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ブログ開設3周年記念特別SS 魔界鎮圧作戦 ~Chapter18~

「……どれだけ……いるんでしょうか……」

 ミディアの前に群がる敵の数は一向に減っていなかった。それどころか敵の数は徐々に増え続けていた。

「……この数捌くのは……」

 堅守堅牢を誇るミディアであるが当然いつまでも相手の攻撃を防ぎきれる訳ではない。これまで無数の敵の攻撃を防ぎきってきたミディアの体力はもう限界に近かった。

「…………」

 支配領域を発動したミディアはもう退くことができない。自分が退けば敵の前線も当然それに合わせて前進を許すことになり、そうすればランディとの約束も破ることになってしまう。もともと自分が無理を言って引き受けた役である以上途中でその役を放棄するわけにはいかなかった。

「……ランディさん……私は……」

 敵の猛攻を大盾で防ぎながらミディアは考えていた。ここにランディがいたら自分はいったい何を言われるのだろうか……。

「…………」

 当然ランディであればここは無理をせず下がれと言うに違いはないだろう。しかしこの状況で下がればこの数をそのままランディに相手させなくてはならなくなる。この数を倒しきることは到底不可能であり、ランディも撤退すればこの敵の狙いは宮殿に攻め入ったネレイスへと向かうことになる。そうなったらネレイスは魔界王と戦うこともままならなくなってしまうだろう。

「……やっぱり……私は……ここで……」

 時折混じって飛んでくる法撃攻撃を受けミディアはよろめいた。しかし足に力がもう入らず立っているのも厳しいくらいにまで消耗しながらも退くような姿勢は一切見せなかった。というよりもう退くための力も残っていなかった。

「……それが……私の……」

 ミディアは最期まで自らの使命を貫き通すため無数の相手を前に立ち続けた。乱れ飛ぶ攻撃をミディアは全て構えた盾で防ぎ続けていく。その体からは次第に橙色の光があふれ始めていた。

「……鎧神の……役割……」

 攻撃を盾で防ぎ続けていくごとにミディアの体からどんどんと橙色の光はあふれ出ていった。その光もやがて少なくなっていき、ついに最後の光がミディアの体からあふれ出ていった。

(ランディさん……約束守れなくて……ごめんなさい……)

 力を出し切ったミディアは構えた盾と一緒に前へと倒れ込んだ。無数の攻撃による圧力を受けながらも前へと倒れたのは最期まで絶対に退かない姿勢を貫いたからなのであろう。ミディアが倒れたことにより支配領域も解除され足止めをされていた魔界の部隊はすぐに首都の方角に向かって動き始めていた。一部が倒れたミディアに追い打ちをかけていたがもう既に息がないことが分かると無駄なことはやめもとの部隊へと戻っていった。やがて魔界の部隊が去り、動かないミディアの体が残されるとその体は鎧と共に光となって消えていった。





「…………」

「ランディ、どうかしたか?」

「いや、何でもないよ」

 1人戦線を下げたランディはヘリオスと合流していた。お互いに情報を交換し、その結果この首都近郊まで来た神界の部隊で残っているのはランディ、ミディア、ヘリオスだけであることを把握した。さらに首都正門付近は守備隊による防備の強化が行われていることから自分たちだけでは突破が不可能であることが分かっていた。そしてヘリオスは追撃に来た部隊と守備隊に合流をしようといている部隊を叩いていること、ランディは大数の魔界の軍勢をミディアに押しとどめさせてここまで来たということを共有した。

「……そうか?一瞬顔つきが変わったように見えたが」

「気のせいじゃないかい?」

 ヘリオスと共に遊撃活動をしていたランディであったが、一瞬嫌な空気がかすめていったような気がして表情を強張らせていた。ラヴィスとルミナスのような間柄ではないもののランディはミディアのことをいつも大切に思い続けていた。そのためミディアが倒れたということがなんとなく分かったような気がしていたのである。

(……死んでまで約束を守ろうとするなんて……本当に……)

