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ブログ開設3周年記念特別SS 魔界鎮圧作戦 ~Chapter4~

「くっ……」

 ランディはギリギリの立ち回りを余儀なくされていた。体調がまだ万全でなかったせいもあったが、それ以上にヴァンフレアの猛攻に完全に押されてしまっているような状況であった。

「よくかわせてるじゃなぁい。でも避けてるだけじゃ勝負にはならないわぁ」

 ヴァンフレアの雷撃は全く切れ目がなく放たれ続けていた。ただただ強引に雷撃をばらまいているようにも見えたがそれが隙のない攻撃となっているようだ。力づくで押し通すものがよくやる上等手段はこの場では非常に有効なものとなっていた。

「…………」

 しかしランディもただ避けることに必死になっているわけではない。その目は常に飛んでくる雷撃のみならずヴァンフレア自体も捉えており、攻撃時の特徴やクセ分析し有効な攻撃手段を模索していた。

「……やはりあの翅が弱点だろうな……」

 ランディが目をつけていたのはヴァンフレアの背中に広がっていた2枚の翅であった。ヴァンフレアが放つ雷撃は高速回転により威力と速度が高められているようであるが、どうやら翅をはばたかせていることによっても効果を高めているような感じが見ていて気付いたようである。さらには回転方向も最初に遭遇し襲ってきた時を振り返っても反時計回りに回転していたことに気付いていた。そしてヴァンフレアの翅は背中側にプロテクターのような骨の飾りがついており、そこからは雷撃が飛んでこないために雷撃はヴァンフレアがランディの方向を向いている際に多くなり、背中を向けている際には数が減るということが分かった。しかし当然ながら背中側は骨の飾りに守られているために雷撃の数が少なくなる際に攻撃を仕掛けても効果は薄そうである。

「……ただ魔界十二使徒クラスなら当然魔界の加護もかかってるだろうしな……」

 さらに相手には抵抗性を高める魔界の加護がかけられておりその撃破は一筋縄ではいかない。ランディは雷撃が乱れ飛ぶ中一撃で翅を撃ち抜くにはどうすればいいか考えていた。

「……これは……ああするしかないか……」

 ランディの中で結論が出ると構えていたグングニルで周囲を一度薙ぎ払った。その一撃はヴァンフレアの雷撃を反射させる。

「あらぁ、なかなかやるじゃない。でもアタシに雷は効かないわよぉ?」

「効果はないかもしれないけど意味はあるよ」

 打ち返した雷撃はヴァンフレアが新しく放った雷撃と当たり相殺された。これによりランディに反撃のチャンスが生まれその隙間を突いてランディは一気に近付きヴァンフレアに一撃を放った。

「くぅぅっ!……やるじゃないの」

 しかしその一撃が当たったのはランディが弱点と見ていた翅ではなく胴体であった。ヴァンフレアの攻撃は止められたもののやはり魔界の加護により効果は減衰されダメージ自体はさほど多いものにはならなかったようである。

「……それはどうも」

 ランディは狙いを外したが大分落ち着いていた。その顔は攻撃が止まってよかったと言いたげに見える。

「……アタシの攻撃を止められたのは魔界の連中以外ではアンタが初めてよ」

「そうかい?それは光栄だね」

 ヴァンフレアからの予想外の言葉にランディは驚いたが、一言そう言うと槍を引き構えを解いた。

「そういえばちゃんとアンタの名前を聞いてなかったねぇ」

「僕かい?……僕は神界八将、智神のランディだよ。魔界十二使徒……霹靂のヴァンフレア・トルエーノ」

「あらぁ、その名前で呼べる人間がいるなんて感心しちゃうわぁ」

「魔界において雷属性最強の使い手らしいね。相手を圧倒する力を追い求めた結果行き着いた境地……その無差別に周囲の者を屠る姿から魔界内でも恐れる存在が少なくないとか」

