ブログ開設3周年記念特別SS 魔界鎮圧作戦 ~後日談~

「……ノエル様……報告に参りました」

「ありがとうございます、リッチさん……」

 神界のノエルの部屋にはリッチが訪れていた。普段はフードを目深にかぶり決してその素顔を見せないリッチだったがノエルの前ではそのフードを外していた。

「……魔界突入班の生存者は将軍とクロノスのみ……被害は甚大だったようですね」

「……はい……医療班が皆さんの転生作業を全力で続けています……」

 結果無事に帰ってきたのは将軍とクロノスだけであった。SkyBlueのメンバーは世界の安定という責務を果たすまでは命を落としても転生されることとなるのだが、ここまで多くのメンバーの転生作業にあたったことはこれまでに例はなく、医療班のスタッフは大分あわただしく動き回っているようであった。

「天界の天使部隊は加勢に来た第6、第7聖女の部隊が共にほぼ壊滅……天界で防備にあたった部隊は負傷こそあれ被害はさほど多くはないとのこと。一方精霊界の被害はやはり甚大。突入部隊、防衛隊共に壊滅的被害……ただ八理守護精霊はいずれも健在ということから混乱は収拾できているようだ……」

「……早くネレイスさんを向かわせたいですよね……」

 神界勢力に加担してくれた天界、精霊界の部隊にも多くの被害は出ていた。共に現女王は転生中であり、留守を任された聖女・精霊が上手く取り仕切っているようである。ノエルは後で直々に協力のお礼を述べに向かおうとしていた。

「……そして冥界の被害はほぼ皆無だ。冥界に避難したグレモル・バレンシア両名もじきにこちらに来るそうだ」

「……リッチさんも協力感謝です……」

 魔界王を倒し宮殿が崩落してもなお魔界の残党は抵抗を続けていたが、その処理を行ったのが冥界の部隊であった。最終的に冥界の加勢が魔界の完全な鎮圧に一役買ったのである。

「……こちらからの報告は以上です……」

「はい、ありがとうございました」

 リッチは最後に膝をついてそう挨拶をした。そのリッチにノエルは深々と頭を下げた。

「……では……え……?」

 ノエルが頭を上げてリッチの方を向くとリッチの後ろには見慣れない真っ黒の人形がふよふよと浮いていることに気付いた。

「あの……リッチさん……?」

「ん?ああ、こいつか」

 リッチは手を出すとその真っ黒の人形はリッチの手の上にふよふよと動いていった。

「……試作型魔界茶器人形エリザベート……まさかこんな貴重な品に会えるとは思っていなかったな」

「な……なんですかぁ、その……」

「魔界茶器人形……魔界の殺戮兵器として開発された……」

「あ……いいですいいですぅ!」

 リッチが非常に興奮した様子で喋り出したところを慌ててノエルは遮った。

「……つまりリッチさんが興奮するくらい貴重なものってことですね?」

「そういうことだ。いやぁ……崩れた魔界宮殿から見つけられて本当によかった!」

 エリザベートと呼ばれた黒い人形の着ていた服はボロボロになり、片腕が取れてしまうなど大分痛んでしまっていたようだが問題なく動くようであり、殺戮兵器とリッチが言った割にはリッチによくなついているようであり暴れ出すような気配は全く見られなかった。

「……」

「……?」

「はわっ……!!」

 ノエルがしげしげとエリザベートを見ているとそれに気付いたのかノエルと視線を合わせた。漆黒に塗られたその顔に深紅の瞳をしたその人形の見た目にノエルは完全に怖気づいてしまったようである。その様子を見たエリザベートはどことなく寂しそうであった。

