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ブログ開設3周年記念特別SS 魔界鎮圧作戦 ~Chapter15~

「これで邪魔は……ハァハァ……」

 ゲルデシアの部隊と戦闘を続けていたエミリオはようやくゲルデシア本体との戦闘に集中できそうであった。群がるコウモリやカラスといった相手を片っ端から片付けていったことでエミリオを避け大人しくヴァレリア率いる天界部隊に標的を変えていた。

「……アキオス、貴方も大丈夫?」

 戦いっぱなしのエミリオは当然相当な疲れを抱えていたわけであるが、それと同時にエミリオを乗せ飛んでいたアキオスにも相当な疲労がたまっている様子であった。さらには何度かエミリオをかばうような動きを見せていたため直接受けた傷もアキオスの大きなダメージになっているはずであった。しかしエミリオの問いかけにアキオスは平気という風に頷いてゲルデシアに向かって飛んでいった。

「はぁぁぁっ!」

 その最中からエミリオは投げ槍を振り回しだし、ゲルデシアに狙いを定めていた。そのゲルデシアが息を吸うような仕草を見せた直後に超音波のようなものを発生させてきた。

「……きゃぁっ!?」

 その超音波は直接エミリオに対して影響を及ぼすことはなかった。しかし乗っていたアキオスはその超音波を受けてかなり嫌がった様子であり急に進路を変えて急旋回をしてしまった。槍を構えていたエミリオは急旋回されたことでバランスを崩してしまい結果振り落とされてしまった。

「……それでもっ!」

 しかしエミリオは空中ですぐに体勢を変えると構えていた槍を迷いなく投げつけた。槍の軌道はゲルデシアを捉えていたがゲルデシアはすぐに身を翻し槍の軌道から離れていった。

「アキオス!!」

 エミリオがそう叫ぶとその声に応えたアキオスがエミリオの投げた槍を長い尻尾を鞭のようにしならせてつかみ取るとゲルデシア目掛けて投げつけた。その槍は不意を突かれたゲルデシアの右翼をかすめて傷をつけた。その直後にアキオスは一気に高度を下げると地面に落下していくエミリオを地面すれすれで飛行しすくいあげた。

「よくやったわ、アキオス」

 アキオスの頭を軽く撫でるとエミリオは別の槍を構えなおしてアキオスの高度を上げさせた。ゲルデシアの右翼に傷がついたことでバランスも崩れ機動力も多少なりとも落ちているようであり、そろそろアキオスのスピードを生かせば一撃で決着がつけられそうなくらいにまで攻撃のチャンスが見えてきていた。

「待って、アキオス……!」

 一旦距離をつめていたエミリオであったがゲルデシア周辺の空気の流れが変わっていたことをいち早く察知していた。ただならぬ気配にエミリオは一旦アキオスを下げた。するとゲルデシアの周辺には4つの大きな紫色の竜巻ができ始めていた。

「……あれが“紫風”ってことかしら。向こうも簡単に決めさせてはくれなさそうね」

 ゲルデシアの周囲を守るように展開された紫色の竜巻はさらにゲルデシアの周りを回転しており近付くことができず、恐らくエミリオ得意の投擲でもゲルデシアを狙うことは不可能なように見えた。

「……ただこういうときは……」

 ただエミリオもすぐに活路は見出していた。竜巻で周囲を守っている時は総じて自身の真上と真下が弱点となっていることが多かった。今回も恐らくゲルデシアの真上さえ取れれば決めることができることだろう。

「アキオス、行けるね?」

 エミリオがアキオスを一撫でしアキオスが軽く頷いたのを確認するとアキオスを竜巻の回転方向に合わせるように旋回しながら上昇させていった。

「……っっ!」

 その最中竜巻から無数の刃状の羽が無差別に撒き散らされてきていた。そのあまりの数にエミリオもアキオスも回避できずに被弾し続けていたがそれでもアキオスが最小限の被弾に抑えるために飛び方を工夫し何とか竜巻の最上部にまで飛んでいった。

