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ブログ開設3周年記念特別SS 魔界鎮圧作戦 ~Chapter11~

「大丈夫ですか、みなさん?」

「……大丈夫だ、心配いらんよ」

 思いの外苦戦を強いられていた陽動部隊であったが、終始戦況の上では優位に立って進めてきていた。

「一番最前線で戦っている天界の部隊に大分負傷者が出てしまっているようです……」

「流石に疲れが出ているんだろう……エミリオとヘリオスはどうだ?」

「エミリオさんもヘリオスさんもカバーに奔走してくれているようで……体力的に心配です……」

「ルミナスもフィアも大分頑張ってくれている。そろそろ頃合いじゃないか……?」

「……分かりました」

 数的不利な状況に変わりはないものの個の力で前線での優勢は保たれていた。しかしこれ以上戦闘が長期化すれば疲労の溜まってきた前線の部隊の戦力は落ち、次第に押し返されてしまいそうなのは明らかであった。ここは優勢なうちに決着をつけて少しでも疲労を軽減させておきたいところである。

「……突撃です!」

 リヴィエールは携えていた偽剣エンジェルティアを翳すとそれに呼応して精霊たちが展開を開始、代わる代わる戦闘に参加していたSkyBlueメンバーも全員が戦闘に参加、天界の部隊も個々で散開し各個撃破へと動きを変えていった。

「……はぁっ!」

 リヴィエールも慣れない剣を振り回しながら戦っていたが、思いの外様になっておりある程度の相手であれば捌けるレベルで立ちまわることができていた。

「ネレイス、無理はすんなよ!」

「大丈夫です、私もこれくらいしなければ!」

「……やれやれ、まぁ本物はこれ以上に働いてくれるからな」

 出足素早く攻め込んだ結果敵の部隊の陣形が修復する前に次々と先手を取って攻撃を続けられ、しばらくして敵部隊を鎮圧させることができた。

「……よし、殲滅完了っと」

「一度部隊の状況を確認します……報告をお願いします!」

 殲滅後天界の部隊およびSkyBlueのメンバーから個々の状況についてリヴィエールに報告を行った。

「……大分……みなさん辛そうですね……」

 個々の報告はあまり芳しくないものが多かった。特にヴァレリアが報告をした天界の部隊は半数近くが何かしら負傷をしており、一部は戦闘不能により撤退をしてしまった者もいるという。またヴァレリアやラヴェンナを含めた残る天界の者もかなり疲労をためているようであり、継続戦闘が可能なのはあと1戦ほどであるようだ。これまで常に最前線に立ち戦ってくれた天界勢力頼みもそろそろ限界であった。

「……ランディさん、どうしますか」

「……予定通り兵器工場を叩きに行くけど……天界のみんなには外で待機をしてもらおうか」

 視線の先には立派な工場が見えていた。あれほどの規模でどのような兵器を生産しているのかは分からないがここを潰しておかなければ自分たちにとっては非常に不利な展開になってしまうだろう。

「……こちらの動きを悟られる前にできるだけ工場内の戦力を削れるかだね」

「……爆破とかはできないのですか?」

「……何があるか分からないからね……爆発物があった場合は気をつけないと巻き込まれる可能性もあるしね」

「……分かりました、とりあえずあちらを目指しましょう……」

 状況を整理し再び陣を組み直した後にリヴィエールの指揮の下、高地の工場を目指して進軍を開始した。





「ネール様!!」

「いかがなさいました?」

「魔界軍が今度は本隊を送り込んできました!しかも率いているのが……魔界王本人です!」

「魔界王が直々に攻め込んできましたか……」

 その頃精霊界にはいよいよ魔界軍の本体とも言える部隊が攻め込んできていた。魔界王が率いているということもありあらかじめ展開していた精霊界の守備隊はいとも簡単に突破されてしまい、精霊界ではかなり大きな騒ぎとなっていた。

「……魔界王の部隊はどの方向から接近していますか?」

「魔界王は現在炎の地の方から接近している模様、それに合わせて周辺の部隊が合流を開始していて厚みを増していると」

「……好都合ですね……八理を召集しなさい!」

「分かりました!」

 しかし精霊界防衛の総司令官を任されていたネールは至極落ち着いた様子であった。魔界の部隊が1点に集中しつつあるという報告を聞くとすぐに現地での部隊の指揮を執っていた八理守護精霊に帰還指示を出した。

「……精霊界を甘く見てもらわれては困ります。ネレイス様が仕込んだ精霊界防備の切り札……その力を見せる時でしょう」

「ネール様、お呼びでしょうか?」

 ネールの出した帰還指示を受けて一番早く帰還したのは炎の地と対極にあり、比較的魔界の部隊が少なかった水の地を預かるエメローネであった。比較的戦力に余裕のあった氷の地からも加勢に来ていたこともあり、エメローネ自体が宮殿近くにまで来ていたことからすぐに戻ってこれていたのである。

