てるんですか……」

 しかしゼクトールも先ほどのミディアと同じようにしぶとく立ち上がっていた。かなりの深手を負いながらもミディアを薙ぎ倒そうと突進する意志が見られた。

「……次で決めますよ」

 ミディアは再び槍を構えなおした。肩の上で力を溜めているその姿はほぼほぼ満身創痍の状態とは思えないほどの勇壮さがあった。対するゼクトールもこれまで以上に気合の入った様子で地面を蹴っていた。

「……はぁぁぁぁぁっ!」

 ゼクトールが突進を開始してきたところでミディアも溜めていた力を一気に解放した。渾身の力で迫るゼクトールの顔面に向かって薙ぎ払いをした。

「一閃っ!!」

 力と力のぶつかり合いはミディアの圧勝であった。薙ぎ払いの一撃はゼクトールの前足と頭を易々と斬り落とし、そのままゼクトールは転倒、地面に倒れながらの突進では威力はなく鎧のないミディアであっても止めることは容易であった。

「……ハァ……ハァ……これで……片付きましたよね……」

 頭を失ってもなお転倒したゼクトールの体は動き続けていた。しかし体を起こすこともできずただただどくどくと赤黒い血を噴出させながらもがき続けるだけであり、何もしなくても息絶えるであろうことは目に見えていた。

「……よかった……思い出せて……」

 ミディアは力を使い果たしたようでその場に力なくへたり込んでしまった。あれほどまでの力を見せていたとはいえミディアもほぼ満身創痍であり、その疲れが今になってどっと出てきたようである。

「……少し……休ませて……」

 ミディアがそのまま横になろうとした瞬間、体を揺さぶるような横揺れが近くで起こり始めた。

「な……何……!?」

 その揺れは確実に近付いていた。地面の下から何かが迫ってきているということだろう。その相手に対処できる力は当然ミディアには残っていない。

「きゃぁぁぁっ!」

 そして揺れを起こしていた張本人が地面から姿を現した。大きな八本の細い足が突き出てくるとその下から体が現れたその姿は紛れもない……

「……土蜘蛛……しかも……この気配は……」

 灰白色の体にはところどころ黒い斑点が入っており、鎧のような甲殻が関節部分や腹部などの部分を中心に覆っていた。さらにそこに赤黒いオーラ。これも魔界の加護によるものだと考えればこいつがファラの言っていた魔界十二使徒のトロスニアということになるのだろう。

「……ひっ!!」

 地面から姿を現したトロスニアは転がっていたゼクトールの体を貪るようにして喰らっていた。まるで用済みとなった者を処分しているかのようなその姿にミディアも恐怖していた。

「……今この状態であんなのの相手なんて……」

 ゼクトールを喰らうことに今は集中しているものの喰らい終われば次の標的は当然自分であろう。体力はほぼ限界に近くまた鎧は剥がれ防ぐこともできず、地面に潜られてしまえば今のミディアではお手上げであるが地面に潜る前に蹴りを付けられる力は残っていない。

「……すみませんっ!」

 鎧神としての意地や誇りはあるものの、防ぐことすらできないような状態であれば無理をせず下がること。これはランディからも言われてきたことである。それくらいの冷静な判断はミディアにもできた。残る体力を振り絞ってミディアは速やかにその場を離れていった。しかしその動きはすぐにトロスニアが察知していたようである。ゼクトールを喰らい終わるとすぐに地面に潜り逃げるミディアを追いかけ始めた。

「……っっ……逃がしてはくれないのですね……」

 ミディアはそこで急転換しトロスニアのいた方向を向くと、地面の動きに細心の注意を払った。ひとまず地面からの奇襲を封じなければ勝負にならないだろう。幸いトロスニアの気配は地面を通していてもはっきりと分かるものであったために捌くのも簡単だと思っていた。