「……やっぱり……あそこからなら……!!」

 竜巻の最上部はやはりエミリオの見立て通り4つの竜巻の中心に渦を巻いていない部分が存在していた。その広さはアキオスが羽を畳んでも突っ込むには狭いくらいであったが槍を投げ込むには十分すぎるものであった。

「決めるわ……!」

 側面よりも薄くなった刃状の羽の弾幕をかいくぐるようにして飛んでいったところでエミリオは槍を持ってゲルデシアの真上に開いていた空間へと飛び込んでいった。槍を投げるよりも確実に相手を仕留めるために下したエミリオの決断であった。

「っっ!失敗だったかな……っ!」

 4つの竜巻の中心は竜巻の影響こそは受けなかったもののゲルデシアのばらまいていた羽が無数に飛び交っていてそこにも竜巻ができているような状態であり、生身で飛び込むには大分無理があった状況であった。しかしもう後戻りはできないのでエミリオは槍を振り回し最低限は弾き飛ばしながら落下していった。

「……はぁぁぁぁっ!」

 その中でちらりとゲルデシアの影が見えた。そこでエミリオは槍の回転を早めていき狙いを定めていく。

「……貫通!!」

 エミリオは落下の勢いを乗せた一撃をゲルデシアの頭目掛けて放った。その一撃は魔界の加護も易々と打ち破りぶち抜いていった。

「……っぐっ……ぁがぁっ……!」

 しかしエミリオはそのままゲルデシアの体に激突し、体を守っていた針状の毛が体に突き刺さってしまった。そしてそのまま一緒に落下していった。

「アキ……オ……ス……!」

 エミリオが苦しそうに絞り出した小さな声に反応したアキオスは上空から素早く錐揉み落下を始めて追いかけていったが、しかしそれでも落下していくエミリオの下に回り込むには時間的に間に合わないようであった。

「……お願い……」

 アキオスもそれを察したようであり考え方を変えたようである。目つきが鋭くなったアキオスは狙い澄ました様子でエミリオと頭がなくなったゲルデシアを捉えると大きな口を開け針状の毛が刺さったままのエミリオもろともかぶりついた。

「……っっ……よくやったわ……アキオス……」

 しっかり加減はしていたためアキオスの牙が多少食い込んではいたがこれによるエミリオへのダメージはほぼほぼなく救出することができた。エミリオとゲルデシアをくわえたアキオスはゆっくりと着地をし、今度はそっとエミリオを地面へと降ろした。

「……っっ……」

 針状の毛から体を引き抜くとかなりの量の血が溢れだしてきていた。そうでなくても刃状の羽によって全身は傷だらけでもあったためにそのダメージはエミリオの生命力的にももう限界であった。

「…………アキオス……ランディさんのとこ行って……休むって伝えて……」

 弱弱しいエミリオの声にしっかりと頷いたアキオスはエミリオを置いて兵器工場の方角に向かって飛び立っていった。

「私の役目は……果たしたわ……後は……お願い……」

 飛び去っていくアキオスを見送ったところでエミリオは静かに目を閉じた。





「……しぶといな、まだやれるか?」

「……自分の限界は把握している……これくらいならまだまだ……」

 ゾルホスの攻撃を捌くヘリオスの体はもう傷だらけであった。受けたダメージを一部反射させるゾルホスの能力により迂闊な攻撃はできないヘリオスであったがそれでも反射ダメージを恐れることなく攻撃を加えていた。

(これ以上は俺もラヴェンナももたんな……)

 ヘリオスが一瞬ちらりとラヴェンナの方を見たが、慣れない長剣に振り回されていたようなラヴェンナはやはり旗色が悪いようであった。これ以上持久戦をとっていても味方が不利にしかならないと判断したヘリオスは意を決したように持っていた槍を一度空へと掲げた。その槍の先には橙色の光が集まっていった。

