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ブログ開設3周年記念特別SS 魔界鎮圧作戦 ~Chapter13~

「ヴァレリア、外野お願いできる?」

「任せろ」

 エミリオは魔界の飛行部隊との戦闘準備に入った。

「……あれがゲルデシアね」

 魔界の飛行部隊の中に一際目立つ大きな蒼いカラスのような鳥が混じっていた。魔界十二使徒の名に恥じない風格ある姿に独特の威圧感が備わっておりそれを見たアキオスも目つきを変えて低いうなり声をあげて威嚇を始めた。

「私は神界八将空神エミリオ。魔界十二使徒紫風のゲルデシア、私が相手になるわ!」

 そしてエミリオは挨拶代りに持っていた槍を思いっきり投げつけた。真っ直ぐゲルデシアを捉えていた槍であったがゲルデシアはひらりと身をかわしその槍を避けた。

「アキオス!」

 ゲルデシアは直後に大きな翼を広げた。翼についているゲルデシアの羽は1本1本が剣のように鋭く尖っており、はばたくたびにその羽を飛ばしてきている。その中をアキオスをかいくぐらせるようにして飛ばし距離を詰めていった。

「……はぁっ!」

 槍の射程に入ったところでエミリオは近接攻撃用の槍で狙ったが鋭い剣状の羽で簡単に防がれてしまった。羽は鋭いだけでなく強度も相当のものなのであろう。

「……この距離からじゃダメね……もっと近い距離からでないと……」

 一旦エミリオは距離をおき、先ほど投げた槍を回収した。その後宙返り飛行をし再びゲルデシアを正面に捉えたが、その周りにゲルデシアを隠すようにして配下の有翼生物系魔族が展開していた。

「天使たちも流石に捌ききれないみたいね……やるしかないかな!」

 エミリオは距離を詰めながら先に外野の掃除を始めていった。





「……ここまで攻め入るとはな、見事だ」

「……お前が威風のゾルホスか……」

「いかにも……魔界十二使徒威風のゾルホス……これ以上首都に近付かせるわけにはいかない」

「俺は神界八将騎神ヘリオス……ここを突破し首都攻略の足がかりとする」

 一方ヘリオスの方も魔界十二使徒の部隊と交戦を始めていた。ヘリオスの正面には水色の金属製の鎧を纏ったヘリオスの乗る愛騎フォルカークよりも1周りほど大きい軍馬のような姿の魔族が同じような姿の鉄馬隊を率いていた。

「ラヴェンナ、周りは頼むぞ。ただ……無理はしないでくれ」

「畏まりました。ただ……貴方も無理はいけませんよ?」

 ラヴェンナが指揮している部隊は主に後方支援向きの天使が多く、前線の戦闘をするには少々心許ない部分もあった。先ほどまでは柔らかそうな羽で作られた扇で鼓舞や支援をしていたラヴェンナも今は護身用と思われる長剣を抜いていた。

「……さて、ゾルホス。お前は物分かりがよさそうな顔をしている」

「……一騎打ちを所望しているのだな?いいだろう、受けて立とう……だが……そちらの手勢で魔界十二使徒直属部隊の相手が務まるのかな?」

「……これでも天界第7聖女と呼ばれています。慢心は隙を産みますよ」

「これは失礼……では見せてもらおう、天界聖女の実力を!」

 ゾルホスは首を動かすと味方を前へと動かしていった。そして自らは部隊の左側へと抜けていきヘリオスを招きこんでいる。そこにヘリオスは動きだしラヴェンナはやってくる鉄馬隊を迎え撃つ形をとった。

「……主武装はあの頭と足……それに尻尾の刃……といったところか」

 改めて槍を構えゾルホスと向き合ったヘリオスはまずはゾルホスの出方を窺っていた。ゾルホスの頭、足、そして尾にはナイフのような刃がついており、他には目立って武器になるようなものがないことからこれらを駆使した攻撃をしてくるであろうことが想像できた。

「足の刃は厄介かもしれんな……フォルカークの足元を狙った動きがあるだろうからな……」

 ヘリオスが乗るフォルカークにも立派な黄金の鎧をまとわせてあるため防御はしっかりとしているのだが、普通の騎馬であると足まで防具をつけることは重量の関係もありなかなかないことが多い。そう言った際に馬の脚を狙って攻撃をすることでバランスを崩させ騎手を落とすという戦い方ができることから真っ先に足の刃を警戒し出した。

「……来ないのならばこちらから行かせてもらおう!」

 様子を見続けているヘリオスに対しまずゾルホスは頭の刃を振り回し真空波を飛ばして攻撃してきた。それを槍を回転させること得防ぐ。

「ふんっ!」

 あくまでも守備的な姿勢を続けるヘリオスに対してゾルホスは一気に距離を詰めて頭の刃を振り回し接近戦を挑んできた。しかしその攻撃はどれも単調であり防ぐ分にはなんら問題ないものであった。

(攻めが甘い……攻撃を誘っているような感じだな……)

