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ブログ開設3周年記念特別SS 魔界鎮圧作戦 ~Chapter7~

「まだまだです……っ!」

 7回目の絶対守護障壁は既に崩壊寸前であったが、それでもミディアはゼクトールを跳ね返して転ばせていた。何度も転ばされたゼクトールは大分気が立っているようで体は大分傷だらけになっていたが突進の威力はだんだんと増しているような気もしていた。対するミディアの絶対守護障壁は疲労もあり回を重ねるごとに効果は弱まっており、次の突進を止められるかどうかはもう分からなかった。

「……十分足止めにはなってますが……このままでは……」

 ゼクトールは再び立ちあがると前足で地面を蹴りながら威嚇をしていた。その姿を見てミディアは再び盾を構え直す。

「……く……絶対守護障壁っ!!」

 ミディアは8回目の絶対守護障壁を展開した。展開された光の壁は最初からひびがいっぱいですぐにも壊れてしまいそうなものであったがそれでもミディアはゼクトールを迎え撃った。

「……う……く……」

 激突したゼクトールと光の壁の間に火花が散った。最初はやはりゼクトールが圧倒的に押し込んでいたようであるが、ミディアの絶対守護障壁もなかなか破られなかった。

「…………っっ!!」

 これまでであればそろそろゼクトールの勢いを止めることができる頃合いであったが、今回はその勢いが全く衰えていなかった。

「……くぅぅ……負ける……訳には……っ!!」

 その時ピキッと光の壁に亀裂が入る音が聞こえた。その音にミディアが一瞬動揺したところで亀裂は一気に広がってしまった。

「……がぁぁぁぅっ!!」

 光の壁が破られゼクトールの突進と牙の突き上げを直接食らってしまったミディアはダンプカーに轢かれたような衝撃を受け跳ね飛ばされてしまった。さらには地面に叩きつけられ何回転かした後にさらにゼクトールの突き上げを食らって跳ね飛ばされた。ミディアを跳ね飛ばしたところでゼクトールの突進は止まった。

「……う……ぅぅ……」

 しかしあれだけ衝撃を受けていたのにもかかわらずミディアはよろよろとではあるが立ちあがった。自慢の鎧は割れたりへこんでぼこぼこになり、盾にも突き上げを食らった際にできたであろう牙が擦れた傷ができてしまっていた。

「……う……けほっ!」

 鎧の隙間からは血が滲み、さらには血を吐くほどのダメージを負っていたがミディアは再び盾を構えようとした。しかし先ほどの衝撃の影響か盾を持つ手は痺れてしまっておりうまく構えることができていなかった。

「……体が……全然……」

 霞む視界の中ゼクトールは再び突進をしようと前足で地面を蹴り土煙を立たせていた。恐らくはミディアが立ち上がれなくなるまで叩きつぶそうということなのだろう。

「…………」

 ミディアは意識が薄れぼーっとしていた。次の一撃を食らえばもう体はもたないということは当然分かっていたが、その体を動かす気力もミディアには尽きかけていた。その中でゼクトールはミディアめがけて突進を開始していた。

「……ランディ……さん……」

 ミディアの最期に助けを求めるようにそう呟いた。

「……ミディア」

「えっ……!?」

 ミディアはその声で我に返った。ランディはこの場にはいないはずなのにその声はまさしくランディのものであった。

「っ!!ぁぁっ!」

 とっさに盾を構えたミディアであったが止めることができるはずもなく再び跳ね飛ばされてしまった。地面に叩きつけられ多少転がったが不思議と先ほどよりかは痛みを感じることはなかった。

「……そっか……」

 ミディアは地面に転がったままでいた。その中でミディアはランディの言葉を思い返していた。

 ・
 ・
 ・

「……ミディア、君に1つ大技を教えておきたい」

「大技……ですか?絶対守護障壁とは別に?」

「そうだね、僕では真似できない……君だからこそできる大技だ」

 遥か昔の時代、まだミディアが普通の人間であった時のことである。ある立派な城の中庭でミディアはランディと一緒に特訓をしていた。その特訓の最後の方になってランディはこう切り出したのであった。