「!!そんなっ!……でもっ!」

 しかし地面から出てきたトロスニアは完全にミディアの背後を突いていた。満身創痍の体では感覚も大分ずれが起きていたようである。ここから守りの体勢に入ったとしてもとてもではないが防ぎきれない。咄嗟の反応でミディアは回避を選択した。振り下ろされたトロスニアの2本の脚は鎌のように空気を切り裂いてミディアがいた場所に突き刺さった。

「…………誰か……」

 辛うじて避けることができたもののこれが何度もできるとは思っておらず、早いところ援軍が欲しい場面であった。

「……よぉ、大丈夫か?」

「え……?」

 そこに待っていたかのように声をかけてくる存在がいた。

「……ファラがトロスニアの動きに気付いたからな、すぐにこっちに派遣された」

「ラヴィスさん……助かります……」

 ミディアの後ろには大剣を構えたラヴィスが加勢に来ていた。いち早くラヴィスが駆けつけてこれたのもファラの機転が効いた判断によるものであった。

 ・
 ・
 ・

「……大丈夫、みんな?」

「……大丈夫だが……流石に無理できねぇ分殲滅速度は遅いな」

 本体は魔界軍の部隊との交戦をしていたが思いの外殲滅は進んでいなかった。将軍とヘリオス、エミリオの攻撃に特化した神界八将の一時離脱による戦力のダウンは相当のものであり、現状では対魔物相手に効果の高い聖女2人による法撃に頼らざるを得ない状況であった。

「……ルミナス、あまり無理はするなよ」

「大丈夫です、それくらいの加減はしています」

「フィア、将軍がいないからって勝手に無茶するなよ」

「……ふふ、ご安心を。将軍様が戻ってくる前に離脱するようなことはありませんよ」

 聖女2人の指揮はラヴィスが取っていた。その指示で聖女2人が適度に法撃を撃ち、残りは比較的攻撃力の高い双神リンデを中心に殲滅を行っていた。

「……さて、じゃあオレもちょっくら本気出すとするか……」

「ファラも無理しちゃダメだよ?」

「……言われなくても……」

 聖女たちとリンデの活躍に触発され鎌を振り回していたファラがネレイスの方を振り返った時であった。遥か遠くの方の魔界の気が奇妙な動きをしていることに気付いた。

「……っち、トロスニアのヤツ動きやがったな」

「え……!?」

「……あの重騎士も流石に2体相手は無理だぞ」

「トロスニアってどんなの?」

「……面倒な土蜘蛛だ。動きはそれほど速くはないが地面に潜って下から奇襲をかけてきたり罠を張ったりと狡猾で厄介なのが特徴だ」

 ファラも大分焦りの色を隠せない様子であった。ゼクトールのように単純に戦える相手ではなく、それなりに考えて戦わなければ返り討ちにあう可能性があるためにミディアを戦わせるには非常に危険な相手であった。