 明らかに攻撃を誘うような姿勢に少々気になりつつもゾルホスの攻撃の合間を縫ってゾルホスの体に一撃を見舞った。

「……っぐっ!」

 金属質の体に弾かれて大したダメージを与えられなかったが、ヘリオスにとって想定外だったのは攻撃をしたと同時に反射ダメージをもらったことであった。ゾルホスの強みは高い防御力とそれを生かした敵の攻撃のダメージを反射させる能力にあるようだ。

「……なるほど、厄介だな……」

「……迂闊な攻めは身を削るだけだ、だが大技を撃つ余裕は与えないぞ?」

「…………」

 迂闊な攻めができないヘリオスはしばらく守りに入った。





「……さぁ、どうします?」

「誰か突っ込める人いない?」

「……リンデさん、どっちかが突っ込めませんか?」

 魔界人形に囲まれた状態の双神リンデとフィアの3人はかなり追いつめられていた。魔界人形の圧倒的な数と多彩な攻撃にフィアは終始守りをせざるを得ない状況になり、リンデの攻撃では人形の生産速度に追い付かないようで倒しても倒しても敵が増え続けるいるような状況に陥っていた。

「身のこなしなら……私じゃない?」

「そうですね……動のリンデさん」

「では……一撃見舞って私が活路を開きます、そこから一気に!」

「了解!」

 状況を打破するためにまずはフィアが動いた。これまで防御に手いっぱいだったところを一瞬だけ攻勢に転じ、生産ライン奥に向かう通路に向かって一条の光を放ち魔界人形たちを撃ち抜いていった。その瞬間に赤い戦闘着を着た双神リンデの片割れ、動のリンデが駆け抜けていった。残ったもう片方の双神、静のリンデはフィアのサポートに入る形で守りについた。

「邪魔よ!邪魔邪魔っ!」

 生産ライン奥に切り込んでいく動のリンデは並居る魔界人形を得物の円月輪を振り回し次々と薙ぎ倒していった。

「まだまだ……!」

 守りを考えずただがむしゃらに工場奥を目指す動のリンデに様々な攻撃がふりかかり、当然全てを避けきれないリンデにも多少は当たってしまっていたが気にする素振りはなかった。

「フィアさん、私たちは……?」

「…………」

 そして残って魔界人形を捌いていたフィアと静のリンデであったが、静のリンデは先ほどからフィアの様子がおかしいことに気付いていた。

「……フィアさん」

「……分かってますね?」

「……貴女という人は……全く……」

 フィアにはまだまだ余力が残っていた。その気になればこの工場を吹き飛ばせるほどの力はまだ残していたのである。爆発物のある危険はあるものの最終手段として工場の爆破というものが視野にも入りつつあるこの状態でフィアは自らが爆発物として、もしくは爆発物への点火剤として十分に機能する力を持っていた。動のリンデが生産ラインを止めに突っ込んだのも自分が止めれる止めれないにかかわらず最終的にはフィアが決着をつけてくれることを分かっていたからであった。そしてもちろん残った静のリンデもフィアがそういう存在であることは重々承知していた。

「……この工場が爆発したとなれば少なからず敵も注意が向くでしょうしね……ネレイスさんたちが動くきっかけにもなるでしょう」

「……リンデさん……」

「……さ、動のリンデさんも大分消耗しています……そろそろ動いた方がいいのではないですか?」

「分かりました……」

 冷静な静のリンデに促されるような形でフィアは背中の翼を一際強く輝かせた。それを見て静のリンデは戦棍を振り回しながら工場の入り口側の人形を打ち砕いていった。

「はっ!」

 そしてリンデが放った突きにより工場入口のシャッターを叩き落とした。

「……準備完了よ、護衛はいる?」

「……いなくてもよかったのですけどね」

「もう一人の私がここで成すべきことをしようとしてるのにもう一人の私が逃げるわけにもいかないじゃない」

 そしてすぐにフィアの隣まで戻ってくると巨大な魔法陣を展開させ詠唱を始めるフィアに迫る敵を打ち払い続けていった。魔法陣はフィアの詠唱が進んでいくごとに内側に次々と複雑な文様が浮かび始めていった。フィアの輝きはどんどん増していきそれと同時にフィアの周辺の空気はびりびり張りつめていった。

「……みなさん、後はお任せしますよ」

 天界言語で詠唱を続けていたフィアの最後の詠唱を聞き届けて静のリンデがそう言い放った次の瞬間にフィアの体から光の魔力を濃縮した波動が放たれていった。フィアは自身に残っていた魔力を全て使いきって周囲一帯を光に包み、消し去っていく。その圧倒的な力はまたたく間に工場の生産ライン中に広がっていった。やがて生産ライン内に膨大な量の魔力が蓄積し、急激な魔力濃度の上昇に耐えられなくなることで魔力は一気に拡散をする。その結果工場内の窓を吹き飛ばすレベルでの爆発を誘発したのであった。生産ライン内にいた存在はこれにより“全て”一掃されたのであった。





「……工場の窓が吹っ飛んだ!誰かやらかしたな」

 この爆発は当然湖のほとりで様子を見ていたネレイスたちにも見えていた。どういう経緯でこういった爆発が起きたのかまでは分からなかったもののこの爆発が起きてから首都防衛隊がざわめきだしている様子がうかがえた。