「ふぅん、随分アタシのこと知ってるみたいじゃない」

「……戦う相手のことはある程度調べておくのが僕のやり方でね、魔界十二使徒のことはある程度勉強させてもらったよ」

「面白いじゃないの、魔界にいるだけじゃアンタみたいな人間がいるなんてこと分からないしねぇ」

 これまで酷薄な表情の多かったヴァンフレアであったがその表情が心なしか少し緩んだように見えた。

「……魔界に人間が来るようなことは普通ないだろうしね。でもわりと外に出て活動している魔界十二使徒も多いようだけど?」

「……アモンとかバレンシアのこと言ってるの?確かにそうねぇ、でもアタシは到底外には出してもらえないわぁ」

(……これは……なるほどね。……どうしたものか)

 ヴァンフレアの声は変わらず耳障りなものであったが、どことなくもの寂しげであった。ヴァンフレア程の実力があれば魔界にとっても勢力の拡大に大きく活躍してくれそうなものであるのだが、魔界から出してもらえないというのは相当の理由があるはずである。ランディはその理由におおよそ見当がついていた。

「……って何でアタシがアンタにこんなこと……興が冷めちゃうじゃない」

「おや?君も興が冷めるなんてことがなるんだね」

「当然よ、常日頃ずーっと暴れてるわけじゃぁないわ」

 ヴァンフレアの表情は次第に元に戻りつつあった。

「……僕は構わないんだけどね、すぐに片付けてこいという指示は受けてないんだし」

「あらぁ、じゃあいいじゃない、もっと遊んでいきましょう?」

 そしてバチバチと青白い電流が流れ始めていく。

「……そうだね、できれば僕ももう少し相手をしてあげたいんだけどね……」

 一方ランディはまだ槍を構えない。

「……君の遊びにずーっと付き合うと僕の体がもたないからね、悪いけど……すぐに終わらせるよ」

「あらぁ、そう?随分自信ありげな顔してるじゃないの、坊や」

 自信満々に言い放つランディに対してヴァンフレアもすっかりいつもの表情に戻っていた。

「…………」

「……あらぁ、どうしたの?自信満々なアンタの言葉もっと聞かせて頂戴!」

 ランディはこの時考え込んでいた。ここで使う言葉がこの先の展開に大きな影響を及ぼす。本来のランディであれば戦いに勝つために迷わず言っていただろう。しかし今のランディは違った。魔界鎮圧作戦に赴いたネレイスの気持ちと本来のヴァンフレアがどういう存在だったかに予想がついてしまったため迷いが生じてしまったのである。もしこの場にネレイスがいたら……ランディの作戦は大きく変えざるを得なくなっていただろう。

(……すまないネレイス、ここは……僕の役割を果たさせてもらうよ)

 ただ今は魔界十二使徒撃破という自分に課された本来の役割を貫いた。

「……坊や、かぁ。人間ってこれでも成人だしわりと見た目より長く生きてるつもりなんだけど……」

 そして覚悟を決めたランディはヴァンフレアに向け不敵な笑みを浮かべて言い放った。

「……まぁ君からすれば確かに僕は坊やかもしれないね」

「……何ですって?」

「……違うのかい?君は魔界ができた時には生まれていたはずだよ?でも僕はその時にはまだまだ生まれていない」

「……アンタ……アタシに向かってっ!!」

 ランディの放った言葉は婉曲表現ではあったものの、要するにヴァンフレアを年寄り扱いする非常に単純な挑発であった。しかしヴァンフレアは簡単に激昂したようでありそのボルテージはみるみる上がっていった。ランディが槍を構えずに言ってのけたこともさらに効果を上げたようである。

「アンタも……アンタも……っ!!アタシをっ!!!」

 ヴァンフレアの正面には巨大な雷の球が作られていた。さらには広げた翅を前に曲げるようにすると翅にも力が集まっていた。

「……何もかも!全部!滅ぼしてやるわぁ!!」

 十分に力を蓄え臨界点に達するとためらいなくヴァンフレアの正面に放った。翅に集まった力は雷属性のレーザーとしてはるか彼方まで貫いていき、巨大な雷の球は地面に着弾すると当たり一帯を激しい閃光に包み一瞬にして跡形もなく破壊しつくしていった。