「……ん?怖いのか?」

「……うぅ……当たり前ですよぉ……」

「可愛いと思うんだが……」

 リッチはエリザベートを本当に可愛がっている様子であった。リッチに撫でられているエリザベートは本当に幸せそうである。

「…………」

 この時リッチもノエルも気付いてはいなかったがエリザベートは魔界宮殿内でネレイスたちの前に立ちふさがり、ラヴィスによって倒されたはずのあの魔界人形であった。

 ・
 ・
 ・

 時は少し前、将軍とクロノスが神界へと戻ってから数十分程度経った後のことであった。

「……リッチさん。ライヒェから……市街地の残党は一掃し終えたようです」

「これで完全に鎮圧できたということだな……」

 完全に崩壊し瓦礫の山と化した魔界宮殿の前にリッチとミントの姿があった。今は圧倒的な数の冥界軍を指揮し魔界軍の残党を処理し終えて状況確認を行っていたところである。

「……跡形もなくなってしまっていますね」

「この宮殿自体が魔界王そのもののようなものだったんだろう。まぁ……再建する側にとってはたまったもんじゃないだろうが」

「宮殿の建て直しからですもんね……」

「……さて、じゃあミント。ここでやることは分かっているな?」

「はい、現在ラヴィスさんとネレイスさんが消息不明のままです。崩れた宮殿内にいる可能性があるので……」

「そうだ、特にミント、お前は霊体の体を生かして瓦礫の中でもすいすい進めるだろう?頼むぞ」

「分かりました」

 そう言うとミントの体は半透明となっていき瓦礫の山の中へすーっと入っていった。

「さて、では私はこちらを……」

 そしてリッチもミントとは反対側の瓦礫の山へと向かっていった。

「…………」

 リッチの手には闇の塊ができていた。それを上空へと放り投げると闇の塊は大きく膨らんでいき、やがて弾けて拡散すると瓦礫の山へと降り注いでいった。その様子を見ると懐から謎の計器を取り出しじっくりと観察を続けていた。

「……異常なし……この辺には何もないか」

 計器に何も反応がなかったことが分かるとリッチは場所を変えてまた闇の塊を投げ計器を見るという作業を繰り返していった。リッチは冥界王だが、それと同時に冥界で闇を用いた研究を続けている研究者でもある。その得意分野を用いて拡散させた闇を用いて瓦礫の下にあるものを捜索するいわばレーダーのような装置を今回ラヴィスとネレイスの捜索に用いていたのである。この闇を用いた技術は非常に手早く、確実性の高い分析ができ、これによって冥界の技術革新をもたらしその功績で冥界王の地位へと上り詰めていた。

「……ここも反応なし……か」

 捜索範囲は非常に広かったがリッチは少しずつ丁寧に捜索を続けていった。しかし計器は一向に怪めぼしい反応を示さなかった。

「…………」

 何も反応を示さないまま1時間近くが経った。もう何回目かも覚えてない闇の塊を生み出し放り投げる作業を行い、計器の様子を確認した。

「……!!これはっ!」

 すると急にリッチの目の色が変わった。これまで全く反応を示さなかった計器に突然大きな反応が現れていた。

「……闇自体に反応している……?それにこの大きさ……人間のものじゃない……」

 ラヴィスやネレイスといった人に反応するのであれば別の反応を示すはずだった。さらに反応を示している範囲が人間の子供よりもさらに小さいくらいの範囲であった。つまりラヴィスやネレイスではない“何か”に行きあたったようだ。

「……掘り返す価値はあるだろう」

 その“何か”に興味を持ったリッチは瓦礫の撤去作業に入った。だが当然リッチの力では瓦礫を撤去していくことはできない。

「収縮……崩壊……圧殺ぅ……!」

 リッチは先ほどまでと同様に闇の塊を作って今度は瓦礫の上へと投げつけた。投げつけた闇の塊が瓦礫にくっつくとその瓦礫と周囲にあった瓦礫を闇の塊がまとめてくっつけていった。くっついた瓦礫は闇の力によって圧縮されていき、その力に耐えられなくなった瓦礫は粉々に砕け散っていった。大きな瓦礫はこうやって次々と粉砕していった。

