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ブログ開設3周年記念特別SS 魔界鎮圧作戦 ~Chapter17~

「宮殿内に侵入を許しただぁ?おいおい……何をしてるんだよ……」

 魔界王ベルガザスに代わって指揮をとっていたアモンは悪態をついた。戦力的には十分であったはずの防衛隊があっさりと破られたのはあまりにも情けない。

「……陛下も戻ってこないしレゾーナもいない……全く……どいつもこいつも……」

「陛下!」

「陛下!」

 そこにレゾーナと魔界軍兵士が同時に飛び込んできた。双方ともにかなり慌てた様子である。

「レゾーナ様!お先に……」

「いや……アモン、陛下はどちらに行かれたのだ?」

 先に報告をしようとしたレゾーナであったがベルガザスの姿が見えないことに気付いた。

「……精霊界に行った」

「!!……止めなかったのか!?」

「……止めて聞くような方ではないだろ?」

「……こんな時に……」

 レゾーナは頭を抱えた。緊急事態ともいえるこの時にベルガザスは独断で勝手に動いていて不在である。しかも向かった先は精霊界。精霊界女王が無策で精霊界を空けているはずがないというのに強引に攻め込めばどうなるのか……

「……で、レゾーナ。お前はどこに行ってたんだ?そんな姿にまでなって……」

 精霊化したレゾーナを見るのはアモンも滅多にないことであった。

「……バレンシアとグレモルを追った……完全にグレモルにはめられた……」

「……やっぱりあいつの仕業か……」

「……冥界に逃げ込んだ。狙いは……冥界勢力を神界勢力に加担させるため」

「……おいおい……冥界まで動かしたのか……」

 レゾーナのその報告に同時にやってきた魔界兵もびっくりした様子であった。

「……アモン様、レゾーナ様……その冥界勢力がもう既に各地の部隊を攻撃し始め守備隊への加勢を邪魔していまして……」

「……ち……冥界の奴らはタチが悪い……」

「……宮殿内に入り込んだ敵はもう宮殿内に残った戦力で捌くしかないだろう……」

「結局オレも戦わなきゃいけねぇってことかよ……」

 少々不満げな表情を見せたアモンであったが戦う気は満々のようであった。

「……ところで敵の数は?」

「……3人と聞いています」

「……3人で何が……と言いたいがそれでここまで来てるんだもんなぁ」

「1人は精霊界女王ネレイス……そしてもう1人が将軍と呼ばれている刀の使い手らしい……あのファラを使役しているような動きがあったとの報告も上がっている……」

「……で、あと1人がファラ……」

「いや……それが残りの1人は見慣れん男のようだ……これまで戦いもせず全くこの男に対する情報がない……」

「……秘密兵器ってことか?」

「……不気味ではあるが……腕利きの男とは思えない……」

「……だがお前の相手ではないだろう?」

「だといいんだがな……」

 そこに玉座のドアがゆっくりと開けられる音が聞こえた。

「……おのれ……おのれぇ……」

「……!!陛下、その体……!!」

 入ってきたのはボロボロになった魔界王ベルガザスの姿であった。

「……精霊界の亡霊め……よくも……」

「……忠告しましたよね……陛下」

「……あれほどの……力が……精霊界に残っていただと……」

 “精霊界の亡霊”と厄災竜アドヴェルサーの前に惨敗したベルガザスはボロボロの体のままその場に座り込んだ。

「……陛下、このような時に申し訳ないのですが……」

「……敵が来たのだろう?……お前らで何とかしろ」

「……はっ、お任せ下さい」

 そう言ってレゾーナは玉座の間をあとにした。

「アモン、お前も行け……」

「……はっ」

 ベルガザスの声に押されてアモンも玉座の間から出ていった。

「……チッ……あんなボロボロの体で偉そうな口を……」

 玉座の間を出ていったアモンはすぐに悪態をついた。

「……アモン、落ち着け。言いたいことは分かるが……」

 そのアモンを先に玉座の間を出たレゾーナが諌めた。

「魔界王は絶対……だろ?……お前はよく我慢できるよな」

「…………」

「……いや、お前に聞く話ではなかったな……まぁ仕方ない、侵入者は蹴散らすとしようか」

 あくまでも魔界王に従順なレゾーナに気になる部分はあったが、すぐにアモンは獣の姿へと変え一足先に迎撃に向かっていった。

「……精霊界女王……か……」

 その後をレゾーナはゆっくりと続いていった。



「……小競り合いが起きてる……内乱か?」

 首都を駆け抜けていくラヴィスを塞ぐ敵はいなかった。首都ではバレンシア直属の部隊を筆頭とした反体制派が内乱を起こし混乱状態となっていた。守備隊は内乱の鎮圧に手一杯の様子でありラヴィスの相手ができるものは誰一人いなかったのである。

