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ブログ開設3周年記念特別SS 魔界鎮圧作戦 ~Chapter6~

「ヘリオス、疲れてきてるんじゃない?」

「当たり前だ。敵の攻撃を全部捌かないといけないんだぞ?攻撃の届かない場所にいるお前より先に疲れが来て当然だ」

 ヘリオスの動きが鈍ってきていたのをエミリオは見逃していなかった。仕留め損なう敵の数が増えてきたためにフォローをするエミリオが思わずひやっとする場面が増えてきており、軽口を叩いてはいるものの内心は心配で心配で仕方なかったのである。

「エミリオ、代われるか?」

「いいわ、ヘリオスは少し下がってて」

 そう言うとエミリオは高度を下ろし、さらになんと愛騎のアキオスからも降りてしまった。

「おい、エミリオ!?」

「地面すれすれでアキオスを飛ばすのはかなり難しいのよ?無理はさせたくないからこれで行くわ」

「お前は白兵戦なんて……」

「……ヘリオスほどじゃないけどね、でも……」

 心配をしているヘリオスをよそにエミリオは自慢の槍を振り回してる。

「……ニンブスハスタの力……見せてあげるから!」

 エミリオは最後に大きく一薙ぎすると迫る敵部隊を軽く吹き飛ばしていった。その衝撃は部隊の後方にまで広がっていく。さらに絶えずエミリオの周りには竜巻のような風が渦巻いており、他者を寄せ付けない空気が漂っていた。

「私に触れれるものなら触れてみなさい!」

「……やれやれ、あんなに飛ばすとバテるだろうに……・ま、いいか」

 その様子をヘリオスは後ろから見ながらそうぼやいていた。 





「この辺まで来れば一息つけるだろ……」

「うん、そうだね……」

 ネレイスたちは一息ついていた。予想していたよりも早いペースで進軍することになってしまいメンバーに疲れが見え始めていたことと、神界八将のうちの四将が戦闘により離脱をしそろそろ戦力的にも不安を感じるような部分も見えてきていたことからの決定であった。

「……ネレイス、体は大丈夫か?」

「うん、まだまだ平気だよ」

 魔界の負の気にここまで大分長い間晒されてきたネレイスであったが今のところ調子が悪くなったりはしていないようだ。

「……魔界宮殿はまだまだだからな……それに……」

「……何か来るのか?」

「……いーや、見たくもねぇくらい宮殿周辺に部隊が展開されてるよ。あれを抜くってなると……どうしたものかな」

 ラヴィスにははっきり見えていなかったが魔界の住人であるファラには展開する敵部隊の姿がはっきりと映っていた。城壁とは別に築かれた魔界軍の壁も突破をすることを考えればまだまだ消耗は避けたいところである。