「……よし、後は……」

 残った小さな瓦礫は手作業で丁寧に取り除いていった。やがて一部宮殿の床だった部分が見えるくらいにまで瓦礫の除去が終わっていた。

「……この辺にあるはずなんだが……」

 そこからさらに床が見えるように瓦礫を動かしていった。するとそこから陶器でできた皿の破片のようなものが見つかった。

「……ふむ……この皿は……」

 さらにリッチが瓦礫をどけていくとさらに皿と同じ模様のティーカップやティースプーン、そして砂ぼこりを被ったアタッシュケースも見つかった。

「……む……紺色のアタッシュケース……もしや……!」

 このアタッシュケースを見たリッチの目つきがさらに変わった。にやけ顔となったリッチの表情からはとんでもないお宝を見つけてしまったということが分かった。

「……ふふふ……やはり!」

 さらに手際よく瓦礫をどけていくとついにそれは姿を現した。真っ黒な体、深紅の瞳、闇色のドレス。ラヴィスによって倒された魔界人形であった。

「……これは間違いない……試作型魔界茶器人形エリザベート!」

 埃を被ったその人形を両手で大事そうに拾い上げた。服は既にボロボロで右腕は取れてしまっており、深紅の瞳もどことなくくすんでしまっていてラヴィスが戦ったときの姿とはもうかけ離れていた。

「……魔力がもう空っぽなのか……」

 全く動かないエリザベートを乗せた手には闇の魔力が集まっていき、それがエリザベートを包みこんでいった。しばらくするとエリザベートの瞳に輝きが戻りリッチの手の上でふよふよと浮かび上がった。

「よしよし、とりあえずは動いたか」

「…………?」

 エリザベートはリッチを不思議そうに眺めていた。ネレイスたちと遭遇した時のように急に襲いかかろうとする様子はなかった。

「……修復してやりたいが構造も分からんし材料もない、ひとまずこれで我慢してくれ」

「……ダレ……?」

「お、言葉も分かるし喋れるのか」

 これまで一言も発しなかったエリザベートが片言の言葉で喋りかけてきた。その声は呪詛や怨嗟に似た恐ろしいものであったが、その中にどことなく寂しげな気持ちも感じられたような気がした。

「……アナタ……ダレ……?」

「私は冥界王リッチ=ハーデス74世……」

「メイカイ……?」

「ああそうだ、死人の世界だな」

「ワタシハ……」

「……試作型魔界茶器人形エリザベート」

「エリザベート……?」

 リッチの言葉に人形は首をかしげた。どうやら自分のことすらよく分かっていなかったようである。

「自分のことも知らないのか……?」

「ワタシ、ナニモシラナイ……」

「そうか、なら知る限りのことを教えてやろう」

 するとリッチは瓦礫に腰掛けてエリザベートにその生い立ちを語り始めた。

「まず君は殺戮兵器だということは自覚しているかい?」

「……ニンゲン……キライ……」

「その辺の自覚は一応あるようだな……君は魔界茶器人形と呼ばれる魔界の中枢部が企画製造した人間抹殺用の殺戮兵器だ」

「…………」

「人形は最初こそ人間に愛され可愛がってもらえるが次第に見向きもされなくなり捨てられることが多い……そのためか負の気と呼ばれるものを溜め込みやすいと言われている。また人形と言えば普通は動かない……そのため警戒心というものが他のものに比べて薄れやすい……さらに使用人の姿をとらせたのは美術的価値を高めるためだろう……魔界でも貴重な素材を利用し非常に高度な技術でとても美しく作られている……素晴らしい……!」

「……??」

「……っと失礼、脱線したな」

 次第に興奮気味になっていったリッチはエリザベートの不思議そうな視線に気付いて我に返った。

「君はその試作型として製造された。現在量産されている魔界茶器人形の大本となったオリジナルモデルだ」

「……デモ……ホカノミンナハワタシトチガウ……」

「……そうだな、君は殺戮兵器という面を強く打ち出しすぎた。いかにも禍々しい色合いと姿……これでは人間はただただ怖がって近寄ろうとはしない……これではもともとのコンセプトからは外れてしまう……だから君が量産されることはなかった」

「……ワタシ……ヒトリダケ……」

「その後君をベースに新しくジャスミンと呼ばれる新型タイプの魔界茶器人形が開発された。見た目も可愛らしくそれでいて殺戮性能は控え目にはなったものの十分なレベルを保っており資材や金額の面からも非常に良好だったことから量産が決定。新しく数体のジャスミンタイプのベースを作り出したことでエリザベートの存在は魔界でも忘れ去られていったわけだ」

