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ブログ開設3周年記念特別SS 魔界鎮圧作戦 ~Chapter8~

「お、前方で戦闘発生中!誰だ誰だ~?」

「将軍……」

「ヴァレリア、部隊を指揮して援護の準備だ!リヴィエールは戦ってるオレらの仲間のサポートに入ってくれ」

「……承知した」

「了解です!」

 援軍と合流した将軍とランディはようやくエミリオとヘリオスが戦っていた近辺までやってきていた。将軍たちのいる場所からはまだ戦っている姿は見えていなかったが数はおおよそ援軍で来ていた天界勢力のおよそ半分ほどであり、天界勢力の加勢があればすぐに片付くであろう状態であった。

「……しかし将軍はまだまだ元気だね」

「ん?まぁな、お前よりは体力あるだろう」

「元気いっぱいなら将軍も戦ってくればいいじゃないか」

「……いや、ここはオレが出る幕ではない。天界勢には総じて対魔物特効が働いているようだからな……それに第6聖女というだけはある指揮能力……見ているだけでも心配ない」

「……ふむ……じゃあ僕もその戦いぶりを見させてもらおうかな」

 ランディは天界勢力の戦いぶりを眺めながら腰を下ろした。

「……ねぇ、将軍」

「どうした?」

「……この戦い……ネレイスはどうすると思う?」

「……どうした、急に……」

「……徹底的に魔界を叩く……そのつもりなのかな?」

「……そりゃないだろ」

「……そうかい?」

「……あいつが叩こうとしてるのは今の魔界王とその取り巻きだけだろうよ。魔界の魔物を根絶やしにしようとかそういう意志は全くない」

「……そうだよね」

 ランディはポケットに入れていたヴァンフレアの翅を出すと赤紫色の靄で霞む空に透かせた。

「ん?それは?」

「……ヴァンフレアの翅だよ」

「何だ、ぶっ飛ばした相手のものを集める趣味なんてあったのか?」

「いや、そうじゃないよ。ただ……ネレイスなら救いかねない存在だったからね」

「ん?どういうことだ?」

 将軍がそう言うとランディは推察ではあるもののヴァンフレアの素性を話した。

「……なるほどな」

「……これから先戦う相手にもこういう存在がいるかもしれない……その時にネレイスはどうすうんだろうね」

「……どうだろうな」

 ネレイスは人と精霊たちが共存できる世界を創り上げる理想を掲げてここまで来ていた。魔界の中でも表には出さなくともその理想に共感している存在は少なくはない。しかしそういった気持ちがありながら自分たちと戦わなければならない存在も当然出てくるだろう。

「……ただ……オレらにそいつらを救えという指示は出さないだろうよ」

「……そうだね、本心ではネレイスもそういう存在をみんな救いたいと思っていても現実は不可能だってことは承知しているだろうね。それに……そういった存在を助けようとした結果僕らを危険にさらすわけにはいかないと思ってるだろうしね」

「……ま、あいつらしいっちゃあいつらしいよな」

「そうだね」

 今回の魔界鎮圧作戦はネレイスにとって心身ともに非常に負担のかかるものであった。負の気で体力を削られ辛い気持ちを押し殺しながらも周りには気丈にふるまう姿しか見せないのがネレイスなのである。

