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ブログ開設3周年記念特別SS 魔界鎮圧作戦 ~Chapter10~

「……ねぇ、あの山の中腹辺りにある城壁に囲まれた場所って……」

「ああ、あそこが魔界の本拠、魔界宮殿のある首都だ」

「ついにここまで来たんだね……」

 ネレイスの視線の先には山の中腹辺りに広がっている丘陵地帯の奥、大きな湖のほとりにある堅牢な城壁に囲まれた場所があった。あそこが目指す魔界首都でありそこに倒すべき相手、魔界王がいるはずである。

「こうして見ると……確かに守り堅そうだね……」

「ああ、首都正門前はバッチリ固められてる。さらに首都へ向かう街道上もほぼほぼ配置は完了済み、それを避けて攻め込むのは……現実的じゃないな」

「どういうこと……?」

「んじゃ……ちょっと待ってろ」

 するとファラは1枚の紙を取り出していた。

「……簡単で悪いんだが……首都周辺はこんな感じになっている……」 



首都までの道のり 模式図



「★印が目指す魔界首都、右下の●が現在地付近だ。首都近郊から流れている青色が湖と流れ落ちる滝、そして川。灰色が街道で茶色が山岳、緑が森林地帯だな。あと首都近郊の薄い茶色の辺りは高原地帯だってことを示してる」

「奥の黒いとこは何?」

「あそこは崖だな……魔界首都は背後に急峻な山、両サイドは谷底と湖に守られた厄介な場所に作られている」

「……しかも下から攻める相手を上から迎え撃てるのは強いよね……」

「……で、だ。オレの見立てだとこういう感じに部隊を敷いてあると見てる」

 そしてファラは模式図に赤いペンで印を書き加えていった。



首都までの道のり 敵予想配置



「魔界の部隊は少なくともこう配置されている」

「……ランディさん!」

「どうしたんだい?」

 ここでネレイスはランディを呼び一緒に作戦を練ることにした。

「ランディ、こういう地形で敵の配置がこうなっている。アンタならどうする?」

 ファラは一通りランディに説明をすると意見を仰いだ。

「なるほどね、ところでこの破線は何だい?」

 まずランディは近くの山岳部分に引かれていた白の破線について聞いてきた。

「ああ、こいつはこの山を通り抜けて向こうの街道まで行けるトンネルだ」

「何かメリットがあるのかい?」

「北側の街道への抜け道ってとこだな……それくらいのメリットしかないが今なら……」

「選択肢が増えるってことだね……」

 ランディが思考を巡らしている横でさらにネレイスが指摘をした。

「湖のほとりにあるこの四角はなに?」

「……それがな……そこに魔界の兵器工場があるんだよ」

「兵器工場?」

「……ああ、オレも詳しくは知らんが……正直放置していいものかと……」

「まぁとりあえず考えられる進軍ルートはこうなるんじゃないかな?」

 その間にランディは進軍ルートを割り出していた。



首都までの道のり 進軍ルート案



「恐らく考えられそうなルートはこの3つだね」

 ランディは白い矢印で進軍ルートを示していた。まずは先ほど示した山岳部のトンネルを通り奥の街道から首都を目指すルート。次に川沿いを走る街道から首都を目指すルート。そして街道を通らず森林と湖を超え首都正面を避けて突入するルート。この3つが挙げられていた。

「……ネレイス、君はどう思う?」

「……あたしだったら中央の街道を進むルートを選ぶかなー」

「どうしてだい?」

「……トンネルを通るにしろ森を通るにしろ野生の魔物との遭遇を考えるといらない手間が入りそうだし……」

「そうだね……」

「特にトンネルを通るルートだと中央の街道の部隊との戦闘も避けられなくなりそうだしね」

 首都との位置関係上中央の街道の敵を排除する前に首都正面の敵とは戦えない。しかし中央の街道を先に押さえておけば奥の街道からくる部隊をミディアあたりが食い止めれば余計な戦闘なく首都防衛の本隊と戦えるだろう。