「……ネレイス様。急ぎだから……申し訳ないが……」

「了解、ミディアさんの加勢に……」

 ネレイスが立派な精霊の羽を広げ飛び立とうとした時であった。ネレイスのところにラヴィスが駆け寄ってきていた。

「……待て、ネレイスどこに行く?」

「ミディアさんのとこにトロスニアが奇襲を仕掛けようとしてるみたいなんだって、すぐ加勢に行かないと……!」

「……ネレイス。ルミナスとフィアの指揮を頼む。我が加勢に向かう」

「え……!?ラヴィスじゃ……」

「ネレイス、お前が今は総大将だ。総大将が本体の指揮をとらんでどうする」

「でも……」

「……将軍、ランディ、ヘリオスにエミリオ、そしてミディアと仕事してるんだ……そろそろ我が出てもいいだろうよ」

 現在この場に残っている神界八将は残り3将。そのうち双神リンデは現在この場で戦っており手が離せない。避神クロノスは戦闘要員ではない。となれば残るはラヴィスである。

「……この場を捌くぐらい我がいなくても大丈夫だろう。それにここを凌げば将軍たちを待つ時間くらいはできるだろうからな……」

「ラヴィス……」

「時間がないんだろ?任せたぞ」

「あ……ちょっと!」

 そしてラヴィスはネレイスの指示が出る前にミディアの戦っている方へと駆け出して行った。

「……あはは……行っちゃった」

「あんなダッシュして平気かよ……」

「大丈夫だよ、意外とラヴィス足速いしスタミナもあるから」

「……そうかい」

 ファラは呆れ顔でラヴィスを見送っていたがネレイスはすぐにルミナスとフィアの元に駆け寄っていった。

「ラヴィスがミディアさんの加勢に入っちゃったからあたしが指揮をとるよ」

「ふふ、そうですか」

「でしたら……」

 そのタイミングで聖女2人は示し合わせたかのように法撃攻撃の回数を増やした。

「戦力減った分頑張らなくてはいけませんね」

「え、ちょっと……」

「大丈夫です、これくらいすぐに回復しますよ」

 先ほどまでとは比べ物にならないほど殲滅速度は上がっていき、この2人を止めることは指揮していたネレイスであっても不可能であった。

 ・
 ・
 ・

「……さて、ここは我が相手になってやろう。お前は下がって休んでろ」

「はい、お願いします……」

 こうしてラヴィスは息を切らせた様子もなく加勢に駆けつけていた。そのラヴィスに後を任せミディアは距離を取っていった。そのミディアを追おうとトロスニアも地面に潜ろうとしていた。

「行かせないぜ!」

 そのトロスニアの体めがけてラヴィスは一太刀浴びせていた。ダメージこそ期待はできなかったが注意を引くには十分であり、トロスニアの目標をミディアから自分に向けさせることに成功した。

「そうそう、じゃあ……魔界十二使徒の力……見せてもらおうか!」

 トロスニアがラヴィスに目線を向けると自慢の大剣をその目線に突き付けた。闘神の名を冠するラヴィスの力が今ここで問われようとしていた。



←Chapter6     Chapter8→


シウェラートの臨時報告

Ra:ラヴィス Siw:シウェラート



アークスシップ シップ4 アンスール某所



ピピピッ…… ピピピッ……



Ra:……ん、通信……?



Siw:マスター、報告です



Ra:ああ、シウェラートか。シップ9へと出張してくると聞いていたが……



Siw:マスター、先日奇妙なものを発見致しました。私のデータにもなかったのでマスターにご報告をと。



Ra:奇妙なもの?どこで見つけたんだ?



Siw:先日惑星ナベリウスで確認致しました。これより画像を送信致します。



Ra:ああ、頼む








虹色の輝き








Siw:マスター、こちらです



Ra:あー……これは……(汗だらーっ)



Siw:赤く輝くコンテナは何度も確認しています。しかし虹色に輝くコンテナが存在することは私も確認したことがありません



Ra:……で、そのコンテナどうしたんだ?



Siw:ひとまず回収をしておきました。その後の処分はマスターにお任せします



Ra:……そうか、ご苦労。ひとまず他の武器と同じように鑑定してきてくれ



Siw:畏まりました、マスター








インヴェイドさん








Siw:マスター、鑑定結果がこのようになりました



Ra:ご苦労さん……出たのか……



Siw:マスター?



Ra:シエラ、そいつは新しく追加された★13という最高レア度の装備だ



Siw:この虹色の★が虹色のコンテナであることの証という認識でよろしいですか?



Ra:まぁそうだな……ちょうどお前が持ってる“ヤスミノコフ8000C”もその★13の装備だ



Siw:そうなのですか?使う人がいないので私が使うよう指示を受けていたのですが……



Ra:……そうだったな








持てないのでホログラムにて








Siw:マスター、かなり禍々しい力を感じます



Ra:こいつ取る時にこんなやつと戦わなかったか?








