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ブログ開設3周年記念特別SS 魔界鎮圧作戦 ~Chapter12~

 
カチッ



 グレモルの前にあったこの部屋を守る重厚な扉の鍵がひとりでに開く音が聞こえた。

「……バレンシア、行け!」

「……はっ」

 鍵が開いただけではこの部屋には入れないことを知っていたグレモルはこのタイミングでバレンシアに出撃の指示を出した。その言葉と同時にバレンシアが転移魔法を発動し姿を消した。その少し後に部屋のドアが弾け飛んだ。

「……レゾーナ、扉の開け方というものを知ってるか?」

「仕方ないだろう?ノックしても開けてくれるつもりはなかったのだろうからな」

「ふ、確かにそうだな」

 扉の向こうでは精霊の姿になったレゾーナがグレモルを一点に睨みつけていた。言葉からはそこまで感じられなかったが、纏っていた空気からは尋常ならざる気配を感じ平静を装っていたグレモルも内心ではかなり気圧されていた。

「さて、グレモル……弁明の時間だ」

「そうだな、気の済むまで聞くといい」

「……まずは神界勢力を引きこんだのはお前で間違いないな?」

「……精霊界女王とコンタクトを取っていたのは間違いないが、このタイミングで神界勢力を魔界に攻め込ませたというわけではない」

「……ただいつ攻め込んできてもいいように準備は進めていたのだな?」

「ああ、でなければこんな大掛かりな部屋は用意できん」

「……では神界勢力にファラがいるようだが……」

「……そうだな、私が動かずして勝手にいろいろやってくれたからな。助かったよ」

 レゾーナが次々と繰り出す質問にグレモルは淡々と答えていく。

「……ひとまずお前が直接指示を出して神界勢力を呼び込んだ訳ではないのだな?」

「そういうことだ、もっともこの言葉を信用するなら……な」

「……この場で嘘をつく理由はないだろう?」

「……まぁそうだな」

「まだ聞きたいことがあれば話すぞ、これくらいで弁明しきれるようなものではないからな」

 レゾーナの追及が思いの外弱いことでグレモルも徐々にゆとりができ始めてきていた。

「……ずっと魔界転覆を画策していたのか?」

「……そうだな、魔界が道を誤っていることくらい君も分かっていることだろう?」

「……魔界では王が絶対だ。王がやることに従わねばならない」

「……そうだな、君はベルガザス様が絶対だったな」

「……やはりお前はまだ……」

 ベルガザスが自らの配下として当時の魔界でも相当腕利きの存在であった12名の魔界種を集めて作りだした魔界十二使徒。そのほとんどがベルガザスによって選び抜かれていたのだが、グレモルとバレンシアだけは多少違っていたのである。

「……あの時の恨み……と言いたいが……」

「……ん?」

「……我々の父親は……死んでいない」

「……生きていただと……!?」

 グレモルとバレンシアはかつて先代の魔界王とも言える魔界の管理人の子供にあたる存在であった。その先代の管理者は現魔界王ベルガザスの手によって葬られ、魔界王の地位を奪われてしまった。この際にベルガザスは確実に“殺した”と言っていたはずである。