「……私だからですか?」

「そうだよ、魔力を使うんだ」

「私魔法なんて使えませんよ……!?」

「ははは、そういう意味じゃないんだよ」

 ミディアの素直な言葉にランディは笑顔を見せたが、またすぐに真剣な表情に戻った。

「……人間だれしも“魔力”は持っているんだ。大抵の人間はそのことに気付いていないかもしくは気付いていても上手く利用することができないんだ。だから魔法を扱える人はわずかでその人たちは魔法を使う才能があるってことさ」

「そ……そうなんですね……」

「でもミディア、君は残念ながら魔法を扱う才能はないみたいだったね。そんな君でも“魔力”はあるんだよ」

「は……はい……」

「……その魔力を使う方法を今から教えてあげるよ。それができれば君にしかできない大技ができる」

「……教えてください、ランディさん……」

 ・
 ・
 ・

「……忘れてました……ランディさんに教えてもらった……あの大技を……」

 ミディアはゼクトールとの距離が多少離れていたことを確認するとゆっくり立ち上がった。先ほどはよろよろとようやく立ち上がるような感じであったが、今回はすぐに立ち上がることができた。立ち上がったミディアはゆっくり目を閉じると体の前で持っている白銀の刃を持った立派な槍をバトントワリングのようにぐるぐると回し始めた。

「……集中して……自分の内に流れている魔力を感じる……」

 ミディアが槍を回し始めるとミディアが身に着けていた鎧がぼろぼろと剥がれ落ち始めていた。

「私の魔力は……守備の能力を引き上げてくれるもの……これを……」

 ゼクトールはミディアが立ちあがったことを確認するとまた突進の準備を始めていた。その間にもミディアの鎧は剥がれ落ちていき、ついには全ての鎧が剥がれ落ちていった。鎧の下に着ていた服はボロボロで血が滲み真っ赤になっていた。

「……攻撃能力の強化に転換する……つまり……」

 準備の整ったゼクトールはミディアに向かって突進を開始した。その足音を感じ取ったミディアは目を開けるとゼクトールをしっかりと視界に捉えた。

「攻守置換!」

 ミディアの体からは仄かに赤いオーラが湧き出ていた。そして突進してくるゼクトールを思いっきり正面から薙ぎ払った。

「……私の守備の力が……そのまま攻撃力となる……」

 その一撃はゼクトールの牙に当たり簡単にへし折ると同時に、ゼクトールの体勢を少し持ち上げていた。

「つまり……絶対守護の力が……」

 ミディアはさらに逆方向から薙ぎ払った。その一撃はゼクトールの牙を薙ぎ払うと共にゼクトールの体を完全に持ち上げていた。

「……絶対破壊の力に変貌する……」

 持ち上がったことで丸見えとなったゼクトールの腹にミディアは鋭い突きをかました。切り裂くことに特化したミディアの槍はゼクトールの体に深々と刺さると内側から切り裂いていった。

「……まだ……立てるんですか……」

 しかしゼクトールも先ほどのミディアと同じようにしぶとく立ち上がっていた。かなりの深手を負いながらもミディアを薙ぎ倒そうと突進する意志が見られた。

「……次で決めますよ」

 ミディアは再び槍を構えなおした。肩の上で力を溜めているその姿はほぼほぼ満身創痍の状態とは思えないほどの勇壮さがあった。対するゼクトールもこれまで以上に気合の入った様子で地面を蹴っていた。

「……はぁぁぁぁぁっ!」

 ゼクトールが突進を開始してきたところでミディアも溜めていた力を一気に解放した。渾身の力で迫るゼクトールの顔面に向かって薙ぎ払いをした。

「一閃っ!!」

 力と力のぶつかり合いはミディアの圧勝であった。薙ぎ払いの一撃はゼクトールの前足と頭を易々と斬り落とし、そのままゼクトールは転倒、地面に倒れながらの突進では威力はなく鎧のないミディアであっても止めることは容易であった。

「……ハァ……ハァ……これで……片付きましたよね……」

 頭を失ってもなお転倒したゼクトールの体は動き続けていた。しかし体を起こすこともできずただただどくどくと赤黒い血を噴出させながらもがき続けるだけであり、何もしなくても息絶えるであろうことは目に見えていた。