「じゃあ兵器工場はどうするんだい?」

「……叩いた方がいいと思う」

「……何があるか分からないけど?」

「……首都攻略中に背後を突かれるとそれこそマズイから……」

「……賢明な判断だね」

 兵器工場と言うくらいならば当然相当の戦力となる兵器があるはずである。それを利用されれば首都攻略にとっての大きな障害となりかねないが、もしかしたら……

「……敵の兵器工場を潰せれば敵の戦力を削ることにもなるし、うまくすれば奪取してこちらが利用できるかもしれない。そういう意味でもここは叩いておきたいね」

 さらに戦力向上を計れる可能性があるのであれば当然押さえるべきであろう。そこの意見はランディも同じようだ。

「……ただ僕が今回推したいのは……」

 そう言ってランディは新しくルートを示した。



首都までの道のり ランディ献策



「……このルートで行きたいと思う」

「……なるほど」

 ランディの示したルートは概ね中央の街道を通るルートを利用したものであったが、途中から湖を超えて首都正面を避けるルートが別働隊で用意されていた。

「……ひとまずみんなを呼ぼうか」

 そしてランディはそう言うとみんなを集めて本格的な作戦会議を始めた。





 川沿いを沿うようにして引かれた街道の先で魔界の部隊はしっかりと陣を敷いて待ち構えていた。そこへネレイスが率いる神界勢力も陣形を崩さずに迫ってきていた。部隊の戦闘に立っていたのはヴァレリア率いる天界の部隊と騎神ヘリオス、そして空神エミリオであった。その後ろにはルミナス、フィアの聖女2人と精霊界の部隊が支援のために控えており、その中央にネレイスがいた。

「…………」

 しかしそのネレイスの様子は少しおかしかった。紫の綺麗な髪をしていたが顔色はいつもより青く、どことなくぎこちない手つきで水色の剣と盾を携えていた。

「リヴィ……失礼しました、ネレイス様」

「構いませんよ……」

 このネレイスはネレイス本人ではなく、精霊界の部隊を率いてきたリヴィエールが変装をしたものであった。

 ・
 ・
 ・

「ネレイス、君は将軍とファラ、そしてクロノスを連れて湖を渡るんだ」

「……そうだね……あたしたちはできるだけ消耗したくないしね……」

 ランディの献策はまず首都に侵入し魔界王とその取り巻きを倒す特別部隊を編成していた。そのメンバーとして選ばれたのはまず魔界王と決着をつける役割を持つネレイス、そして首都や宮殿内の勝手が多少なりとも分かるであろうファラ、その付き人としての将軍、そして最後に選ばれたのはこれまで全く出番のなかったクロノスであった。

「え、オレ役に立つの!?」

「……うん、貴方はこっちの切り札だからね。是非来てもらいたいんだよ」

「……仕方ないなぁ……」

 避神と呼ばれる実力を持つクロノスの力を借りる場面は今のところなかったが、ネレイスにはどうしてもクロノスの力を借りなければいけない場面があることが分かっていたようである。

「……ただ……その間に僕らのとこにネレイスがいないということがバレると危険だからね……誰かに“ネレイスの代わり”をやってもらいたいんだけど……」

「……そこは私の仕事ですね」

 そしてこの作戦の実行に非常に重大な役割を持つ“もう1人のネレイス”に名乗りを上げたのがリヴィエールであった。

「……やってくれるかい?」

「はい、それが恐らくエメローネ様が……そして精霊界のみんなが私に託した使命なのでしょうから……」

「リヴィエール……」

 そのリヴィエールをネレイスは心配そうに見つめていた。

「ネレイス様、エメローネ様がネレイス様の面影がうっすらとあるような私をここに派遣してくださったということは即ち……」

「……リヴィエール、貴女に……命令するよ」

「何でしょうか?」

「……変な考えはしないこと……ちゃんとこれが終わったら任務完遂の報告をすること、いい?」

「……分かりました」

 ネレイスが言いたいことはリヴィエールもよく分かっていた。ネレイスの代わりになるということはそれだけ危険な状況に何度も晒されることとなり、下手をすれば命を失うことにもなりかねない。自分のために他のものを犠牲にすることをよしとしないネレイスにとっては誰にも犠牲になってほしくないと心から願っていたのである。

「じゃあ残りのみんなはまず街道に陣取っている魔界の部隊を排除しよう。排除した後の動きはまた後で伝えるからね」

 そしてランディは最後にそう言うと立ちあがって散会とした。

 ・
 ・
 ・

「……ネレイス、心の準備は大丈夫かい?」

「ランディさん……正直……まだ……」

 リヴィエールの隣にはランディが来ていた。ネレイス、もといリヴィエールの補佐としてランディは常に隣に控えていた。

「……ネレイス様に言われた言葉が効いてるのかい?」

「……そう……ですね……」

「……大丈夫だよ、多分それが無茶な注文だってことは分かっているだろうからね……」

「……」

「……さ、ネレイス。どうやら相手は普通の魔界の部隊のようだ」

 前方に展開していた部隊は数こそこちらの数倍の部隊ではあったが、ファラが警戒するように言い残していた魔界十二使徒の部隊ではなかったようであり、殲滅するのにさほど苦労はしないものと思われた。