「……この様子だと既にネレイスたちは突っ込んだ後だな……守備隊の士気が明らかに低い」

 戦力的には守備隊が有利なはずではあるのだが反体制派の勢いを前に完全に押されていた。

「……このまま加勢ができればいいんだが……」

 宮殿に近付くにつれて守備隊の数は徐々に増え始めていた。しかしラヴィスの姿を見ても自分から仕掛けてこようとはしなかった。

「……すっかり戦意なくしてる……指揮官もいないようだしな……それか……」

 先ほどからラヴィスを見る敵の目が怯えているような感じがしていた。というのもルミナスの魔力を大量に受け取ったことによりラヴィスの周りには膨大な光の魔力が渦巻くようになっていた。そのただならぬ気配が魔界軍を慄かせるには十分であった。

「どちらにせよ好都合だな……」

 光の翼を広げ突き進むラヴィスはやがて簡単に宮殿付近までやってきていた。宮殿付近の守備隊はすでにかなりが倒されているようであり、また守備隊というわりには首都方面ではなく宮殿方面に注意が向いている様子であった。

「……ネレイスたちはもう宮殿に侵入してるか……」

 ここでようやく守備隊がラヴィスの存在に気付いたようである。あわててラヴィスに対して武器を構え始めているがどうしても宮殿側の方も気になっている様子であり、ラヴィスに対して集中しきれていないようだ。

「……そんなんじゃ我の相手は務まらん……悪いが先を急がせてもらうぞ」

 ラヴィスはルミナスから譲り受けた光気を軽く放った。それは守備隊の目の前で弾けて閃光を発し、一瞬目をくらませた。その間にラヴィスは光の翼で飛び越えていった。

「……ん……あいつは……」

 ラヴィスの視線の先で守備隊をなぎ倒していく赤い影が見えた。その姿はラヴィスも見覚えがない。

「……反体制派の筆頭か……?」

 そんなことを言っている間にラヴィスに向かっても斬撃が飛んできていた。視界に入り自分も敵と見られてしまったのだろう。

「おいおい、見境なしにぶん回してるんじゃねぇぞ!」

 それを軽くはねのけながら赤い影の隣へと降り立った。

「わりぃわりぃ、反射的に手が出ちまった」

「ん?その声……お前ファラか?」

 聞きなれた声に振り返ると見たこともない立派な姿となっていたファラの姿があった。

「ヘッ、これでも元魔界十二使徒だからな。これくらいの姿になれて当然だ」

「ここの敵はお前に任せていいんだな?」

「ああ、任せろ。ネレイス様たちはもう中に入っていったから早く援護に行ってやれ」

「助かる」

 ファラが宮殿内の方向へ首を動かし行けという合図を送った。それを受けたラヴィスは迷わず中へと進んで行った。

「……この様子じゃ援護はもうなさそうだな……ま、将軍にラヴィスがいれば心配ないか」

 その様子を一瞬ちらりと見たファラはすぐに敵の方を見据えた。敵の能力自体は大したことはないとはいえ圧倒的な数がいる。ファラも無理に殲滅を考えられる状況ではなかった。

「さぁ来いよ。魔界正規兵の力見せてみろよ!」

 ただ宮殿入口に陣取ったファラはここを塞げば宮殿内に敵を入れることはない。ラヴィスも加勢に来たことで宮殿内からファラの背後を突かれる心配も少なくなり、守るだけならばこれで盤石の大勢である。この状態でファラは迫る敵を迎え撃っていった。





「……道を開けろっ!」

「邪魔しないでっ!」

 宮殿内でも魔界正規兵が待機をしていたがそれをあっという間に将軍とネレイスは蹴散らしていった。宮殿内の間取りは正直詳しくはなかったネレイスだったが、宮殿内から感じるただならぬ気配が恐らく魔界王のものだとみて突き進んでいた。

「……ネレイス、大丈夫か?」

「負の気のこと?……まだまだ平気だよ」

 将軍の心配にネレイスはそう答えていたが正直かなり厳しい状態まで来ていた。宮殿内に入ってから建物内だからという理由だけではなく回避行動にどことなく調子の悪さが現れてきており、体の限界は近付いてきていた。

「……相手にするの魔界王だけじゃねぇだろ?」

「……そうだね……でも……レゾーナと戦わなくて済むのは大きいかな」

「クロノスの出番か?」

「そそ、レゾーナの相手お願いね~」

「……いや……どんなヤツか知らないけどオレじゃ勝てないって」

 これまでクロノスは一切戦闘に参加させてこなかった。“避神”という切り札をできる限り見せないでここまで来れたことはネレイスにとってはかなり有利であった。

「大丈夫、レゾーナと相手してくれるだけでいいから。勝ってとは言わないからさ」

「……足止めくらいはできるだろ?」

「……ハァ……」

 ネレイスは一帯の敵を殲滅し終えて通路の角を曲がろうとした。

「……わわわっ!!」

 そのネレイスが慌てて飛びのいてきた。その直後に角の壁に青い光を放つ大きな剣が突き刺さっていった。

「あっぶな……何……これ……」

 刺さった剣はまた何かに引っ張られるようにして抜き取られていった。

「……何だ?魔界十二使徒のお出ましか?」

「ううん、こんなのがいるなんて聞いてないよ……」

「じゃあ魔界王……」

「……それとも違う……」

 ネレイスが先ほどから感じていたただならぬ気配は恐らくこれだったのであろう。さっき飛んできた剣から感じた気配も、今まさにゆっくりと近付いてきている嫌な気配も同じ気配であった。