「……よかった……思い出せて……」

 ミディアは力を使い果たしたようでその場に力なくへたり込んでしまった。あれほどまでの力を見せていたとはいえミディアもほぼ満身創痍であり、その疲れが今になってどっと出てきたようである。

「……少し……休ませて……」

 ミディアがそのまま横になろうとした瞬間、体を揺さぶるような横揺れが近くで起こり始めた。

「な……何……!?」

 その揺れは確実に近付いていた。地面の下から何かが迫ってきているということだろう。その相手に対処できる力は当然ミディアには残っていない。

「きゃぁぁぁっ!」

 そして揺れを起こしていた張本人が地面から姿を現した。大きな八本の細い足が突き出てくるとその下から体が現れたその姿は紛れもない……

「……土蜘蛛……しかも……この気配は……」

 灰白色の体にはところどころ黒い斑点が入っており、鎧のような甲殻が関節部分や腹部などの部分を中心に覆っていた。さらにそこに赤黒いオーラ。これも魔界の加護によるものだと考えればこいつがファラの言っていた魔界十二使徒のトロスニアということになるのだろう。

「……ひっ!!」

 地面から姿を現したトロスニアは転がっていたゼクトールの体を貪るようにして喰らっていた。まるで用済みとなった者を処分しているかのようなその姿にミディアも恐怖していた。

「……今この状態であんなのの相手なんて……」

 ゼクトールを喰らうことに今は集中しているものの喰らい終われば次の標的は当然自分であろう。体力はほぼ限界に近くまた鎧は剥がれ防ぐこともできず、地面に潜られてしまえば今のミディアではお手上げであるが地面に潜る前に蹴りを付けられる力は残っていない。

「……すみませんっ!」

 鎧神としての意地や誇りはあるものの、防ぐことすらできないような状態であれば無理をせず下がること。これはランディからも言われてきたことである。それくらいの冷静な判断はミディアにもできた。残る体力を振り絞ってミディアは速やかにその場を離れていった。しかしその動きはすぐにトロスニアが察知していたようである。ゼクトールを喰らい終わるとすぐに地面に潜り逃げるミディアを追いかけ始めた。

「……っっ……逃がしてはくれないのですね……」

 ミディアはそこで急転換しトロスニアのいた方向を向くと、地面の動きに細心の注意を払った。ひとまず地面からの奇襲を封じなければ勝負にならないだろう。幸いトロスニアの気配は地面を通していてもはっきりと分かるものであったために捌くのも簡単だと思っていた。

「!!そんなっ!……でもっ!」

 しかし地面から出てきたトロスニアは完全にミディアの背後を突いていた。満身創痍の体では感覚も大分ずれが起きていたようである。ここから守りの体勢に入ったとしてもとてもではないが防ぎきれない。咄嗟の反応でミディアは回避を選択した。振り下ろされたトロスニアの2本の脚は鎌のように空気を切り裂いてミディアがいた場所に突き刺さった。

「…………誰か……」

 辛うじて避けることができたもののこれが何度もできるとは思っておらず、早いところ援軍が欲しい場面であった。

「……よぉ、大丈夫か?」

「え……?」

 そこに待っていたかのように声をかけてくる存在がいた。

「……ファラがトロスニアの動きに気付いたからな、すぐにこっちに派遣された」

「ラヴィスさん……助かります……」

 ミディアの後ろには大剣を構えたラヴィスが加勢に来ていた。いち早くラヴィスが駆けつけてこれたのもファラの機転が効いた判断によるものであった。

 ・
 ・
 ・

「……大丈夫、みんな?」

「……大丈夫だが……流石に無理できねぇ分殲滅速度は遅いな」

 本体は魔界軍の部隊との交戦をしていたが思いの外殲滅は進んでいなかった。将軍とヘリオス、エミリオの攻撃に特化した神界八将の一時離脱による戦力のダウンは相当のものであり、現状では対魔物相手に効果の高い聖女2人による法撃に頼らざるを得ない状況であった。