「アハハ!アハハハハッ!!人間なんてゴミよ!全部消し去ってあげる!!」

 奇声をあげ笑い狂うヴァンフレアであったが、突如左の翅に衝撃を感じた。

「全部……消して……」

 ヴァンフレアがそれに気付いた時にはもう一度左の翅に衝撃を受け、左の翅の上と下に大きな穴が開いてしまっていた。さらにその穴を確認した時には今度は右の翅に二度衝撃を受け同じく大きな穴が開けられていた。

「……冷静になろうね、僕の動き見えてないんじゃ話にならないよ?」

 恐る恐る振り返ったヴァンフレアが見たものはまばゆい光の槍を構えたランディが眼光鋭く狙いを定め、ヴァンフレアの胸部めがけて槍を貫こうとしている瞬間であった。

「がぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 ランディが放った一撃は先ほど雷撃をばらまく攻撃を止めた際に放った一撃とは比べ物にならない破壊力で、先ほどは防がれた魔界の加護をものともせず打ち破りヴァンフレアの胸部を正確に捉えた。貫かれたヴァンフレアは苦悶に満ちた表情を浮かべ、翅を散らし最初に会った人に似せた姿に戻り断末魔のような声をあげて地に墜ちていった。

「……言っただろう?すぐに終わらせるって」

 グングニルから光が消えるとヴァンフレアを貫いた光の槍も消失した。

「さてと、流石に将軍ももう片付けてるだろうし……早いとこ合流しないと……」

「……待ちな……さいよ……」

 そしてランディがその場から立ち去ろうとしたとき、背後からヴァンフレアの呻き声が聞こえてきた。

「……まだ息があったとはね、流石は魔界十二使徒といったところか」

 ランディは足を止めてヴァンフレアの方を向いた。正直さっきの一撃でしっかりと仕留めていたと思い込んでおり、ヴァンフレアのしぶとさに驚いていた。

「……とぼけないで頂戴……アンタ……わざと……外したでしょう……」

「そんなことは……」

 ヴァンフレアの指摘ににランディは言葉を詰まらせた。ランディ自身は想いを振り切っていたのだと思っていたがまだかすかに迷いがあったことの現れだったのだろう。

「……いや、そうかもしれないね」

「……これだから……人間は……アタシたちを……どこまで……」

 転がっているヴァンフレアのすぐ目の前までランディが来ていた。そのランディをなんとか仕留めようとあがいたのだが、自慢の雷は静電気すらも起こすことができず、ランディに触れることはおろか体を動かすこともできなかった。

「……君を仕留められなかったのは僕じゃない、ネレイスだよ」

「……何で……その名前が今出るのよ……」

「……ネレイスは君みたいな存在を救いたいとずっと言ってたんだよ」

「……何よ……アタシは魔界の……」

「……君……その姿から人間に蔑み、虐げられ、忌み嫌われてきたのだろう?」

「……そうよ……」

「……人と精霊の関係を改善して再び仲良く暮らせる世界を……人と精霊の間に生まれた存在として……ね」

「……そんな世界……幻想よ……」

「……でも……君も一瞬その幻想を見たんじゃないのかな……?」

「それは……」

 確かにその幻想を見たような気がした。ランディはこれまで会った人間とは間違いなく違っていた。ランディがヴァンフレアを見る目は化け物を見るような目ではなかった。自分と対等の存在として見てくれていた。……そんな人間がいたということにもっと早く気付いていれば……