「……やれやれ、あーいったことをするのは大体予想つくんだがな」

「……そっか……」

 拡散した魔力の波動の一部を感じた将軍とネレイスは誰が起こしたものかはすぐに想像がついたようである。将軍は分かっていたこととしてさほど気にも留めていないようであったがネレイスは大事な仲間を失ったことにまだ気持ちの整理をつけきれていないようであった。

「……行こう、気を取られてる間に一気に!」

「……よし、じゃあ行くぞ……」

 少し時間を要したがすぐに気持ちの整理をつけ仲間がもたらしたチャンスを逃さまいとすぐに突撃を決意、すぐさま風の精霊の加護を全体にかけ直すと飛び立っていった。

「ネレイス様、そのまま真っ直ぐ湖を抜けて城壁を超えれば宮殿を横から突ける」

「了解、一気に行くよ!」

 水面を斬るようにして飛んでいくネレイスたちの動きを首都防衛隊が察知するころにはもう城壁に接近し飛び越えるところであった。魔界の守備隊はそこでさらに動揺を誘われて陣形を崩すことになってしまった。

「……まずは城壁突破の奇襲は成功だね」

 首都内部は非常に区画整備もされ整然とした街並みが広がっていた。ネレイスも過去に数回極秘にこの魔界首都を訪れていたことがあったのだが、上空から眺めるのは当然初めてのことであり改めて魔界首都の大きさとその繁栄ぶりを感じていた。

「あれは……」

 そしてその魔界首都では随所でファラも予期していなかった小競り合いのようなものが起こっていた。首都内部も完全に魔界正規軍に制圧されており何らかの妨害を受けるものだと覚悟していたのだが、実際は魔界の部隊内で内乱のようなものが起きており魔界の正規軍はその鎮圧のために手を焼いているようであった。

「……ファラ、何が起きてるの?」

「……あれは……そういうことか」

 一番激しく戦闘を行っていた反乱部隊の装備を見たファラはそれが魔界十二使徒直属部隊のものであることが分かった。

「バレンシアの部隊だ……機を見て騒ぎを起こして魔界軍を混乱させているんだろうな……それに呼応した現魔界王に反発する奴らが一斉に蜂起したってとこだろう……」

「……バレンシアが?」

「……ああ、それに首都にもこれだけの勢力で現魔界王に反発してるってことは……」

「……あたしを受け入れてくれるために……立ち上がってくれたってことだね」

「そういうことだ……」

 魔界を極秘に訪れた際にも現魔界王に反発し、ネレイスのような考えや理想を抱いている魔界の民は少なくないことも耳にしていたが魔界の正規軍を混乱させられるほどの勢力を持つほどまでになっていたとはネレイスも思いもしなかった。

「…………」

「……期待されてるんだ、その期待にしっかり応えてやれよ」

「……そうだね」

 首都上空を進むネレイスの姿を見た反乱軍の部隊から歓声が上がり始めていた。魔界の改革を成し遂げてくれるであろう存在のネレイスの登場に反乱軍の指揮はさらに高まっているようである。その歓声に後押しをされながらついにネレイスは魔界宮殿にまでたどり着いた。

「……やっとここまで……」

「……ちょっと待った!」

 宮殿まであと少しのところまで来たところでファラはネレイスを急に呼びとめた。ネレイスもすぐに反応して減速し停止した。

「ファラ、どうしたの?」

「……ミディア……だっけか、うちの重装騎士」

「え?……そうだけど……」

「……そんな感じの十二使徒が結界を張ってる……そいつをぶっ飛ばさないと宮殿内には入れないようにしてある」

 ぱっと見ただけでは何もないように見えるのだがファラは気配だけで結界の存在とそれを操る十二使徒の存在を察知していた。

「……じゃあ将軍様に……」

「お、承知したぜ。さっと蹴散らしてくるぜ」

 ネレイスは後からついてきた将軍に十二使徒討伐を依頼しようとした。

「……待て、そいつの相手は……オレがする」

 そこにファラが割って入ってきた。ファラがこうして自分から進んで戦闘に立候補することは非常に稀なことであった。

「どうしたんだよ、ファラ」

「……まぁあれだ“因縁の相手”ってやつだよ」

「“因縁の相手”?」

「ああそうだ、守勢のコーネフ……オレが随分昔に組んでたヤドカリ坊主だ」

「……なるほど、かつて組んでた相方と決着をつけようってことか。ならいいじゃねぇか、やってこいよ!」

 ファラがここまではっきりと自己主張をしていることを邪魔するような野暮なことはしまいと将軍はすぐにファラに仕事を譲った。

「んじゃ、ちょっくらやってくるぜ」

 そしてファラは宮殿の正門の方へと降り立っていった。

「……よっぽど戦いたかったんだな、あいつ」

「そうだね、あんなファラ初めて見たよ」

 やる気満々なファラの後ろ姿を2人は静かに見送りながら自分たちも極力目立つのを避けるために市街地へと降り立っていった。



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