「……ルミナス、あまり無理はするなよ」

「大丈夫です、それくらいの加減はしています」

「フィア、将軍がいないからって勝手に無茶するなよ」

「……ふふ、ご安心を。将軍様が戻ってくる前に離脱するようなことはありませんよ」

 聖女2人の指揮はラヴィスが取っていた。その指示で聖女2人が適度に法撃を撃ち、残りは比較的攻撃力の高い双神リンデを中心に殲滅を行っていた。

「……さて、じゃあオレもちょっくら本気出すとするか……」

「ファラも無理しちゃダメだよ?」

「……言われなくても……」

 聖女たちとリンデの活躍に触発され鎌を振り回していたファラがネレイスの方を振り返った時であった。遥か遠くの方の魔界の気が奇妙な動きをしていることに気付いた。

「……っち、トロスニアのヤツ動きやがったな」

「え……!?」

「……あの重騎士も流石に2体相手は無理だぞ」

「トロスニアってどんなの?」

「……面倒な土蜘蛛だ。動きはそれほど速くはないが地面に潜って下から奇襲をかけてきたり罠を張ったりと狡猾で厄介なのが特徴だ」

 ファラも大分焦りの色を隠せない様子であった。ゼクトールのように単純に戦える相手ではなく、それなりに考えて戦わなければ返り討ちにあう可能性があるためにミディアを戦わせるには非常に危険な相手であった。

「……ネレイス様。急ぎだから……申し訳ないが……」

「了解、ミディアさんの加勢に……」

 ネレイスが立派な精霊の羽を広げ飛び立とうとした時であった。ネレイスのところにラヴィスが駆け寄ってきていた。

「……待て、ネレイスどこに行く?」

「ミディアさんのとこにトロスニアが奇襲を仕掛けようとしてるみたいなんだって、すぐ加勢に行かないと……!」

「……ネレイス。ルミナスとフィアの指揮を頼む。我が加勢に向かう」

「え……!?ラヴィスじゃ……」

「ネレイス、お前が今は総大将だ。総大将が本体の指揮をとらんでどうする」

「でも……」

「……将軍、ランディ、ヘリオスにエミリオ、そしてミディアと仕事してるんだ……そろそろ我が出てもいいだろうよ」

 現在この場に残っている神界八将は残り3将。そのうち双神リンデは現在この場で戦っており手が離せない。避神クロノスは戦闘要員ではない。となれば残るはラヴィスである。

「……この場を捌くぐらい我がいなくても大丈夫だろう。それにここを凌げば将軍たちを待つ時間くらいはできるだろうからな……」

「ラヴィス……」

「時間がないんだろ?任せたぞ」

「あ……ちょっと!」

 そしてラヴィスはネレイスの指示が出る前にミディアの戦っている方へと駆け出して行った。

「……あはは……行っちゃった」

「あんなダッシュして平気かよ……」

「大丈夫だよ、意外とラヴィス足速いしスタミナもあるから」

「……そうかい」

 ファラは呆れ顔でラヴィスを見送っていたがネレイスはすぐにルミナスとフィアの元に駆け寄っていった。

「ラヴィスがミディアさんの加勢に入っちゃったからあたしが指揮をとるよ」

「ふふ、そうですか」

「でしたら……」

 そのタイミングで聖女2人は示し合わせたかのように法撃攻撃の回数を増やした。

「戦力減った分頑張らなくてはいけませんね」

「え、ちょっと……」

「大丈夫です、これくらいすぐに回復しますよ」

 先ほどまでとは比べ物にならないほど殲滅速度は上がっていき、この2人を止めることは指揮していたネレイスであっても不可能であった。

 ・
 ・
 ・

「……さて、ここは我が相手になってやろう。お前は下がって休んでろ」

「はい、お願いします……」

 こうしてラヴィスは息を切らせた様子もなく加勢に駆けつけていた。そのラヴィスに後を任せミディアは距離を取っていった。そのミディアを追おうとトロスニアも地面に潜ろうとしていた。

「行かせないぜ!」

 そのトロスニアの体めがけてラヴィスは一太刀浴びせていた。ダメージこそ期待はできなかったが注意を引くには十分であり、トロスニアの目標をミディアから自分に向けさせることに成功した。

「そうそう、じゃあ……魔界十二使徒の力……見せてもらおうか!」

 トロスニアがラヴィスに目線を向けると自慢の大剣をその目線に突き付けた。闘神の名を冠するラヴィスの力が今ここで問われようとしていた。



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パソコン使えないくせにブログに手を出した愚か者。
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