「……ま、今の総大将はあいつなんだ。その総大将を支えるのがオレらの仕事だ」

「普段は支えてもらってる立場だからね」

「……まーな」

 そう言ったところでヴァレリアたちが戻ってきた。見事な戦いぶりですぐに魔界の部隊を殲滅しきっていた。

「……将軍殿、殲滅完了した」

「ああ、ご苦労」

 天界の部隊は負傷者1人もなく帰ってきていた。これほどの実力があれば魔界の大部隊と正面から立ち向かっても心強い戦力となってくれそうである。

「……将軍か……助かった」

 さらにヴァレリアの後ろから馬を引きながらヘリオスがやってきていた。目立った外傷等はなかったようだが大分疲労は溜まっている様子であった。

「ん、ヘリオスか……お前1人で戦ってたのか?」

「いや、エミリオもいるぞ……向こうで休んでいる」

 ヘリオスが指差した先では風竜の上で横になっていたエミリオにリヴィエールが寄り添って手当てのようなことをしていた。

「……助かります……」

「私もこれくらいならお手伝いできます……」

 リヴィエールは癒しの効果を持つ水の補助系魔法の扱いに長けていることからエミリオの回復を行っていた。優しい青の光がエミリオを包みこんでいくと体が軽く水の中で浮かんでいるような感覚になっていった。

「……にしても何だ?神界八将のうち四将が離脱してたってことか?」

「そういうことになるな……」

「……戦力的に大分不安だよね」

 この間にもネレイスたちは魔界の部隊との戦闘を余儀なくされているのだろうが、戦い手の減少は当然残りのメンバーの負担の増加に繋がる。さらに早急な合流が必要な状況であることを特に将軍は感じていた。

「ヘリオス、行けるか?」

「……そうそう休んでもいられない。ネレイスにも早急に片付け戻ってきてくれることを期待されているだろうからな」

 ヘリオスの方は心配なさそうであったのでエミリオの方を見たが、そのエミリオも風竜にまたがりこちらへと来ていた。

「……お待たせ、私ももう大丈夫よ」

「よし、なら行くか……」

 両者とも平気なのを確認すると将軍は部隊をまとめて本隊との合流を急いだ。





「……チィ……」

 剣を構えた体勢のままラヴィスは固まっていた。というのも先ほどから対峙していたトロスニアはカウンターを狙っているような構えを見せており迂闊に手を出すことができない状態が続いていたのである。

「……これじゃあ埒が明かない……」

 ラヴィスが牽制目的でトロスニアの足に一撃を喰らわせたが、やはり固い殻に攻撃は阻まれ構えも変えることはなく状況は一向に変わらなかった。

「……ラヴィスさん……」

「……向こうから動きがない分楽なんだが……分が悪いか……」

 ラヴィスは闘神という名を冠しているもののずば抜けて戦闘能力が高いというわけではなかった。大剣を振るうには少々その体つきは心許なく、その一撃も破壊力のあるものではない。しかしそれでも闘神と呼ばれるほどの実力がラヴィスにはあった。非力な部分は技術力でカバーをし、特に弱点や急所を見定める力はSkyBlue内でも随一だと言われている。そのため本来であれば1対1ではなく味方がいてくれる時ほどその力は増加するのだが今回はそうはいかない。

「……仕方ない……あまり使いたくはないんだが……」

 そこでラヴィスはデバイスのようなものを出すと右目の前に取り付けていた。青みがかったそのデバイスにはトロスニアの姿が映されておりその体のほとんどが黒い色で示されていた。

「……」

 しばらくじっと見ていたが次第に黒い色で示された部分が少しずつ少なくなっていき、その瞬間をねらって剣を振り抜いた。やはり殻によってその威力はかなり抑えられてしまっていたもののトロスニアはどことなくいらつかせた様子を見せていた。

「……弱点なし、カウンターゾーンと耐性ゾーンばっかりとか面倒なヤツだな……」

 ラヴィスがデバイスを通して見ていたのは相手の状態を分析して攻撃が通りやすい場所通りにくい場所、耐性や弱点を的確に示してくれている映像であった。その画像が示すトロスニアには黒で示された攻撃をするには危険な場所、赤で示された耐性の高く攻撃が通りにくい場所で全体が示されており、どこを攻撃してもダメージが通らないということを表していた。

「…………」

 ちらりとミディアの方を向くと今のミディアはほとんどが青色の低耐性で示されていた。その他にも黄色で示される弱点部分も出てしまっており非常に脆い状態であることがここでもはっきりと分かってしまっていた。