「……ウゥゥ……」

 エリザベートのあげた嘆きの声には強い負の気がこもっていたのを感じた。

「……君はずっと魔界宮殿に保管されていたのか?」

「……ケースノナカ……ヒトリボッチ……」

「……誰かに出されたのか?」

「……タダソトニデタカッタ……デテコイトイウコエモキコエタキガシタ……」

「……なるほどな」

 寂しげな様子のエリザベートを見るリッチの目が怪しく輝いた。

「エリザベート、君は私を主にする気はないか?」

「……アルジ……?」

「そうだ、君の手入れや補修を私がしてやろう」

「……ワタシ……」

「……ずっと1人だったのだろう?これからは私がずっと相手をしてやる。君は非常に貴重な存在だ、冥界王が保護する存在として相応しい」

「…………」

 エリザベートはリッチに向かってふよふよと近付いていき、ぴとっとくっついた。そのエリザベートをリッチは優しく撫でてあげた。

「……カワイガッテ……?」

「ああ任せろ……大事にしてやるからな」

 不気味な姿のエリザベートであったがリッチに可愛がってもらっているその姿は誰が見ても嬉しそうなものであった。

「……あ、もぅ……こんなところで何やってるんですか……」

「お、ミントか、見たまえこれを!」

 そこにがれきの中を捜索していたミントが合流した。そのミントにリッチはエリザベートを自慢げに見せつけた。

「……なんですか……その不気味な人形は……」

「不気味とは失礼な……可愛いじゃないか!」

「か……可愛い……?」

 興奮気味に話すリッチにミントはあきれたような顔をして見せた。研究熱心なリッチは興味を持ったものにはとにかくのめり込んで行くタチでありそうなるとミントであっても手がつけられなくなってしまうのであった。

「……まぁエリザベートの話は後にしよう。で、捜索結果はどうだったんだ?」

「……ラヴィスさんは瓦礫の下から発見されました……既に神界への搬送は完了しています」

「……ご苦労」

「ネレイスさんの方は……見つかりませんでしたが痕跡は見つかりました」

「……痕跡?」

「……既に誰かがネレイスさんを神界へと搬送していたようです……」

「ふむ……誰がやったのかは気になるところだが既にいないのならばもう捜索は終わりにしてもいいだろう……」

「……リッチさんは宝探しをしてただけですけどね」

「……結果的に宝探しになっただけだ、ささ、帰るぞ」

 ミントの小言をさらりと流し、リッチは転移魔法を発動した。そのリッチの傍らにはエリザベートがふよふよとついてきていた。

「エリザベート、これから頼むぞ」

「マスター……!」

 ミントとリッチはエリザベートを連れて神界へと帰還していった。

 ・
 ・
 ・



「ところでネレイスが既にこちらに運ばれていたというのは本当か?」

「あ、はい……こちらの人間ではないのですが……金髪碧眼のお兄さんがネレイスさんと……レゾーナさんも運び込んできました」

「レゾーナ……?」

「はい……魔界十二使徒筆頭の時の精霊だそうです。ネレイスさんはそのレゾーナさんを庇って……」

「……なるほど」

 時の精霊という言葉でネレイスが身を呈してまで庇おうとする意図がすぐに分かった。

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 ・



「……な……何故だ……」

「……貴女は……まだ……」

 ネレイスに体を押されレゾーナは床に倒れ込んだ。これによりレゾーナは瓦礫の下敷きにならずに済んでいた。しかし代わりにネレイスが瓦礫の下敷きになってしまっていた。

「ネレイス、しっかりしろ!」

「…………」

 もうネレイスからの返事はなかった。あの瓦礫の直撃を受けてしまってはもう息はないだろう。魔界の未来を支えていく、そしてそれ以前に甚大な被害を受けた精霊界の立て直しをしなくてはいけない存在がもう不要となったはずの自分を守るために失われてしまった。レゾーナはやりきれない思いでいっぱいとなっていた。

「……何故私を助けた……私は……もう……」

 レゾーナの行使する時の力は時を“止める”ということだけである。瓦礫がネレイスを押しつぶす前に時を戻したり、ネレイスのケガの進行を止めたりすることはできなかった。

「……っっ!!」

 思わず涙を流したレゾーナの上にまた大きな瓦礫が降り注いできた。これに押しつぶされれば自らの望んでいた結末へと行き着くだろう。ネレイスの下へも行けるかもしれない。

「……はぁっ!」

 しかしレゾーナは自らの時の力を行使して降ってきた瓦礫を寸前のところで停止させていた。

「……っく……」

 瓦礫は相当の重量があり、レゾーナが消費する時の力は思いの外多かった。しかしクロノスとの戦いではほぼ時の力を行使することがなかったことが幸いししばらくはこれで持ちこたえられそうであった。