【深遠なる闇】









Siw:はい、非常に強大な相手でした。非常に苦労致しましたが私の支援能力が少なからず役に立っていたようで無事撃破できました。



Ra:そいつがもとになってできた武器だからな。そいつが持つ力も相当強力だろう



Siw:……しかし私は大剣を扱うことができません。マスターは大剣を使うことありますよね?



Ra:ああ……だがまだお前にはまだまだやることが多いだろう?とりあえず倉庫に放り込んで任務完了して帰還する際にお土産として持って帰ってこい



Siw:了解しました、マスター



Ra:わざわざ報告ご苦労だった。今後もそちらでの任務は任せたぞ



Siw:はい。それと……今後もあの敵とは何度も交戦することになるという話が上がっているのですが……



Ra:ああ、そうだな。余裕があれば相手をしてやってくれ。こちらはミディアがいつも出てくれているからな



Siw:分かりました。ではマスター、また何かあれば連絡致します。



Ra:ああ、またな



(通信を切断した)



Ra:……よりにもよってソードか……出た以上は使わんといけないが……ハァ……








と、いうことで先日のアップデートにより解禁された「世界を壊す流転の徒花」にて新しく登場した新★13武器の“インヴェイド”シリーズよりソードの“インヴェイドカリバー”を入手しました。これでヤスミ8000に続き2つ目の★13武器になります。

丁度ニコニコ生放送中のアンケートでレアドロ倍率が+150%となっていましたので折角だから別要件で他鯖に出していたガンナー担当のシウェラートに行かせてみたところ……やらかしましたと。

思えばシウェラートに渡ったヤスミノコフ8000Cも丁度ニコ生アンケートでレアドロブーストのかかったエルダールーサー連戦で出たものでしたのでやはりブーストの効果はかなり強力なんですね……

それにしてもやっぱりメインで使ってる鯖ではなく誰かを派遣した鯖の方で、しかも派遣されてる子が装備できないものを落とすのは宿命なんでしょうね……

私自身あまり★13堀りに積極的ではない分装備自体のスペック等については詳しくはないですが、このインヴェイド系の装備は

・インヴェイド武器 1個
・深遠片カリギューラ 100個
・黒曜片ネロウ 100個
・極原晶ガレル 50個
・極機晶ユルルングル 50個
・魔石ハートキー 5個
・魔石ブラッディムーン 5個
・魔石ファントムナイト 5個
・エクスキューブ 300個
・フォトンブースター 10個

という非常に膨大な量のアイテムと交換することによりさらに強力な“オフスティア”シリーズにすることができるそうなのです。現時点でガレル、ユルルングル、ハートキー、ブラッディムーン、ファントムナイト、エクスキューブ、フォトンブースターは揃っていますので残るはカリギューラとネロウのみですね。ネロウはこの先クリスマスビンゴの景品として出る話があるようなので当面は【深遠なる闇】から入手できるカリギューラを集めることになりそうです。余裕があれば複数鯖で回って少しでも数を稼いでおこうと思います。ただこの作業の中でまた★13が出てきたら……そこは要検討ですね。

それでは1日2回更新という珍事はここでおしまい。また次回の更新で!


ブログ開設3周年記念特別SS 魔界鎮圧作戦 ~Chapter6~

「ヘリオス、疲れてきてるんじゃない?」

「当たり前だ。敵の攻撃を全部捌かないといけないんだぞ?攻撃の届かない場所にいるお前より先に疲れが来て当然だ」

 ヘリオスの動きが鈍ってきていたのをエミリオは見逃していなかった。仕留め損なう敵の数が増えてきたためにフォローをするエミリオが思わずひやっとする場面が増えてきており、軽口を叩いてはいるものの内心は心配で心配で仕方なかったのである。