「……なら仕方ないか……」

 このまま戦っても埒が明かないであろうことを判断したラヴィスは持っていた大剣をしまうと今度は両剣を取り出した。淡い光を放つその両剣は実体を持っておらず、実体両刃剣を愛用しているラヴィスにしては珍しい異質な武器であった。さらにはその姿もいつもの傭兵服から金の装飾が施された黒い鎧へと変わっていた。

「ら……ラヴィスさん?」

「……あんましやりたくはなかったんだがな……」

 纏う空気が急に変わったこともあり近くにいたミディアも心配そうに声をかけるくらいの変貌ぶりであった。

「……ミディア、心配はいらん。あまり見せないだけで我もこれくらいのことはできるだけだ」

「は……はい……」

 ミディアを見るラヴィスの目つきは鋭く、普段の優しげな雰囲気が一切消えていた。ラヴィスのことをよく見ているミディアにとっては衝撃が強かったのか寒気すら感じるほどであった。

「……これだけ守りが堅く弱点もないのなら……」

 心なしか声のトーンも低くなっているような気がするラヴィスはそう言うと迷いなく両剣を振り回しながらトロスニアの前足に近付いていた。デバイスでは黒の危険個所である。攻撃が当たると堅い殻に弾かれると同時にトロスニアは待っていたかのようにカウンターで鎌のような足を振り上げて来ていた。

「……やはりな!」

 当然カウンターが来ることを見越していたラヴィスは最小限の動きでかわしていた。さらにはデバイスが振り上げた足が低耐性の青色に変化したのが見えていた。その瞬間を見逃さずラヴィスの両剣は足の1本を捉えるとその一撃で簡単に斬り落とした。

「……攻撃の隙でやはり弱点はでてくるか……さらに……」

 1本足を斬り落としたことで体のバランスが崩れたためか耐性が落ちた部分が何箇所か現れ始めていた。

「…………」

 鋭い目つきでその場所を捉えるとラヴィスは次々と的確に両剣を当てていき足を叩き斬っていった。

「……これで足は全部折ったか……ん?」

 あっという間にラヴィスはトロスニアの8本の足を斬り落としていた。するとトロスニアの高さが下がり背中側の方も見えてきて背中側には耐性の低い青色の部位が多く、その中央に弱点部位を示す黄色の場所があるのを確認した。

「……よし、見えてきたな……」

 その矢先、トロスニアは顎を器用に使い地面に潜っていった。その動きはラヴィスの攻撃から一旦逃げようとしたようでもある。

「…………」

 ラヴィスは地面の様子を冷静に観察していた。ラヴィスが見ていたデバイス越しの地面にはトロスニアのものと思われる大きな影が映っていた。地面からの奇襲を仕掛けてこようとしていたようであるが全部ラヴィスに筒抜けであった。

「……足元から……来る!」

 ラヴィスはいち早く地面から顎をを突き上げてくる攻撃を察知し前転回避をした。するとラヴィスが立っていた位置にトロスニアの大きな顎が突き上がってきていた。さらにその顎の中心に耐性の低い青色の部分が見えたのでそこにラヴィスは両剣を投げ込んだ。口を裂かれたトロスニアは怒り狂ったように地面から飛び出てきていた。

「後は背中をいかにして狙うか……」

 トロスニアの大顎の攻撃をかわしながらトロスニアの背後をどう狙うか考えていた。トロスニアの攻撃はもう大顎による攻撃しか残っていないようであり、これを壊してしまえば耐性など関係なく叩きつぶすこともできるのであるがデバイスは大顎を常に高耐性の赤で示されており破壊は困難であろうということが窺えた。となれば攻撃の隙を狙って背後を取る動きが必要になりそうであるがトロスニアの攻撃は大振りになったわりには隙が小さく、すぐに次の攻撃に移られてしまうためになかなか攻撃ができない状態であった。