「……未知の相手ってことか?」

「……ファラも多分予期してなかった相手だと思う」

「やれやれ……」

 ネレイスと将軍は広い通路まで下がった。幸い後ろから敵が来る様子はなく、戦いやすい場所まで下がってくることができた。

「……来るよ!」

 ネレイスがそう言うと通路の角からただならぬ気配を放つ正体が姿を現した。

「……なに……あれ……」

「……人形か……?」

 ネレイスたちの前に姿を現したのは紺色に塗られたアタッシュケースの上に鎮座する闇色のドレスに身を包んだ小さな女性の姿をしたものであった。その大きさと姿からメイドを模した人形ということはすぐに分かったのだが放つ気配はただならぬものであり、それだけでなく人形の周囲にはソーサーに乗ったティーカップとティースプーンだけでなくさっきネレイスを襲った大きな剣が浮かんでおり、ネレイスたちを見る人形の顔は漆黒に染まりそこから深紅の瞳が妖しく輝いていたことからただの人形ではないことが明らかであった。

「……来るぞ!」

 その人形は無言で剣を飛ばしてきた。ネレイスと将軍はお互い横に避け、その後ろにいたクロノスは慌てて飛びのいた。地面に叩きつけられたその剣は床の石材を軽く粉砕しており、その破壊力は尋常なものではないことが分かった。

「……あからさまな殺戮人形だな……」

「……これが魔界人形ってやつなのかな……」

「魔界人形?」

「……人形って結構人間に対する負の感情を蓄積させやすいんだよ。それを利用して人間に復讐するための人形を生産してるって話を前にバレンシアから聞いた覚えがあるんだよ……」

「……なるほどな」

「……その大ボスみたいなのがこいつなのかも」

 魔界人形は無言のまま今度は闇の魔力を解放し放ってきていた。戦いやすい場所にまで下がったとはいえ今度の攻撃は回避しきれるものではなかった。そこでネレイスは左手に展開したエンジェルプライアで闇の魔力を受けきった。

「くぅぅぅ……なんて力……」

「ネレイス、下がれ。ここはオレが戦う」

「……ゴメンね、将軍様」

 ネレイスの消耗を避けるために将軍はネレイスの前へと立った。そのまま魔界人形に向けて斬撃を放った。しかしその攻撃は魔界の加護によって簡単に防がれてしまった。

「……ち……こいつも魔界の加護かよ……」

「……大丈夫?」

「……大丈夫だ。それよりネレイス、お前は別のルートがないか考えろ」

「……迂回していくってこと?」

「ああ、恐らくそうするしかない」

 ここを突破するよりも迂回した方がネレイスの消耗も抑えられ早く先へ行けると見た将軍はそう指示を出した。ネレイスも自身の状態からこれ以上余計な戦闘は避けたいところであった。

「……じゃあ……」

 任せるよ、と言おうとして振り返ったところで後ろの通路からまばゆい光が近付いてきているのが見えた。

「あれは……」

「ネレイス、加勢に来た」

「ラヴィス!……その光は……」

「……ルミナスだ」

「……そっか……」

 一気に首都を駆け抜けたラヴィスがネレイスのところへと追い付いてきた。見慣れない姿であるラヴィスを見てここまでに何があったのか大体見当はついたようである。

「ラヴィスか、オレはこいつを相手にするからお前はネレイスを守って別ルートから魔界王のとこへ向かえ!」

 将軍は魔界人形の剣を受け止めながらそう言った。

「……それは無理だ、ここに突っ込んできた時点で他の通路の守りはさらに固められている。強引に突っ込むのは得策ではない」

「……こいつをぶっ飛ばせと、そう言うのか」

「そいつは……」

「……魔界人形の大ボスだ」

「……なら我が相手になる」

 ラヴィスは光をまとった大きな剣を構えた。ルミナスの光の魔力を纏った大剣が放つ威圧感はネレイスであっても気圧されるほどのものであり、それが魔界の者相手となればなおさらであろう。

「……じゃあサクッと片付けてくれよ」

「任せろ」

 将軍が魔界人形の剣を弾き返すとすぐに下がり代わりにラヴィスが飛び込んでいった。

「……ルミナス、もらった力……存分に使わせてもらうぞ!」

 一気に魔界人形の懐に入り斬り払おうとしたが、その前に魔界人形は呪詛や怨嗟のような声をあげて騒ぎ出した。その波動でラヴィスの勢いを止め吹き飛ばした。

「……ちぃ……読まれてたか」

 ラヴィスは体勢を立て直し再び接近しようと試みるがすぐさま魔界人形は剣を飛ばして攻撃をしてきた。

「……厄介なやつだ……」

 ラヴィスが放つ強大な光の波動を嫌っているのか、魔界人形は先ほどまでよりも攻撃を激化させていった。そのためしばらくラヴィスは防戦を強いられることとなった。



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