「…………」

 なにやら熟考している風のファラであったがその視線の先で気になるものが映った。

「……ち……あれは……」

「どうした?」

「……魔界十二使徒だ。トロスニアとゼクトールだな……トロスニアは罠を張ってゼクトールは奇襲を仕掛けてくる形だな」

 いち早くファラが魔界十二使徒の接近に気付いたようである。

「どうするんだ?この人数なら……」

「ねぇ、ファラ。向こうからも部隊が来てるみたいだよ?」

「チィ、面倒だなぁ、オイ」

 ファラが露骨に嫌そうな顔をしていく。

「……あの……ランディさんから聞いたのですけど……ゼクトールって猪みたいな魔物なんですよね?」

 そこにミディアが声をかけた。槍を構えたその姿は既に戦う気満々のようである。

「……ああ、走り出したら死ぬまで止まらねぇんじゃないかってほどの突進バカだ……」

「……私が止めます」

 ミディアのその言葉には強い意志がこもっていた。

「……そういう相手を止めるのが私の仕事ですし……ランディさんも言ってました。私でなければ防げない場面がある……と。それが今なのだと思います」

「……そうだな、オレもゼクトールの相手はお前が適任だと思う。任せたぜ」

「はい、お任せください!」

 迎撃に向かうミディアの後ろ姿は非常に頼もしく見えた。

「トロスニアは放っておいても向こうから攻めてはこないだろう、残るやつらで横槍入れてくるやつらをぶっ飛ばしに行くぞ」

「了解、みんな頑張って!」

 そして残る人手でまずは側面から来ていた攻撃部隊を叩きに向かっていった。



「……随分時間かかっちまったからな……本隊は随分先に行ってるようだ」

「精霊界女王は長期戦には不向きと聞いている。そのせいもあるのか?」

「……不向きとはいえ闇雲に突っ込むようなヤツではない。となると……」

 進む将軍の視線の先には不自然に抉れた地面や焼けた草木が目に付いた。こんな状況を作り出せるような存在に将軍は心当たりがあった。

「……強敵の襲撃が続いて息つく暇なく進まざるを得ない状況になってるんだろうな」

「魔界十二使徒……か」

「単独での戦闘能力はかなりのものだが……正直オレの戦ったやつはそこまで強いヤツではなかったな」

「1対1で捌けるのであれば問題ないだろうな……」

 そして進んでいく先に一人の男が座っていた。

「……ん、将軍か。無事合流できたようだね」

「ランディか……これは……」

「ヴァンフレアを捌いていた。決着はついたよ」

 ヴァンフレアを倒したランディが焼け焦げた野原の上で座り込んでいた。その周りには砕け散った骨の破片やら翅の残骸やらが散らばっており、ヴァンフレアの体は既に灰となり消え去っていた。

「……雷撃もらってたわりにはよく捌けたじゃないか」

「まぁね、力に頼る敵を御すことは僕の得意技のようなものだったからね」

「……片付いてたんだったら手伝いにきてくれりゃよかったのに」

「はは……勘弁してくれよ。僕は将軍ほど体力はないんだ。魔界十二使徒を捌いたら疲れて動けないさ」

「ま、そりゃそうか。ま、なんにせよお疲れさん」

 ランディは意味深長な笑みをしていたが、将軍はそれに気づくこともなくランディの労をねぎらった。

「じゃあすぐ追いかけるぞ」

「やれやれ……もう少し休ませてくれてもいいのに」

「休まずに頑張ってるやつらがいるんだぞ、もっと頑張れ」

「……仕方ないなぁ」

 ランディはようやく重い腰を上げた。疲れていると言った割にはまだ大分動けそうであった。

「よし、じゃあさっさと合流しに行くぞ」

 将軍の後に続きランディも進んで行った。そのランディのポケットには毒々しくも妖しい魅力を感じるような綺麗な翅が入っていた。



「…………」

 いつになく集中した面持ちでミディアは佇んでいた。ファラの見立てではじきにこの位置をゼクトールが駆け抜けていくはずである。それを止めるのが自らに課された役割であった。

「……必ず……止めます」

 ゼクトールを後ろへ通せばネレイスたちはさらに厳しい戦いを強いられることとなる。自ら名乗り出て、さらには信頼されて送り出された以上自らの持つ守護の矜持にかけて絶対に失敗できない仕事であった。

「……あ……あれでしょうか……」

 そのミディアの視線の先に濛々と土煙ををあげながら迫ってくる大きな影が映った。遠くからでよくは分からないもののそのシルエットはまさしく猪のようであり、体の大きさも相当ありそうであった。

「……う……流石魔界の……」

 その姿はみるみる大きくなっていき、全体像もはっきりしてきた。まず体の大きさは鎧で身を固めたミディアよりも2回りほど大きく、体長は推定で3mくらいありそうだった。赤黒い毛皮をし、丸々とした体に強靭な四肢、そしてなにより大きく伸びた牙にべっとりとついた赤黒い血の量の多さがこの者の強さを示しているようであった。

「でも……私も鎧神と呼ばれているのです。相手の迫力に負けたりはしません……」

 一瞬ミディアも想像以上の相手を前にたじろいでいたがすぐに気合を入れ直すと左手に構えた大きな盾を体の前に立てた。鎧と同じ緑と橙色の2色で作られている自分の体よりもやや大きいその盾には鎧神であることを示す自らのエンブレムが刻まれており、鎧神となってからも多くの敵を抑えてきたその盾には傷やへこみ一つなく手入れをされていた。