「エミリオ、代われるか?」

「いいわ、ヘリオスは少し下がってて」

 そう言うとエミリオは高度を下ろし、さらになんと愛騎のアキオスからも降りてしまった。

「おい、エミリオ!?」

「地面すれすれでアキオスを飛ばすのはかなり難しいのよ?無理はさせたくないからこれで行くわ」

「お前は白兵戦なんて……」

「……ヘリオスほどじゃないけどね、でも……」

 心配をしているヘリオスをよそにエミリオは自慢の槍を振り回してる。

「……ニンブスハスタの力……見せてあげるから!」

 エミリオは最後に大きく一薙ぎすると迫る敵部隊を軽く吹き飛ばしていった。その衝撃は部隊の後方にまで広がっていく。さらに絶えずエミリオの周りには竜巻のような風が渦巻いており、他者を寄せ付けない空気が漂っていた。

「私に触れれるものなら触れてみなさい!」

「……やれやれ、あんなに飛ばすとバテるだろうに……・ま、いいか」

 その様子をヘリオスは後ろから見ながらそうぼやいていた。 





「この辺まで来れば一息つけるだろ……」

「うん、そうだね……」

 ネレイスたちは一息ついていた。予想していたよりも早いペースで進軍することになってしまいメンバーに疲れが見え始めていたことと、神界八将のうちの四将が戦闘により離脱をしそろそろ戦力的にも不安を感じるような部分も見えてきていたことからの決定であった。

「……ネレイス、体は大丈夫か?」

「うん、まだまだ平気だよ」

 魔界の負の気にここまで大分長い間晒されてきたネレイスであったが今のところ調子が悪くなったりはしていないようだ。

「……魔界宮殿はまだまだだからな……それに……」

「……何か来るのか?」

「……いーや、見たくもねぇくらい宮殿周辺に部隊が展開されてるよ。あれを抜くってなると……どうしたものかな」

 ラヴィスにははっきり見えていなかったが魔界の住人であるファラには展開する敵部隊の姿がはっきりと映っていた。城壁とは別に築かれた魔界軍の壁も突破をすることを考えればまだまだ消耗は避けたいところである。

