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ブログ開設3周年記念特別SS 魔界鎮圧作戦 ~Chapter9~

「報告です!」

「……今度は何だ?」

「……ゼクトール様とトロスニア様が……」

「敗れたか……所詮は知恵のない獣と浅はかな知恵のゴミムシだったか」

 ゼクトールとトロスニアが破れたことはすぐにベルガザスの元に報告されていた。魔界十二使徒という有能な手勢をまた失ったことになるが、ベルガザスはそんなことは意にも介さぬ様子で玉座の上でふんぞり返っていた。

「……天界と精霊界の様子はどうだ?」

「……はっ、天界と交戦中の部隊は比較的優勢と聞いています。天界の守りは想定以上に薄いということでしょう……さらに精霊界から戻ってきた斥候部隊の報告では精霊界の防備を強固にしているような感じもないとのことでした」

「ほぅ、それはいい報告だな……早速精霊界を叩きつぶす準備を始めよ!」

「はっ!」

 配下からの報告を聞いたベルガザスはすぐに精霊界侵攻の準備を始めさせていた。自身も攻め込む気満々のようで玉座から立ち上がり肩慣らしのような仕草をして体を作っていた。

「……陛下……?」

「……精霊界侵攻の指揮はオレが執る」

「へ……陛下御身が!?」

「当然だ、向こうは精霊界女王が直々に攻め込んでいるのだからな。こちらも王自らが攻め込むというものだろう」

 ベルガザスは不敵な笑みを見せていた。正直自分一人でも精霊界を叩きつぶすくらいできると思っていたベルガザスにとっては願ってもないチャンスであった。魔界の防備に割ける戦力はまだまだ十分にあり、十二使徒もまだ5人残っている。魔界が陥ちる前に精霊界を陥とすことは十分に可能、そういう目算であった。

「……分かりました……では魔界の防備は……」

「今レゾーナは反逆者の捜索を行っている……だからアモンに任せる」

「アモン様ですね、畏まりました」

「……仕事ですね?」

「アモン様!?」

 ベルガザスがアモンという言葉を口にした瞬間には既にアモンが伝令役の隣で跪いていた。

「アモン、お前はここで精霊界女王を迎え撃て」

「迎え撃つ……でよろしいのですね?」

「時間を稼げばそれでいい、その間に精霊界を攻め滅ぼしてくるからな」

 自信満々に言ったベルガザスであったがアモンの表情がやや優れない。

「……陛下、失礼ながらお1つ……」

「何だ?」

「……精霊界女王が負の気の呪いを解いた際に……精霊界の防護壁のようなものがありまして……」

「防護壁?」

 アモンは精霊界再生の際に攻め入った時のことを話した。今でこそしっかり生え変わったものの、あの時あそこでアモンは自慢の牙をへし折られていた。そのことをはっきりと覚えていたアモンにとっては少々気がかりであった。

「……くだらん……そんなもの」

「……だといいのですが……」

「……魔界王という格の違いを見せつけてやろう」

「……分かりました、出すぎたことを申しました」

 しかしベルガザスはその心配を一蹴した。アモンもそれ以上は気にすることをやめたようである。

「では行ってくる、魔界は任せた」

「はっ、お気をつけて……」

 そしてベルガザスは玉座の間を後にしていった。

「……結局お留守番かよ、つまんねぇ」

 ベルガザスがいなくなるとアモンは人が変わったかのように口調を変えて悪態をついた。

「……レゾーナもいねぇんだしなぁ……仕方ねぇ……」

 そして早速アモンはベルガザスの指示を破りだした。

「おい、ゲルデシアとゾルホス!仕事だ!」

 残った魔界十二使徒の戦闘能力も非常に優れた2人を呼び出すと何やら指示を出したようである。





「……く……これほどまで厳重にプロテクトをかけてくるとは……」

 レゾーナは地下室へ向かう階段で足止めされていた。グレモルとバレンシアが潜伏しているであろう場所にかけられていた防壁を次々と突破をしていたものの、レゾーナの力をもってして突破に相当の時間を要するほどの高度な術式をレゾーナが想像していた以上に展開されていたことによりレゾーナには疲れの色が見えていた。さらに今レゾーナが破ろうとしていた術式は力押しできればすぐに突破できそうなものであったものの、力の強くないレゾーナでは易々と破れないタイプの防護壁であり苦戦していた。

「常日頃よりこのような術式を用意していたということなのか……」

 レゾーナが伸ばした左手の先にはレゾーナの魔力が集中していた。これくらいの力を集中させるのは魔界十二使徒クラスであれば造作もないことであるのだがレゾーナにとってはかなり労力のいる作業であった。集中させた魔力を防護壁に押し当てていくとやっとのことで防護壁にひびが入り、少しして目の前の防護壁はガラスのように砕け散っていった。