「……私たちがここで全力で戦闘を行っている間に将軍様たちが森の影も利用しながら高地の湖を渡り首都を目指すのですね」

「そうだね……」

 そんな中魔界の部隊もこちらが十分に接近してきたことを見て陣形の調整と迎撃の準備を進めていた。

「……ネレイス、相手はどうやら守備に徹してくるようだ。ここはどうするのがいいと思う?」

「……来ないのであればこちらから仕掛けます……それも……」

 リヴィエールは剣を握る右手を上げた。ネレイスから借り受けた精霊界の至宝エンジェルティアによく似たその剣は偽物とは言えそれなりの風格を漂わせる力はあった。

「……遠距離攻撃で!」

 そして上げた剣でびしっと前を指しながらそう言うと精霊界の部隊左右で準備をしていたルミナスとフィアの2人が揃って光法撃を放ち先制攻撃を行った2人の聖女からの先制攻撃を喰らった魔界の部隊にはわずかではあるが乱れができつつあった。

「……向こうに動きがあるまで法撃は続けます!」

 聖女の法撃に守備の陣形を取っていた魔界の部隊は完全に乱され攻勢に転じざるを得なくなったようであり、敵の前線部隊が距離を詰めてきていた。

「……天界の皆さん、迎撃をお願いします!」

「承知した!!」

 いかにして早く法撃の脅威を消せるかを考えて陣形を乱した魔界の部隊をヴァレリア率いる天使たちは的確に叩いていった。

「……流石だね、普通に精霊界の部隊を指揮していた時もなかなか素質があると思って見ていたけど……総大将となっても変わらずしっかり戦況を見据えて的確に指示が出しているね」

「……今はうまいこと行ってるだけです。真価が問われるのはこの先……ですよ」

 先制攻撃を決めたものの、魔界の部隊も次第に陣形を組み直していきやがては数で勝る魔界の部隊にやや押される形となってきたようである。

「……精霊のみんな!」

 そこですかさずリヴィエールが精霊たちに指示を送ると様々な属性の法撃攻撃を放ち苦戦している天界の部隊を援護していった。これまで光属性単独での法撃だったところに多彩な属性の法撃が加わったことで再び魔界の部隊に対策を要しさせた。

「みなさん!いまのうちに!」

 その間にヘリオス、エミリオにさらに後方で待機していたSkyBlueのメンバーが次々と攻撃を仕掛けていった。こうして少しずつ陣形を崩しながら根気強く戦いを続けていった。





「……始まったみたいだね、行こう……」

 その戦いをかなり後ろの方から見ていたネレイスは頃合いを見てそう言うと風の加護を展開し、将軍たちに飛行能力を付与した。そして川の水面ギリギリの高さを飛んでいき対岸へと渡っていった。

「……うん、大丈夫……」

 その様子は前方で戦闘をしていた魔界の部隊に悟られることはなかった。後はこのまま森の影も利用しながら前方に見える滝の上にある湖を渡り首都を目指すだけである。

「ネレイス様、あんまし出すぎるなよ。向こうの部隊と多少足並み揃えないと意味ないからな」

「分かってるよ……森の影で様子を見ながら行くから」

「……森の方はオレが気を配っとく……野生の雑魚くらいなら追い返せる自信はあるからな」

 ファラはネレイスに助言をしながら森の様子を注意深く観察していた。湖を超えて首都に接近しようという考えは当然魔界王側にとっても容易に考え付くことであることからここにも魔界の部隊を展開しているであろうことをファラは警戒していた。

(……魔界十二使徒の気配はないな……ならなんとかなるかもしれないが)

 死神としての能力の一端である目の良さは事前に標的の動きを察知したりするのに便利であり、これまでも敵の布陣を事前に把握することができていたが流石にこの森林地帯ではその力も大分弱まってしまっていた。

(……ここにいるやつらとはできるだけやりあいたくねぇな)

 不意打ちを食らえばネレイスが危険である以上ファラはいつになく気を張っていた。これまで魔界十二使徒として活躍していた時代でもこれほどまでに真剣に仕事に取り組んだ覚えはファラにはなかった。

(……主が違うだけでここまで変われるもの……か)

 このままネレイスが魔界王を倒し魔界に新しい時代が来るとしたら……

「おいファラ、ボーっとすんなよ」

「してねぇよ!」

 注意力が散漫になっていたのか将軍にそう言われてやっとファラは我へと返った。

(……まだ早いか……そのことは魔界宮殿に入ってから……だな)

 そして再びファラは森の方に細心の注意を払いながら少しずつ前へと進んで行った。

「…………」

 その隣にいたネレイスも本隊の戦況を逐一真剣な表情で見つめながら少しずつ進んで行く。

「……やれやれ……気負いすぎると空回りしそうで心配なんだがなぁ……」

「だったら言ってやればいいんじゃ……」

「……いや、それくらいの気概があるってことだ、それを邪魔しちゃ悪いだろう」

 そしてその後に落ち着いた様子の将軍とクロノスがついていった。



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