「皆さんが集まったら報告をします……時が来ました」

「……はっ、分かりました」

 その後も次々と八理守護精霊たちがネールの下に戻ってきていた。そして炎の地を指揮していたイフリートの帰還にやや時間がかかったものの帰還指示が出てから比較的速やかに八理守護精霊がネールの下へ帰還を完了した。

「……八理、集まりましたね」

「……はい、で……報告とは何でしょうか?」

「現在火の地の方角から魔界王が直々に部隊を率いて接近中です」

「……ああ、魔界王の力は尋常じゃない……」

 火の八理守護精霊であるイフリートも魔界王の圧倒的な力を目の当たりにしていた。

「……魔界の部隊も魔界王の下を目指して集結中です。ですので……」

「……何か秘策が?」

「はい、ネレイス様から秘策を授かっています……」

 そしてネールはその秘策の内容を八理守護精霊に伝えた。

「……それは……」

「既に話はつけているそうです。前者の方は私が、後者の方はRIOが連絡を入れれば動いてくれる手筈になっています」

「ワカッタ……」

「……では……皆さんは魔界王の進撃をできるだけ闇の地の方から行わせるように集中してください。無理なようでしたら……私に連絡を……」

「承知した」

「では精霊界を守るため行きなさい!」

 ネールのその号令を受け八理守護精霊たちは一斉に散開していった。

「……では私も……」

 そしてネールも自らの使命を果たすために精霊界宮殿を後にしていった。





「随分大きいですね……」

「……首都近郊にこんなでかい兵器工場……か」

 リヴィエールたちは兵器工場まで到達していた。魔界首都を守る部隊の視線をさえぎるようにして建っていたおかげでここまではこちらの動きを察知されることはなかった。

「……ヘリオス、エミリオ。悪いけど天界部隊の護衛をお願いできるかい?」

「了解した」

「ランディさんたちも気をつけてね」

 休憩を取る天界部隊の護衛には馬や風竜に乗って工場内で戦えないヘリオスとエミリオが付けられた。もちろん護衛をしながらも休憩を取ってほしいというのがランディの狙いでもあったようだ。

「では……行ってくる」

「この工場を制圧します!」

 リヴィエールを先頭に兵器工場へと踏み込んで行った。広大な敷地内には大きく分けて2つの建物に分かれており、片方は生産ラインのある工場本体、もう片方は事務棟のようであった。

「ランディ、どうする?」

「……まずは事務棟から制圧した方がいいかな……」

「了解だ」

 ランディの采配でまずは事務棟の制圧が始まった。

「下から制圧していくか……」

 正面玄関からすんなりと入ることができたが周辺に誰かがいる気配は全くなかった。

「……ランディ、これはどう思う?」

「……誰もいない……か」

 これほど大きな工場で立派な事務棟まで建っているというのに魔物の気配は一切なかった。

「……生産ラインがオートメーションなのはいいとして……だからといってこっちにまで誰もいないなんて妙だ」

「……ランディ、生産ラインの方を確認しておくか?」

「……そうだね、こっちの確認はそんなに人数かけなくても大丈夫そうだ」

「……ランディ、お前はこっちの方がいいだろう?」

「そうだね、ラヴィスはそっちの指揮を頼むよ」

 そして2人は一旦事務棟の外に出た。その様子を見たリヴィエールが心配そうに声をかけてきた。

「どうかしましたか?」

「……子猫1匹たりとも気配を感じない。妙だ」

「このまま工場本体に突入して生産ラインを止める」

「分かりました」

「ただ一応事務棟の方の調査は進める。ミディア、あと……フィア、念のために護衛を頼めるかい?」

「はい……!」

「お任せください……」

 ランディはミディアとフィアを連れてきて事務棟の調査を行うことにした。そして残りのメンバーで生産ラインの停止を目指し工場内へと突入していった。



「……ふぅ……」

 エミリオは工場の敷地の外で休息を取っていた。というのも強い光気を放ち立派な翼を広げていた天使たちの気配に緊張して安らげていなかったようにエミリオが感じていたため少し離れた場所でゆっくり休ませようとしていたのである。

「……大丈夫?アキオス」

 翼を畳み地面に伏せるようにして休んでいたアキオスを優しく撫でるとアキオスは気持ちよさそうに目を閉じた。

「……よしよし」

 もともとアキオスは風竜ではなかった。大きな翼と蛇のように長い体をした特殊な飛竜としてエミリオが人であったときからパートナーとして共に戦場を飛び回っていた。そしてエミリオが転生されるにあたりアキオスも新しく風竜として生まれ変わることになったのだが、その大きな変化にアキオスはためらうことなく従ってくれた。それくらい2人の間は親密でかけがえのない存在となっていた。風竜となった今も戦場だけでなく荷運びのため世界中を飛び回る相棒として常に一緒にいる存在である。