「……く……これもすべてグレモルの読み通りだったというわけか……」

 レゾーナは息を切らせたまらずその場にへたり込んだ。まだ地下室までは半分ほど階段が残っており、地下室の内部にもまだ術式が大量に施されているであろうことを考えると1人で来てしまったことを深く後悔していた。しかしグレモルが仕込んでいた防壁には一度突破をしたとしても一定時間が経つことで再び閉じてしまう時限式のものがところどころ配置されており、戻って再び仲間を連れて再突入しようにも手間がかかる。

「……私ももう退けないのだな……」

 レゾーナは一息つくと再び立ち上がった。目を瞑り集中した面持ちを見せるレゾーナの周りの空気がどんどん張りつめていく。

「……ならば……!!」

 そしてレゾーナが目を見開いた瞬間、レゾーナの姿が変化をしていくと同時に一瞬にして前2枚の防護壁が弾け飛んでいった。

「……使わせてもらうぞ、私の力」

 レゾーナの背中からは光の翼が生え体からは白く淡い光が漂い始め、体中には青白い光を放つラインが現れていった。魔界十二使徒は各々人のような姿とは別に本来の姿を持っているのであるが、レゾーナのその本来の姿を見た者は数少ないとされていた。さらにその姿は猪のゼクトールや土蜘蛛のトロスニア、さらには死神のファラといった本来の姿がいかにも魔獣や悪魔といったいかにも凶悪そうなものとはまるで違う、非常に幻想的で何がモチーフとなっているのかがさっぱり分からないものであった。

「………!!」

 魔物というよりかは精霊と呼んだ方が近い姿となったレゾーナは微動だにしていなかったのだが、レゾーナの先にあった防護壁は次々と破られていた。

「……もう少しだな……」





「……レゾーナが本気を出したな」

 防護壁の先にある地下室にいたグレモルにもレゾーナの変化は感じ取れていた。流石のグレモルにも多少焦りの色が見え始めていたがそれでもまだ余裕があるような表情を保っていた。

「……兄上、準備が整いました」

「そうか、じゃあバレンシア、合図を出したらすぐに向かってくれ」

「分かりました……」

 奥の方で何やら端末を操作していたバレンシアも準備が整ったことを報告していた。端末の画面には座標軸コードが入力されているようであり、すぐに転送ができる状態が整っておりここがどうやら逃亡先に決めた場所であるのだろう。

「……ところで兄上は?」

「……レゾーナの問いかけに答える義務がある、レゾーナは物分かりもいいから問答無用で手打ちにしてくることはないだろうし……それを防ぐ術式も敷いてある。レゾーナが満足するまで答えた後にすぐそっちに行くよ」

「……気を付けてくださいね……」

「……安心しろ」

 レゾーナの強さをよく知っているバレンシアは兄のグレモルを残して先に逃げることに後ろめたさを感じていた。兄のことは当然信頼はしているものの不安はぬぐい切れていなかった。

「……来るな」

「兄上……」

 バレンシアにもレゾーナの気配が伝わってきていた。普段レゾーナが内に秘めている強大な力、それを解放しあっという間にこの部屋の近くにまで来ており、じきにこの部屋の扉も開けられてしまうのだろう。

「…………レゾーナ、君に我らの行き先が読めるかな……?」





「……なんとか……片付いたね……」

 ネレイスたちはやっとのことで魔界の部隊を退けていた。ルミナスとフィアの聖女コンビがかなり活躍をしてくれていたものの、その疲労も大きくなっており途中からは流石に休憩をとっていた。

「やれやれ……流石にこれ以上はしんどいぞ……」

「そうだね……将軍様たちまだかな……」

 そう言ったネレイスの視線の先にまた新しい部隊が現れていた。

「……あれは……」

 それが魔界の部隊でないことは一目瞭然であった。その部隊には天使と精霊が入り混じるようにして存在していた。

「やれやれ……やっと追い付いたぜ……」

「将軍様……!!」

 混成部隊の戦闘には見慣れた将軍の姿があった。さらには途中離脱していったランディ、ヘリオス、エミリオも揃って一緒にやってきていた。

「……辛そうな顔してるな」

「当たり前だよぉ……」

 将軍たちが戻ってきたことに安心したのかネレイスは表情を緩め、そのまま地面に座り込んでしまった。

「……天界と精霊界からの部隊も一緒に連れてきた。今のところ誰1人として欠けてはいないそうだ」

「ひとまず双方の代表が総大将に挨拶をしておきたいそうだよ」

 将軍の横にいたランディは後ろにいた天界、精霊界の部隊長に目配せをすると共にネレイスの前へと歩み出ていた。

「……貴女が精霊界女王のネレイス様……ですね?私は今回魔界鎮圧作戦における天界の魔界侵攻部隊を率いている天界十二聖女の第6聖女、ヴァレリアと申します」

 まずはヴァレリアがネレイスの前で膝をつき丁寧にそう挨拶した。

「……第6聖女……」

「はい、貴女のことはルミナス様、およびフィア様から窺っております。精霊界を繁栄へと導く希望の王……お目にかかれて大変光栄です……」

「……えっと……ゴメン、なんか今はそんな感じ全然しないよね……」

 疲れきって座り込んでいるネレイスであったがヴァレリアの丁寧な姿勢は揺らぐことがなかった。

「これより我らの部隊は貴女の指揮下に入ります。我々天界の部隊は皆聖女の加護により破邪の力を得ています……魔物の部隊相手に有効に戦えると自負をしておりますので遠慮なく我々をお使いくださいませ……」