「…………」

 なにやら熟考している風のファラであったがその視線の先で気になるものが映った。

「……ち……あれは……」

「どうした?」

「……魔界十二使徒だ。トロスニアとゼクトールだな……トロスニアは罠を張ってゼクトールは奇襲を仕掛けてくる形だな」

 いち早くファラが魔界十二使徒の接近に気付いたようである。

「どうするんだ?この人数なら……」

「ねぇ、ファラ。向こうからも部隊が来てるみたいだよ?」

「チィ、面倒だなぁ、オイ」

 ファラが露骨に嫌そうな顔をしていく。

「……あの……ランディさんから聞いたのですけど……ゼクトールって猪みたいな魔物なんですよね?」

 そこにミディアが声をかけた。槍を構えたその姿は既に戦う気満々のようである。

「……ああ、走り出したら死ぬまで止まらねぇんじゃないかってほどの突進バカだ……」

「……私が止めます」

 ミディアのその言葉には強い意志がこもっていた。

「……そういう相手を止めるのが私の仕事ですし……ランディさんも言ってました。私でなければ防げない場面がある……と。それが今なのだと思います」

「……そうだな、オレもゼクトールの相手はお前が適任だと思う。任せたぜ」

「はい、お任せください!」

 迎撃に向かうミディアの後ろ姿は非常に頼もしく見えた。

「トロスニアは放っておいても向こうから攻めてはこないだろう、残るやつらで横槍入れてくるやつらをぶっ飛ばしに行くぞ」

「了解、みんな頑張って!」

 そして残る人手でまずは側面から来ていた攻撃部隊を叩きに向かっていった。



「……随分時間かかっちまったからな……本隊は随分先に行ってるようだ」

「精霊界女王は長期戦には不向きと聞いている。そのせいもあるのか?」

「……不向きとはいえ闇雲に突っ込むようなヤツではない。となると……」

 進む将軍の視線の先には不自然に抉れた地面や焼けた草木が目に付いた。こんな状況を作り出せるような存在に将軍は心当たりがあった。

「……強敵の襲撃が続いて息つく暇なく進まざるを得ない状況になってるんだろうな」

「魔界十二使徒……か」

「単独での戦闘能力はかなりのものだが……正直オレの戦ったやつはそこまで強いヤツではなかったな」

「1対1で捌けるのであれば問題ないだろうな……」

 そして進んでいく先に一人の男が座っていた。

「……ん、将軍か。無事合流できたようだね」

「ランディか……これは……」

「ヴァンフレアを捌いていた。決着はついたよ」

 ヴァンフレアを倒したランディが焼け焦げた野原の上で座り込んでいた。その周りには砕け散った骨の破片やら翅の残骸やらが散らばっており、ヴァンフレアの体は既に灰となり消え去っていた。

「……雷撃もらってたわりにはよく捌けたじゃないか」

「まぁね、力に頼る敵を御すことは僕の得意技のようなものだったからね」

「……片付いてたんだったら手伝いにきてくれりゃよかったのに」

「はは……勘弁してくれよ。僕は将軍ほど体力はないんだ。魔界十二使徒を捌いたら疲れて動けないさ」

「ま、そりゃそうか。ま、なんにせよお疲れさん」

 ランディは意味深長な笑みをしていたが、将軍はそれに気づくこともなくランディの労をねぎらった。

「じゃあすぐ追いかけるぞ」

「やれやれ……もう少し休ませてくれてもいいのに」

「休まずに頑張ってるやつらがいるんだぞ、もっと頑張れ」

「……仕方ないなぁ」

 ランディはようやく重い腰を上げた。疲れていると言った割にはまだ大分動けそうであった。

「よし、じゃあさっさと合流しに行くぞ」

 将軍の後に続きランディも進んで行った。そのランディのポケットには毒々しくも妖しい魅力を感じるような綺麗な翅が入っていた。



「…………」

 いつになく集中した面持ちでミディアは佇んでいた。ファラの見立てではじきにこの位置をゼクトールが駆け抜けていくはずである。それを止めるのが自らに課された役割であった。

「……必ず……止めます」

 ゼクトールを後ろへ通せばネレイスたちはさらに厳しい戦いを強いられることとなる。自ら名乗り出て、さらには信頼されて送り出された以上自らの持つ守護の矜持にかけて絶対に失敗できない仕事であった。

「……あ……あれでしょうか……」

 そのミディアの視線の先に濛々と土煙ををあげながら迫ってくる大きな影が映った。遠くからでよくは分からないもののそのシルエットはまさしく猪のようであり、体の大きさも相当ありそうであった。

「……う……流石魔界の……」

 その姿はみるみる大きくなっていき、全体像もはっきりしてきた。まず体の大きさは鎧で身を固めたミディアよりも2回りほど大きく、体長は推定で3mくらいありそうだった。赤黒い毛皮をし、丸々とした体に強靭な四肢、そしてなにより大きく伸びた牙にべっとりとついた赤黒い血の量の多さがこの者の強さを示しているようであった。

「でも……私も鎧神と呼ばれているのです。相手の迫力に負けたりはしません……」

 一瞬ミディアも想像以上の相手を前にたじろいでいたがすぐに気合を入れ直すと左手に構えた大きな盾を体の前に立てた。鎧と同じ緑と橙色の2色で作られている自分の体よりもやや大きいその盾には鎧神であることを示す自らのエンブレムが刻まれており、鎧神となってからも多くの敵を抑えてきたその盾には傷やへこみ一つなく手入れをされていた。