「……今は……まだ死ねない……」

 瓦礫の隙間から出ている冷たくなったネレイスの手を握り締めながらレゾーナは時の力で瓦礫の重量を支え続けていった。誰かが探しに来てくれる、その時が来るまで……

 ・
 ・
 ・



「……ネレイスの転生状況はどうだ?」

「……癒しの気の効果で最後に転生作業を始めましたが……みなさんより早く復帰してくれると思います」

「そうか……」

 するとノエルの部屋をノックする音が聞こえてきた。

「はい、どうぞ!」

「……失礼します」

 ノエルの部屋に入ってきたのはところどころ包帯が巻かれたレゾーナであった。

「レゾーナさん、もう動いて大丈夫なのですか?」

「構わない……ここまで手厚く処置をしていただき感謝する」

「……そうですか……分かりました」

 明らかに強がりを言っていることはノエルにも分かっていたがレゾーナの気持ちを察してあまり深く言うことはなかった。

「……貴女がレゾーナか」

「……そうだ、お前は?」

「……冥界王リッチ=ハーデス74世だ」

「……貴殿が冥界王か……」

 そのレゾーナにリッチは声をかけた。レゾーナの反応はやや堅かったがしっかり相手はしてくれていた。

「……まぁあまり快くは思わんだろうな。無理もない」

「……いや、そんなことはない。ただ冥界の侵攻速度には驚かされた」

「……私もここの回し者だ。最初から侵攻の準備は整えていた」

「……最初から包囲網はできていたわけか」

「……まぁそういうことだ」

「……ん?それは……」

 ここでレゾーナはリッチの影に隠れるようにして覗き込んでいたエリザベートの姿に気付いた。

「ああ、エリザベートだ」

「……引き取ってくれるのか?」

「……何だ?その厄介払いができるような言い方……」

「いや……そんなつもりで言ったわけではない。ただ……可愛がるやつがいなかったからな……」

「……ずっとしまわれていたと言っていたな」

「魔界でも気味悪がられていたからな……見たところ随分なついているようだが」

「可愛いじゃないか。それに希少価値も高い……こういう人形はちゃんと手入れをしながら可愛がってやるものだろう?」

「……いい主を得たな、エリザベート」

 レゾーナがそう声をかけるとリッチの影でエリザベートがこくこくと頷いた。

「……ところでレゾーナ、お前はこれからどうするんだ?」

「……今ネレイスは転生中だと聞く。……それが終わり次第……」

「……そろそろ終わると思いますよ……」

 転生終わりを待っていたレゾーナはノエルがそう言ったのを聞くと部屋の外を見ていた。

「……来たようだ」

「レゾーナ……大丈夫だった?」

「……おかげさまでな」

 そこに足取りがまだおぼつかないままのネレイスがゆっくりとやってきていた。

「ネレイスさん!まだ絶対安静期間過ぎてませんよ!」

「……レゾーナは早くしてほしかったんでしょ?……処遇を」

「……そうだな」

 ネレイスはノエルが用意した椅子へと腰掛けた。そのネレイスの前にレゾーナは膝をついた。

「……何故私を助けた?」

「……貴女が必要だからよ」

「……新たな魔界に私の居場所など……」

「……だったら精霊界に来ればいい……」

「……魔界出の私に……」

「そんなものは関係ないわ……精霊界ではあたしが連れてきた子をみんな温かく迎えてくれる。どんな存在だったかは関係ない。ただただ精霊界やあたしのためになりたいって気持ちがあればそれで十分よ」

「…………」

 レゾーナは魔界王に命を救われたからこれまでずっと魔界王に忠誠を誓ってきた。しかしその魔界王は討たれ自身も滅ぼうとした時に今度はネレイスによって命を救われた。自分はどうしたいのか、どうするべきなのか、レゾーナには少しずつその答えは決まり始めてきていた。