「……どうしたの?アキオス?」

 そのアキオスが不意に体を起こすと空の一点を気にするようなそぶりを見せた。エミリオがその方向を確認したがエミリオの目にはまだ異変が見えていなかった。

「ちょっと……アキオス……!?」

 翼まで広げてすぐに飛び立てる体勢になったアキオスをエミリオが必死に落ち着かせようとしていた。しかしすぐにアキオスが何かを察知していたことが分かったようである。

「……あれって……魔界の部隊?」

 山間部の向こう側に展開していたものと思われる魔界の部隊がこちらに向けて接近しているのが判明した。しかも相手はみな空を飛んでいるようである。

「……お手柄よ、アキオス。これはすぐに報告ね!」

 アキオスの頭を軽くぽんと叩くと背中に飛び乗りすぐさまヘリオスと天使たちの下に合流した。

「エミリオ、どうした?」

「北東から敵影、魔界の飛行部隊よ」

「飛行部隊か……」

 ヘリオスたちもとりあえず一息はつけていたようであるが敵の接近の報を受けると渋い顔を見せたあたりまだまだ万全ではないことを表していた。

「それだけだといいけど……こっちに来てるってことはその動きを見てさらに敵が動いてくる可能性があるんじゃない?」

「……首都の守備隊まで動き出すとは思えんが……」

「別に全体で来るってわけじゃなくていくつかの部隊を動かしてくることくらいありそうでしょ?」

「……どうする?ここで迎え撃つか?それとも……」

「……ランディさんに相談ね」

 ここもエミリオがアキオスを飛ばして敷地内のランディに指示を仰ぎに向かった。

「ランディさん……!!」

 工場の敷地内を飛び回るエミリオであったが事務棟の中を探索しているランディの姿を見つけることは難しかった。

「……ランディさんの指示を仰いでる時間もなさそうね……」

 一通り敷地内を探しランディの姿が見当たらなかったところでエミリオは引き返そうとした。

「エミリオさん……?」

 そこに事務棟の窓からフィアが顔を出して声をかけてきた。

「ランディさんいる?魔界の飛行部隊が接近中なの」

「飛行部隊ですか……?」

「それと一緒に他の部隊まで接近してくる可能性があるの。それをここまで引っ張って迎撃すべきかそれとも……」

「エミリオ!首都防衛隊のうちの騎馬隊が動いた!こっちに来るぞ!」

 エミリオがフィアに状況を伝えていたところでランディが事務棟の奥から駆け出してきていた。ランディは事務棟の奥の部屋の窓から首都防衛隊に動きがあったことを察知しすぐに対策を練ろうとしていたところであった。

「そっちだけじゃなくて山の向こうから飛行部隊も来てるわ」

「……ちょっと待て、それは本当か!?」

 ランディは大分慌てていた様子だったがエミリオの報告を聞くとさらに焦りの色が濃くなったような気がした。

「ここで迎え撃つの?それとも来る前に叩くの?」

「……ファラから聞いた。魔界十二使徒のゲルデシアとゾルホス……恐らく接近している騎馬隊を率いているのがゾルホス、飛行部隊を率いているのがゲルデシアだ。魔界十二使徒が2人合流すると流石にマズイ、こちらから仕掛けて何としても叩け!」

「分かったわ、私がそのゲルデシアを叩いてヘリオスにはゾルホスってのを叩かせに行かせるわ」

「……こっちもすぐに応援を出すようにする。それまで頼むよ」

「了解、任せて!」

 指示を受けたエミリオはすぐにヘリオスと天使たちのところに戻っていった。

「ヘリオス、仕事よ!」

「……打って出るということか?」

「そうよ、騎馬隊のリーダーが魔界十二使徒のゾルホスってやつみたいだから……気をつけてね」

「じゃあお前のとこも……」

「そうよ、空対空の戦いになるってことね。大丈夫よ」

 エミリオの表情は自信に満ち溢れていた。空神の名を冠する者として空での戦いでは絶対の自信を持っていた。たとえ魔界十二使徒と呼ばれる強敵であってもその自身に揺らぎがなかった。

「……ま、俺も騎神だ。これまで神界八将が4人戦って4人とも勝ってきた以上俺も負けるわけには行かん」

 ヘリオスも神界八将の騎神としての名に恥じない戦いぶりをする準備を整えたようだ。

「ヴァレリア、あなたたちは無理しないで」

「……そうは行くまい。相手は単独ではないのだ……敵の数を減らさねばまともに大将とは戦わせてもらえんぞ」

「でもまだ……」

「万全ではないと言いたいのだろう?それは貴女らもだ」

 ヴァレリアたちも2人のサポートのために出撃準備を整えていた。

「……ま、仕方ないわね。部隊編成はどうするの?」

「私が貴女の援護を、ラヴェンナがあちらの援護をそれぞれ部隊を半々に分けて行う」

「そう、じゃあよろしくね」

「ヘリオス殿、我ら天界部隊が援護を致します」

「……頼む」

「じゃあ……目標は魔界十二使徒2名の撃退と部隊の殲滅……」

「……出撃だ!」

 エミリオ、ヘリオス両名の号令で2人はそれぞれ天界の部隊を引き連れ2方向から迫る魔界十二使徒の部隊の殲滅へと向かっていった。



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