「……今はここにはいないが……先代魔界王は魔界竜として影から魔界が本来あるべき姿を取り戻すために動いている」

「……魔界……竜?」

「レゾーナ、お前は魔界に課せられた本来の役割……知っているか?」

「…………」

「……これでも読むといい」

 グレモルは本棚にあった本を1冊出すとそれをレゾーナに向けて放り投げた。それをレゾーナはひょいと手に取り中を確認した。

「……世界の安定を司る四界の一、悪しき影響を持ち死した万物の魂が集う場所……」

「それくらいは当然知っているだろう?」

「……均衡を保つためには時として顕界における余剰な生命を刈り取ることも必要」

「あながち今の魔界がやっていることも間違ってはいない……そこは認めよう」

「…………」

 本を読み進めていたレゾーナの手がピタッと止まった。

「……そういうことか」

「理解頂けたか?」

「……そうだな、確かに今の魔界はそのことに対しては明らかに放棄しているようなものだ」

「その役割を果たしているのがその魔界竜だ。その役割を果たしていなければとうに神界からの最後通達が届いていただろう」

 レゾーナが見たページには四界として果たすべき使命についてが書かれていたようである。魔界はこれまで魔界として果たすべき使命についてのみ果たしてきていなかった。

「……ではその魔界竜は何故結果として魔界の暴走を黙認するような仕事をしてきたのだ?」

 しかしそれならばもっと早く神界からの制裁を与えさせた方がよかったようにも思える。

「……四界竜となった先代王が再び魔界王となることはできない。魔界を再建させるとして魔界を仕切れるような存在と魔界の民の意識を変えること。これが課題だった」

「……グレモル、お前が王を継げばよかっただろう?」

「……魔界竜はまだまだ力不足だと見たのだろう。まぁその判断は間違っていなかった」

「……もしかしてお前……」

「……精霊界女王は魔界をも仕切り魔界の民の負の意識を転換させる力を持っている」

「……精霊界女王……」

 グレモルは精霊界女王であるネレイスに魔界の運営と魔界の民の意識改革を託そうとしていた。そういった理由がありグレモルは神界勢力に加担をしていた。

「……それほどの人物なのだな?」

「……我々魔界が妨害工作を行ったのにもかかわらず精霊界女王……ネレイスは精霊界にかけられていた負の気の呪いを解いた……」

「力は本物……さらにはその実績に裏付けられた信頼……か」

「精霊界の英雄王……その噂はここ魔界にも十分届いている……」

「……一目見ておきたいものだな」

「……見ておくといい、君に負けない人気者だ」

「……楽しみだな」

 レゾーナは一瞬だけ表情を緩めてみせたが、またすぐに険しい表情に戻った。

「さて、お前の時間稼ぎには乗ってやった。そろそろいいだろう」

「ほう、お前も随分と律儀だな」

 これまでの話はほとんどが時間稼ぎだったことを当然レゾーナも把握していた。その中でレゾーナはこの部屋に仕掛けてあったグレモルを守る障壁を次々と解除していた。

「……バレンシアの姿がないからな、大方妹を逃がすためだったのだろう?」

「それはどうも」

 この間にもレゾーナはグレモルを守る障壁を1つ解除した。

「確かにバレンシアはもうここにはいない。レゾーナ、君が来ることを見越して先に避難させておいた」

「……神界勢力のところにか?」

「……ほう、何故そう思う?」

「バレンシアであれば魔界の部隊の一部を寝返らせることもできるだろう。戦力的にまだ不安の残る神界勢力にとっては……」

 その途中レゾーナはグレモルが転送装置のボタンに手を伸ばすのが見えた。その動きを止めようとレゾーナは咄嗟に自らの力を使った。この時には既にグレモルを守る障壁は全て解除していた……はずであった。しかしレゾーナの期待していたような状態にはならなかった。何かに弾かれたような甲高い音が部屋の中に響き渡り、グレモルは不敵な笑みを見せながら転送装置を起動し姿を消した。

「まさか……私の力の発動こそが今の……」

 グレモルを守る障壁は確かに全て解除していたが、しかし転送装置にかけられていたセーフティー機能をレゾーナは見落としていた。グレモルは最後にレゾーナの力が発動した際に自動で転送装置が起動する言うなれば罠を仕込んであったのである。

「……グレモル……やはり私では……」

 グレモルを取り逃がしたレゾーナは転送装置の画面をちらりと見た。その後ひとまず報告をしようと部屋を後にしようとしたところで慌ててもう一度転送装置の画面に出ていた座標軸を確認した。

「……グレモル……バレンシアを向かわせた場所……まさか……!」

 座標軸の頭にはNという記号がついていた。そしてこのNという記号が付く場所が先ほどグレモルに見せられた本の中にも書かれていたのである。

「……マズい……これはすぐに報告をしなければ……!」

 N――冥界であることを示すこの地に魔界十二使徒が入り込む……これが即ちどういうことかレゾーナでなくともすぐに分かることであった。





「……本体が動いたな……」

「……大丈夫かな……」

 ネレイスたちは湖の畔で身を隠しながら機会を窺っていた。首都防衛隊の一部が動き出したのが確認できたもののまだまだ突撃するには厳しい状況である。

「……ネレイス、どうする?」

「……もう少し待とう……せめてラヴィスたちが防衛隊との戦闘を開始したくらいでないと……」



「……チィ、すさまじいほどの数だな……」

 ラヴィスの目の前には無数の人形が浮かんでいた。ここの兵器工場の生産ラインでは様々なタイプの玩具のような人形が大量に作られていたのだが、ラヴィスたちが入ってきた瞬間に警備用の機械も含めて一斉に襲いかかってきていた。個々の能力は正規の魔界軍と比較して劣っていたもののその圧倒的な数に防戦一方であった。

「やっぱりまずは生産ラインを止めないといくらでも湧いて出そうですね……」

「ランディたちを頼るしかないのか……」

 そんなラヴィスたちのところにランディが駆け込んできていた。

「ランディ?どうした……?」

「時間的余裕がなくなった。魔界十二使徒の部隊が接近中で休憩中の天界部隊とエミリオ、ヘリオスを出さざるを得なくなった。それにこれ以上待たせるとネレイスたちが動けない……」

「……じゃあどうするんだ?」

「……誰かにここから敵が出ていかないように守ってもらう……。残りで首都の攻略とエミリオの援護に向かう」

 当初の予定であったこの工場の攻略を諦め一気に首都の攻略を目指すことにした。

「ラヴィス、君はルミナスとすぐに首都防衛隊の攻略を始めてくれ」

「……了解」

「……では私たちがここを守ります」

「リンデか……任せたよ」

「私もここで守備につきます……ランディさんとミディアさんでエミリオさんの救援に!」

「フィア……頼むよ」

「私たちはどうしましょう?」

「……ラヴィスたちと一緒に首都防衛隊の突破を目指してくれ」

「分かりました」

 ランディたちは素早く個々の役割を決めていった。そしてこの工場でリンデとフィアが守備に、ランディとミディアがエミリオの加勢に、リヴィエールら精霊界の部隊とラヴィス、ルミナスが首都守備隊の攻略にそれぞれ向かうことが決定した。

「よし、じゃあ……次の作戦開始!」

 そして各々自分の役割を果たすために行動を開始した。



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Author:ラヴィス
パソコン使えないくせにブログに手を出した愚か者。
……温かい目で見てもらえるとうれしいです。

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