「……必ず止めてみせます……」

 突進してくるゼクトールも当然前方に立ちふさがるミディアの姿には気づいているだろう。しかし全く意に介していないようであり勢いを抑える様子は全くなかった。

「……究極守護術……絶対守護障壁っ!!」

 そしてミディアとゼクトールが激突する直前ミディアはそう言うと大盾を地面に突き立てた。するとそこから放射状に光の壁が展開されていきミディアの防御網が形成されていった。そしてそこにゼクトールが激突した。

「……っっっ!!」

 その瞬間にミディアがこれまでに経験したこともない衝撃を感じた。衝突の際の勢いだけでなく魔界十二使徒が纏う強力な魔界の気が一斉に押し寄せてきてたのだった。

「くぅぅぅぅっ……!!」

 ミディアは完全に押されていた。ゼクトールの勢いは止まらずそのままミディアを押し込みながら突き進み続けていた。

「……く……止めるんです……」

 しかし押し込まれてはいたものの絶対守護障壁は破られていなかった。勢いと迫力では負けていたものの力と気持ちでは十分に勝っていたようである。

「……私は……皆さんの盾となる存在……」

 しばらくするとゼクトールの勢いが落ちてきた。ずるずると引きずらされていたミディアの足も次第に地面を捉えられるようになっていた。

「鎧神としての……意地と誇りがあるんです!!」

 そしてついにミディアの足はしっかりと地面を捉えて踏ん張りがきく状態となった。これによりゼクトールの勢いは完全に止まった。

「はぁぁぁっ!!」

 勢いが止まったゼクトールにミディアは思いっきり盾を押しつけていった。すると逆にゼクトールの前足が浮き上がり形勢が逆転した。そのままミディアが大盾で弾き飛ばすと大きな体のゼクトールをごろんと地面に転がした。

「……止めました……」

 絶対守護障壁を解いたミディアも大分消耗していた。第一まだミディアは“止めた”だけである。時間稼ぎにはなるかもしれないが撃破をしなければこの脅威を取り除くことはできない。

「……さぁ、勝負ですよ!」

 ゼクトールもどうやらミディアを敵として認識しているようだ。荒い鼻息を立てて前足は地面を蹴っていたが、ミディアが大盾を構えなおすとそこに向かってゼクトールは突進を開始した。

「……何度でも止めます、絶対守護障壁!」

 そのゼクトールをミディアは再び絶対守護障壁で迎え撃った。





「おいエミリオ……」

「ハァハァ……飛ばしすぎたかな……」

 エミリオは体力の限界ギリギリまで頑張っていた。その結果おおよそ部隊の半数ほどを蹴散らすことができていたのである。後ろで見ていたヘリオスもエミリオ単独でここまでできるとは思っていなかったようだ。

「ゴメンヘリオス、後は任せていい……?」

「十分に休ませてもらったからな。任せろ」

 ここまでの活躍を見せつけられた以上同じ神界八将として負けるわけにはいかなくなったヘリオスも馬から降りて槍を手に取っていた。

「ヘリオスも白兵戦するの?」

「当然だ、同じ条件で戦わねばな」

 エミリオと違いヘリオスは白兵戦の経験も多くエミリオのような力押しでなくても十分に捌いていける自信があった。

「じゃあ見せて頂戴」

「……行くぞ!」

 ヘリオスは槍を回しながら敵の部隊に突っ込むと流れるような槍捌きで敵を蹴散らしていった。隙のないその動きはまさに槍の名手とも言えるであろう。

「久しぶりにやったが十分動けるな」

 その後も目にも止まらぬ連続突きや薙ぎ払い、柄を利用した打撃など様々な技を駆使して戦闘を続けていった。

「……ふふ、ヘリオスも熱くなっちゃって……」

 愛騎アキオスの背中で横になりながらエミリオもヘリオスの戦いを静かに見守っていた。




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……温かい目で見てもらえるとうれしいです。

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