「……その体で大技……相討ちでも狙うつもりか?」

「……そうだな、相討ちでもこの際構わんだろう……」

 橙色に輝く穂先をゾルホスに向けヘリオスは愛騎フォルカークを走らせた。

「その心意気……いいだろう。だが……させんぞ!」

 ゾルホスも体についていた刃をチェーンソーのように回転させ迎撃体勢を整えていた。

「……太陽の力……侮るなよ……?」

 ヘリオスはまず軽く一振りをすると頭についていた刃を簡単に打ち砕いていった。

「……何だ……今の一撃……」

「……反射ダメージがぬるい……本体でなければさほど効果はないようだな……」

「……く……」

 ゾルホスはすぐに尻尾の刃で薙ぎ払ってきた。ヘリオスはそれにすぐ対応しやはり一振りでその刃を叩き斬ってみせた。

「まだそんな力を……」

「足の刃は邪魔にはならない……これで決めるぞ……」

 一度距離を取ったヘリオスは再びフォルカークをゾルホスの方向を向かせた。ヘリオスが槍の柄でこつんとフォルカークの鎧を叩くとフォルカークが嘶きダッシュを始めた。それと同時にヘリオスは全体が橙色になった槍を振り回した。

「……決めさせんぞ……」

 ここでゾルホスは迎撃を諦め攻撃を受けきる構えに入った。意識を集中させ付近の魔界の気を束ねて防御力を上げることで凌ぎ切り、ヘリオスの体力を削る作戦に出たのであった。

「……輝け陽光!その光は我に暖かな恵みをもたらさん!」

 そのゾルホスにヘリオスは全力で槍を突き立てた。その一撃は防御の構えを取っていたゾルホスを易々と貫いていったがそれと同時にヘリオスにも同じように体を貫かれたような激痛が走った。

「ぐ……ぁぁぁっ……!!」

 その激痛をヘリオスは根性で耐え抜くと今度はヘリオスの体は暖かい橙色の光に包まれていき、全身の傷が少しずつ回復していった。

「……ギリギリ……だったな……」

 ヘリオスの放った一撃は“相手に与えたダメージ分をそのまま吸収し回復する”力を持っていた。これにより“受けたダメージを反射する”ゾルホスの効果を打ち消し耐え抜いたのであった。

「……ぐ……見事だ……」

「俺とお前では能力的に相性が悪かった、そういうことだ……」

 体を貫かれ灰燼に帰していくゾルホスにヘリオスはそう言い残しフォルカークを走らせラヴェンナの援護に向かっていった。

「……ベルガザス様と……この魔界に……幸あれ……!!」

 ゾルホスはそう言い残し鎧と砕けた刃だけを残して消えてなくなった。





「……この爆発……」

「……フィアさんですね」

 首都防衛部隊を叩こうと様子を見ていたラヴィスとルミナスの後ろで兵器工場の大爆発が起こっていた。その直後には視界の右端の方から橙色の光が上がるのが見えていた。各地でどんどん動きが強まっているようである。

「……ラヴィス様……」

「……行くか」

「はい……」

 これを機と見たラヴィスはすぐに動き出した。ルミナスの加護を受け光の翼を広げると湖面すれすれを這うようにして飛び立っていき、その後ろにルミナス、そして精霊界の部隊が続いていった。

「……ラヴィス様。守備隊の一部をヘリオスさんが相手にしているとはいえ……まだまだ数は多いです……」

「そうだな……」

「……何か考えがあるのですか?」

「……いいや」

「ではラヴィス様、私に……」

「…………」

 ルミナスはこの時既に覚悟を決めていた。ラヴィスはネレイスの契約者としてこれまで精霊界の仕事が多忙なネレイスを陰ながら支え続けてきており、その活躍ぶりにネレイスもとても感謝をしていた。ネレイスにとっても大事な支えとなってくれるであろうラヴィスをなんとしてもネレイスのところに送り届けてあげるのが自分の仕事だと決めていた。そのためには……

「……ラヴィス様?」

「……お前もやるんだな?」

「……私とラヴィス様……今のネレイスさんに必要なのはどっちなのか……それを考えれば……」

「……ルミナス……」

「お願いします……私に……」

 ラヴィスもルミナスが何をしたいのかは当然分かっていた。しかしその行為を自分ではなくネレイスが許してくれるのかどうか、それを心配していた。ネレイスの望まない形で加勢をすることになればネレイスにとってもラヴィスにとっても辛い結果になってしまう。