「…………」

 ラヴィスはデバイス越しに映るトロスニアの姿をじっくり観察し続けていた。そしてついにあることに気付いた。

「……あの殻の下にも弱点があるな……」

 トロスニアの大顎の上にあるトロスニアの体に少し盛り上がっているような部位があり、そこはしっかりと殻に覆われておりデバイスでも赤で示されていたが、どの個所もその中心一点だけは黄色に見えるような場所があったのである。

「……あの一点を……」

 それを見たラヴィスは両剣を斬る構えから突き刺す構えに変えていた。それに合わせて光の両剣の刃も細く長く変わっていた。

「……突く!」

 そしてトロスニアが大顎で挟み込んできたところを狙ってラヴィスはその大顎を足場にして体に登った。近くにまで来たことでデバイスにもはっきりと映るようになり、ラヴィスの見立て通り殻に覆われた赤い部位の中心にわずか数センチ四方の黄色い弱点部位があったことが分かった。そしてそこを目掛けて思いっきりラヴィスは光の両剣を突き立てた。

「……っと!」

 そこはトロスニアが獲物を視認するための目玉の1つであり、深々と両剣を突き立てられたトロスニアは激痛で奇声を上げながら体を持ち上げた。その勢いでラヴィスははね上げられたが、丁度そのままトロスニアの背後に回ることができていた。トロスニアの背中には1点だけ殻に覆われていない場所があり、その部位ははっきりと黄色の弱点として示されていた。

「……もらった!!」

 光の両剣はトロスニアの目に突き立てたままであったため武器を持っていなかったラヴィスの手には最初に握っていた大剣が現れていた。特別目立った装飾も効果もなさそうな剣であったが、ラヴィスはこの剣をずっと愛用してきていた。というのもこの剣はSkyBlue代表となった日に愛妻ルミナスが贈ってくれた思い出の大剣であった。

「……この剣に秘められし聖女の加護の力……ここに!」

 この剣にはルミナスの強力な加護が込められており、それがラヴィスに闘神と呼ばれるほどの力を与えてくれていた。ラヴィスの持つ大剣が一際輝きを増すと大剣は光に包まれ、さらにラヴィスの背中にはルミナスの背中にもあるような立派な光の羽が現れた。

「……はぁぁぁっ!」

 ラヴィスはそのまま急降下し背中の弱点に大剣を突き立てた。守るものがないその弱点部位に光の大剣は深く突き刺さり、腹部まで貫いて地面にまで達した。耳をつんざくようなトロスニアの断末魔の叫びは遠くにいたネレイスたちにも届くのではないかと思うほどのものであった。やがて体の内側から光が突きぬけていくとその光に浄化されるようにしてトロスニアの姿はかき消えていった。

「……やれやれ……」

 まずは目に突き立てていた両剣をラヴィスは拾い上げると血と体液を振り払ってから虚空に向けて軽く投げた。するとその両剣はぱっと消え、ラヴィスの姿もいつものものへと戻っていた。

「……ラヴィスさん……あの姿は一体……」

「ああ、気にするな。それよりお前も鎧を脱いだところを見たことないな……」

「あっ……あんまり見ないでください……」

「……ま、我もそれと同じようなことだ。あれは見なかったことにしてくれ」

「分かりました……」

 恥ずかしそうに顔を背けるミディアにそう言うとラヴィスは愛用の大剣を抜き背中へとしまった。輝きがなくなったラヴィスの愛剣は本当にただの大剣と変わらず見えていた。

「さてミディア、戻るぞ」

「えっ……その……この姿じゃ……」

「新しい鎧はないのか?」

「ありますけど……私1人で鎧着られないんです……」

「は……?」

「ですから……恥ずかしいのですが……」

「……やれやれ」

 ラヴィスは仕方なくミディアの鎧の着付けを手伝ってあげた。ミディアの世話をしているランディの苦労がなんとなくわかった気がしたような一方で、先ほどまで戦っていた状態から気分を転換できたのはこれから先も戦力として活躍していかなければならないラヴィスにとっても非常にいいことであった。



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