「あ……うん……天界のみんなの力……期待しているからね」

「お任せください……」

 ヴァレリアはそう言うと面を上げ立ち上がると後ろへと下がっていった。その代わりに精霊界の部隊長が前へとでて跪いた。

「お初にお目にかかります。私、このたび魔界鎮圧作戦における精霊界の部隊をお預かりさせていただいている……」

「清流のリヴィエール……でしょ?いいよ、面を上げて」

「え……!?ははははいぃぃっ!」

「あはは……落ち着いてよ……」

 ヴァレリアと同じように丁寧に挨拶をしようとしていたリヴィエールであったが、ネレイスが自分のことを知っていたということに衝撃を受けて取り乱してしまったようである。そのリヴィエールをネレイスはそっとなだめた。

「精霊界の防備にエメローネを付けるときに話は聞いているわ、有能な水の精霊だってね」

「ゆ……有能だなんて……!!わ……私なんてまだ……!!」

 まだ取り乱した様子のリヴィエールはあたふたする間にまだ見たこともない自分の主君と目が合ってしまった。

「……え……」

「それに……あたしにちょっと似てるってエメローネも言ってたけど本当だったんだね」

 初めて見たネレイスの顔、それは水面に映して見ていた自らの顔とどことなく雰囲気が似ているような気がするものであった。

「……そ……そんな……!!私の体は水ですし……そんな綺麗な紫の髪でもないですし……!」

「あはは……まぁそうだけどさ、でも言われてみると結構似てるかなーって思うけど……」

「…………」

 確かに言われてみればだんだんネレイスの顔が自分の顔のようにも見えるような気がしていた。そしてそれと同時にリヴィエールは何故精霊界では名もそんなに知られてない、力もあるわけでもない自分がネレイスの下へと派遣されたのか……自分を指名したエメローネの意図がどことなく分かったような気がしていた。

「……リヴィエール?どうしたの?」

「……いえ、少し落ち着こうと……」

「んー、そっかぁ」

「……ネレイス様。寄せ集めの有志部隊ですが……ネレイス様のために精一杯援護致しますのでなんなりとお申し付けください」

「うん、期待してるよ」

 この仕事は恐らく自分にしかできないことだったのだろう。精霊界防備のために今回傍にいられなかったエメローネの代わりに自分に託された使命に気付いたことでリヴィエールも落ち着きを取り戻したようである。最後にしっかり挨拶をして締めくくるとランディの後ろへと下がっていった。

「……これで魔界軍の部隊との戦いも楽になるよ……」

「そうだな……」

 ネレイスの言葉に同意したのはファラであったが、その表情はあまり優れてはおらず視線はずっと先の方を向いていた。

「……ただ魔界の部隊もほぼほぼ守りの陣形を固めきってる。あれを突破するのは骨が折れるぞ……」

「……そうかもね、でも大丈夫だよ。天界、精霊界のみんなも一緒に戦ってくれるし……もちろんSkyBlueのみんなも一緒だし……魔界十二使徒のファラだっているもんね」

「……ヘッ……まぁそうだな……」

 自分のことを信頼されていることにファラは珍しく素直に照れているようであった。

「……おいおい、“SkyBlueのみんな”ってとこに我々は入っているのか?」

「はい……私たちのこと……忘れていませんよね?」

「あっ……ラヴィスにミディアさん……」

 そこに鎧を着直したミディアとその手伝いをしたラヴィスも戻ってきて合流をした。これで魔界鎮圧作戦における全メンバーが揃ったことになった。

「……忘れてたな……?」

「あはは……」

「さて、じゃあ全員揃ったところで……ネレイス、号令でもかけろよ」

「……うん、分かったよ……」

 そしてネレイスは背中に羽を展開するとみんなの前へと飛び立った。

「結構奥まで来たけどまだまだ本番はこれから……みんな、世界の安定のために力を貸して!」

「任せろ……」

「……魔界鎮圧部隊……出撃!!」

「「「オォーーッ!!」」」

 ネレイスが飛ばした檄にSkyBlueのみんな、そして天界、精霊界の部隊のみんなも一斉に応えた。そして目指す魔界宮殿へと向けて進軍を開始した。



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