「…………」

「……あの……一体何を……?」

 後ろから事態が飲み込めていない様子のリヴィエールが声をかけてきた。ラヴィスはふとネレイスの仮装をしたリヴィエールが本物のネレイスに見えたような気がした。

「…………リヴィエール、お前らはここから真っ直ぐ攻め込め。ただ守りは堅いだろうから決して無理はせず危なくなったら下がれよ」

「……あ、はい。畏まりました」

「いいか?お前は今ネレイスの格好をしている。敵の攻撃も集中するだろうから本当に無理はするなよ?」

「はい、必ず……」

 ラヴィスはリヴィエールに念を押してそう言った。リヴィエールの姿を見てラヴィスの心も決まったようである。

「……我とルミナスは正面を突破していく。行くぞ、ルミナス」

「はい……」

 そしてラヴィスはルミナスを連れて湖面を出て首都正門を目指していった。

「……やれやれ」

「ラヴィス様……?」

「……ネレイスにとって一番大事なのは……あいつだろうよ」

「……リヴィエールですか?」

「……精霊界のやつだからな。なによりも無事であってもらいたいやつだろうからな……」

 ラヴィスは何よりリヴィエールを守るためにこの決断を下した。あれだけ念をおしておけば物分かりのよかったリヴィエールであれば素直に従ってくれるものだろうと思っていた。

「……さ、ラヴィス様……」

「……分かってる……行って来い」

「その前に……」

 そう言ってルミナスはラヴィスの前に降り立った。

「……最小限の火力で突破します。ですから残りはラヴィス様に……」

「……そうか……」

 ルミナスの言葉の意図を察したラヴィスはそっとルミナスの前に降り立つとルミナスから魔力を受け取っていった。同じ魔力の波長を持つ2人の間では魔力の融通が簡単に利くためにルミナスの持っていた膨大な魔力をラヴィスが受け取っていった。そしてルミナスは自分が使う分だけの魔力を残しラヴィスの傍を離れていった。

「……それだけでいいのか?」

「大丈夫です……あれくらいの数を消し飛ばすなら……これくらいで……」

 一気に魔力の量が減ったことでルミナスは一気に体調を崩したかのようにぐったりとしていた。しかしラヴィスの心配をよそにルミナスは光の翼を展開し首都正門に向かって一直線に飛び立っていった。その後ろを少し空けてラヴィスが追いかけていく。

「…………」

 ルミナスは飛行しながら静かに詠唱を始めた。ルミナスの体に残ったわずかな量の魔力をまとめていくとルミナスの体は次第に光に包まれていった。首都防衛隊もルミナスの接近に気付き迎撃体勢を整えようとしていたがルミナスの放つただならぬ気配に完全に押されているようであった。

「……道を……作ります……!」

 ルミナスは敵の迎撃が来ないことをいいことにあっさりと守備隊の懐に入り込み光の翼で一度その身を包みこんだ。

「……っっっ!!」

 そして再び翼を広げると同時に集束していた魔力を解放した。これと同じことを先ほど兵器工場でフィアがやっていた。自らの魔力をすべてつぎ込んだその一撃はフィアのものよりも範囲は狭かったものの威力は申し分ないものであり、周囲の守備隊をあっさりと吹き飛ばし消滅させていった。

「…………道は開けた、突っ込む……」

 光の波動が広がっていく中をラヴィスはそのまま突っ込んで行った。ルミナスからもらった魔力はそのままルミナスの加護として強烈な光の波動からも身を守ってくれるものとなっていた。光で真っ白となった空間をラヴィスは一気に駆け抜けていく。その途中ラヴィスの目に光の中に溶けていくルミナスの姿が映ってきた。

(ラヴィス様……ネレイスさんを……)

(……任せろ、ちゃんと2人分働いてくる)

 2人は互いに意志だけでそうやりとりを交わすとラヴィスはルミナスのいた場所を駆け抜けていった。ラヴィスが通り抜けていくとルミナスの姿は光の波動と共に消えていき、薄れゆく光を背にしてラヴィスはそのまま首都の市街地に突入していった。



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パソコン使えないくせにブログに手を出した愚か者。
……温かい目で見てもらえるとうれしいです。

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