「……まぁ結局僕がその幻想打ち砕いちゃったけどね……」

「……違うわ……アンタは……違う……」

「……君がよく知る君を見下す人間……」

「違うわ……アンタは……そんな悪人じゃない……あの時のアンタが……笑ってたのは……アタシを蔑んでいたからじゃない……」

「……参ったなぁ……そんなこと言われるとは思ってなかったよ」

 ランディは困惑したような顔で頭をかいた。ヴァンフレアのその言葉はランディも全く予想していないものであった。

「……じゃあ何で君は僕のあんな見え透いた挑発に乗ったんだい?君が挑発に乗らなければこうならずに済んだかもしれないのに」

「……もうアタシの体が……勝手に反応するのよ……それに……アタシは霹靂のヴァンフレア……魔界十二使徒としての……誇りと威厳があるのよ……」

「……そうか、君はもう最期まで魔界十二使徒としてしか生きれなかった……ということか」

「…………」

 ヴァンフレアの顔色は既に蒼白であった。もうそろそろ限界なのだろう。

「……さぁ……早く殺しなさいよ……このままのたれ死ぬとか……」

 ぐったりしているヴァンフレアの声はまるで覇気がなかったが、最期までその高圧的な喋り方は変わらなかった。

「……断るよ。僕は悪人だからね……君の願いは聞けないよ」

 ヴァンフレアのその懇願をランディはニヤリとした顔をさせ一蹴した。それは智神ランディの策略家としての表情だった。

「……いいわ……また復活して襲ってあげるんだから……」

「構わないよ、僕は何度でも相手になってあげるからね……というより……その状態から君が復活できるようには到底思えないけどね」

「……く……」

「……じゃあ僕はこれで失礼するよ。楽しいくていい勝負だった……」

 そしてランディは静かにその場を立ち去ろうとしていった。

「君のことはネレイスにも“最後まで手を焼いた”と報告しておくよ」

「…………!!………………………!!」

 ヴァンフレアは最期に何か言い残そうとしたものの、それがはっきりと言葉になることはなかった。





「……ネレイスさん、聞こえますか?」

「あ、ミーナさん?どうしたの?」

 将軍とランディを置いて進んでいたネレイスたちはある程度経ったところで一旦休みを取っていた。

「……将軍様が強敵を退けたとかで……精霊界、天界の部隊を派遣するよう要請を受けたので……」

「無事部隊は派遣できたんだね……合流した方がいい?」

「……いえ、背後を突いていた部隊との交戦中でまだ時間がかかるそうです……」

「……んー……そっかぁ……」

 ネレイスは前方を確認する。魔界の部隊が展開しておりこちらの様子を見ていたのだが、その部隊の構成は先ほどよりも大型の魔物が多かった。将軍とランディを欠き、戦力の上で多少不安があったためにできれば合流をしたかったのだが……

「……何か問題でも?」

「……こっちも大型魔界種の部隊と遭遇しちゃって……ランディさんも今離脱しちゃってるから戦力が……」

 こちらの戦力は少数であるためできれば相手の準備が整う前に決着を付けてしまいたかった。そのためどうやら合流している時間的余裕はなさそうであった。

「……でも分かったよ、今いるメンバーでなんとかこの場は凌ぐね」

「……無理しないで下さいね」

「うん、将軍様のとこにもそこまで急がなくて大丈夫ってこと伝えておいて、じゃあ……」

 ネレイスはミーナとの連絡を終えると小さくため息をついた。

「……やっぱここはあたしたちでやらないとダメかぁ」

「そうだな、相手はさっきより厄介だしな……」

「ネレイス、何か作戦は?」

「……何も。とにかく全力出して突破するしかなさそうだもん」

 近くにいたファラとラヴィスも分かっていたような顔をしていた。そして同時に覚悟を決めていた。

「……じゃあやるしかねぇな、号令頼むぜ」

「……うん、敵が完全に陣形を整える前に叩くよ、突撃!」

 ネレイスのその号令でファラとラヴィスが先陣を切って飛び出していった。その脇をヘリオスとエミリオが守るような形で進んでいく。その後ろからルミナスとフィア、そしてネレイスがサポートに入る。

「……チィ、一撃で沈まねぇか」

「ラヴィス様、倒せない敵は私たちが仕留めていきます、遠慮なく斬り進んでください!」

「おいフィア、間違えてオレを狙うんじゃねぇぞ」

「安心してください、将軍様のしもべを裁くようなことはしませんから!」

「あたしも見てるし大丈夫だよ!」

 魔界軍迎撃部隊のまだ守りの陣形が整っていない箇所から攻略が始まった。


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