「……必ず止めてみせます……」

 突進してくるゼクトールも当然前方に立ちふさがるミディアの姿には気づいているだろう。しかし全く意に介していないようであり勢いを抑える様子は全くなかった。

「……究極守護術……絶対守護障壁っ!!」

 そしてミディアとゼクトールが激突する直前ミディアはそう言うと大盾を地面に突き立てた。するとそこから放射状に光の壁が展開されていきミディアの防御網が形成されていった。そしてそこにゼクトールが激突した。

「……っっっ!!」

 その瞬間にミディアがこれまでに経験したこともない衝撃を感じた。衝突の際の勢いだけでなく魔界十二使徒が纏う強力な魔界の気が一斉に押し寄せてきてたのだった。

「くぅぅぅぅっ……!!」

 ミディアは完全に押されていた。ゼクトールの勢いは止まらずそのままミディアを押し込みながら突き進み続けていた。

「……く……止めるんです……」

 しかし押し込まれてはいたものの絶対守護障壁は破られていなかった。勢いと迫力では負けていたものの力と気持ちでは十分に勝っていたようである。

「……私は……皆さんの盾となる存在……」

 しばらくするとゼクトールの勢いが落ちてきた。ずるずると引きずらされていたミディアの足も次第に地面を捉えられるようになっていた。

「鎧神としての……意地と誇りがあるんです!!」

 そしてついにミディアの足はしっかりと地面を捉えて踏ん張りがきく状態となった。これによりゼクトールの勢いは完全に止まった。

「はぁぁぁっ!!」

 勢いが止まったゼクトールにミディアは思いっきり盾を押しつけていった。すると逆にゼクトールの前足が浮き上がり形勢が逆転した。そのままミディアが大盾で弾き飛ばすと大きな体のゼクトールをごろんと地面に転がした。

「……止めました……」

 絶対守護障壁を解いたミディアも大分消耗していた。第一まだミディアは“止めた”だけである。時間稼ぎにはなるかもしれないが撃破をしなければこの脅威を取り除くことはできない。

「……さぁ、勝負ですよ!」

 ゼクトールもどうやらミディアを敵として認識しているようだ。荒い鼻息を立てて前足は地面を蹴っていたが、ミディアが大盾を構えなおすとそこに向かってゼクトールは突進を開始した。

「……何度でも止めます、絶対守護障壁!」

 そのゼクトールをミディアは再び絶対守護障壁で迎え撃った。





「おいエミリオ……」

「ハァハァ……飛ばしすぎたかな……」

 エミリオは体力の限界ギリギリまで頑張っていた。その結果おおよそ部隊の半数ほどを蹴散らすことができていたのである。後ろで見ていたヘリオスもエミリオ単独でここまでできるとは思っていなかったようだ。

「ゴメンヘリオス、後は任せていい……?」

「十分に休ませてもらったからな。任せろ」

 ここまでの活躍を見せつけられた以上同じ神界八将として負けるわけにはいかなくなったヘリオスも馬から降りて槍を手に取っていた。

「ヘリオスも白兵戦するの?」

「当然だ、同じ条件で戦わねばな」

 エミリオと違いヘリオスは白兵戦の経験も多くエミリオのような力押しでなくても十分に捌いていける自信があった。

「じゃあ見せて頂戴」

「……行くぞ!」

 ヘリオスは槍を回しながら敵の部隊に突っ込むと流れるような槍捌きで敵を蹴散らしていった。隙のないその動きはまさに槍の名手とも言えるであろう。

「久しぶりにやったが十分動けるな」

 その後も目にも止まらぬ連続突きや薙ぎ払い、柄を利用した打撃など様々な技を駆使して戦闘を続けていった。

「……ふふ、ヘリオスも熱くなっちゃって……」

 愛騎アキオスの背中で横になりながらエミリオもヘリオスの戦いを静かに見守っていた。




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Author:ラヴィス
パソコン使えないくせにブログに手を出した愚か者。
……温かい目で見てもらえるとうれしいです。

毎週月曜に大小の違いはあれど更新中です。

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