「……レゾーナ、あたしに仕える気はない?貴女の居場所はあたしが確保する。新しい精霊界と新しい魔界を貴女には見せたいから……」

「……断っても退く気はないのだろう?」

「もちろん」

「……グレモルが言うほどの人物に間違いはなかった……か」

「んー?」

「……いや、何でもない。……私をまだ必要としてくれるならば……力になろう」

 レゾーナはついにネレイスに仕えることを決心した。その顔はどことなく晴れやかであったように見える。

「……さ、じゃあ早速あたしは精霊界に……」

「ネレイス……っとこれからはネレイス様だな……まだ体調は万全ではないのだ。その体で精霊界の民の前に出て倒れられたら余計に心配をかける……今はまだ休む時ではないか?」

 ふらりと立ち上がり歩き出したネレイスをレゾーナはすぐに諌めた。その姿は魔界十二使徒の時となんら変わらない落ち着いた雰囲気であった。

「……あはは……優秀だね……」

「……これくらい普通です……さ、まずはゆっくりお休みください」

 そう言うとネレイスを支えながら部屋の外へと出ていった。ノエルの部屋にはまたリッチとノエルだけが残された。

「……心配なさそうだな」

「そうですね……でもこんなにも早く切り替えができるものなんでしょうか……」

「……既に決めていたのだろうな……何にせよこれで一段落ではないか?」

「……はい、リッチさんも御苦労さまでした」

「では失礼する……」

 そしてリッチも深々と礼をするとノエルの部屋から立ち去っていった。

「……これで……ようやく……」

 誰もいなくなった部屋でノエルは大きく一息ついた。世界の安定を司るという神界の使命から思い切って踏み込んだ魔界鎮圧作戦はひとまず終結した。

「……まだまだ精霊界および新生魔界の安定化という仕事があります。それが終わってこそ本当に安定化を達成できたと言うべきでしょう」

 そこに外から侍女のプリローダがそう言いながら入ってきた。

「……そ……そうでした……」

「これからもまだまだ大事な時期です。しっかりして下さいよ、ノエル様」

「はいぃ……」

 魔界鎮圧作戦自体は終結した。しかしまだまだ完了はしていない。本当の意味での作戦完了までノエルとSkyBlueの活動は続く。



ブログ開設3周年記念特別SS 魔界鎮圧作戦編 完



←ChapterEX


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本日の更新内容


・用語集冥界編  エリザベート 



どうも、ラヴィスです。



久々ですね!こういうの!



なかなか更新時間が取れなくて大変ですがしっかりと進んではいます。来週は……どうでしょうかね~



因みに今回更新のエリザベートですが現在更新作業中の後日談編にてちょっとお話があります。その先行公開という形になっていますのでちょーっと反転文字とか仕込んであったりします、はい。



それでは今回の更新は以上!また次回の更新で!



あっという間の一週間


どうも、ラヴィスです。月曜日になりましたねー。



正直に言いましょう。あっという間でしたね



今週は土曜日までお仕事があったのでそのせいもありますが研修やらなんやらでバタバタしていたのも事実、忙しくて時間も全然なかったこともありSS編が1文字も進んでいないということになってます!



いやー、もう少しなんですけどね……。バタバタしてるうちはなかなか時間取れないでしょうから今週もちょっと心配ですね……


ささ、今回はここまで!明日もありますのでしっかり休みたいと思います、はい。


新社会人になりました!


どうも、ラヴィスです。4月になりましたねー。



色々大変ですねー



生活リズムもがらっと変わりましてこれまでのようには当然行かないわけですよ。



ええ、忙しくて大変なんですよ!



……さぁ、もう分かってきますね?はい、そうです



新年度始まる前にSS編終わりませんでしたよ!



後日談編なのであまり大事なことはないのですが……冥界王リッチが活躍するのとレゾーナの結末がどうなったかくらいは書いておきますので時間が取れればなんとか更新していきたいと思います、はい。

そしてもう1つ、今後の更新についてです。



今後ちゃんと月曜日に更新できるか非常に不安です!



もしかしたら……毎週更新がついに終わっちゃう……かも?



簡単な更新が続いちゃったらゴメンね



ささ、本日の更新はここまで!明日もお仕事あるので寝るのはお早目に!それでは!


プロフィール

Author:ラヴィス
パソコン使えないくせにブログに手を出した愚か者。
……温かい目で見てもらえるとうれしいです。

毎週月曜に大小の違いはあれど更新中です。

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