 じきにここまでミディアが押しとどめていた部隊がやってくるだろう。これまでは多少余裕があったがこれからはそうもいかない。

「……ん……あれは……」

「……来ちゃったか……」

 ヘリオスの視線の先にはかなりの数の魔界の部隊が映っていた。

「……ランディ、まさかお前……」

「……お察しの通りさ、仕方ないね……」

 ヘリオスもここでミディアが倒れたのだということを把握したようである。

「……というかちょっと待て、あの数は何だ?」

「ミディアが全部進軍を止めていたからね……って言いたいところだけど僕もこんな数いるなんて想定してなかったな……」

 近付いてくる敵の数は到底1人では防ぎきれるようなものではなかった。これを相手にして長く防ぎ続けることができたのはミディアの鎧神としての力があったためなのであろう。

「……ランディ、これは……」

「……とてもじゃないが僕らで相手にしきれるものじゃない。ここは大人しく撤退するのが最良だと思うよ」

「……そうだな」

「……だけどね、ここで下がるわけにはいかないんだよ」

 無理をせず退く方が賢明なことくらいランディも分かっていた。しかし今ここで多少なりとも数を削ぐなり足止めするなりしなければ結果的に宮殿へと攻め込んだネレイスたちの大きな負担となりかねない。それにミディアはこの絶望的な数の敵を前にして一切退くことなく立ち向かっていた。それによってミディアは命を落とすこととなり、ここでランディが退けばその死が無駄になってしまいミディアに顔向けすることができなくなってしまう。体を張ったミディアのためにランディもこの場は退けないものとなっていた。

「ランディ……お前……」

「ヘリオス、君は下がっても構わないよ。流石に無謀な戦いだからね」

「……今更何を言う。俺もここで退いたらエミリオに笑われるさ」

 ヘリオスもランディからエミリオがやられたことを聞かされていた。エミリオは戦うときは常に最前線で体を張りめざましい活躍をしてみせていた。ヘリオスもそれに負けない活躍を見せてきたという自負はあったのだが、それでもエミリオであれば迷いなく戦うであろうこの状況で逃げだせばやはり顔向けができないであろう。

「……そうだね、お互い先に嫁を逝かせちゃったからね。男としてそれは……ね」

「……神界八将として戦ったんだ、俺らもその神界八将としての意地を示さなければな」

 覚悟を決めた2人はお互いに距離を取って魔界の大部隊の前へと立ちふさがった。それに魔界の部隊は気付いたようだが眼中にはないという風に通り過ぎようとしていた。

「まずは僕から行くよ……」

 まずはランディが構えた豪奢な槍を振り回していた。天槍グングニル――かつて創造主と呼ばれた存在が世界を創造する際に用いたと言われているこの槍にはその力の一端が宿っていると言われていた。ランディは天槍グングニルに見初められたことによりその力を行使することが可能になっていた。

「……天槍グングニル……世界創造の力の一端……見せつけてくれ!」

 ランディの周りにはただならぬ力が渦巻き始めていた。あまりの力に魔界の部隊もにわかに警戒し始めたようである。

「……凄いな……こんな力……普通は御せないだろうな……」

 やがて地響きが起こり始めると首都近辺の地形が大きく変化し始めていった。大地が割れて谷を作り、急斜面の山が築かれ首都への道のりはさらに困難となる地形へと変貌していき、その地殻変動に多くの魔界の軍勢を巻き込むことで数を減らしていった。

「……ヘリオス、後はやれるだけ頑張ってくれ」

「……ああ、行くぞ」

 急激な地殻変動が起きたことで魔界の部隊は大混乱に陥ったようである。その隙を逃さずヘリオスはできる限り数を減らしていこうと各個撃破を行っていった。

「……凄いな……これが……創造主の力……」

 その才を見初められたとは言うものの本来は創造主と呼ばれる膨大な力を持った者が扱うための力である。軽くその力を振りかざしただけでランディにも相当の反動が帰ってきていた。しかし普通に戦っても倒せる敵の数は限られている。折角だから使えるだけの力を使って派手にやるのがランディの選んだ道であった。

「……ミディア、もう少ししたら傍に行く……もう少し待っててくれ」

 役目を終えたランディはじっとヘリオスの戦いを見つめていた。地上部隊が首都へ向かうにはランディがとヘリオスがいるところを通るしか道はなく、その道をヘリオスが塞ぐようにして戦っている。これでヘリオスが倒されるまで敵の進軍を止めることができるが、もう戦う気力も残っていないランディはヘリオスが倒されればもう何もできない。ヘリオスが倒された瞬間がランディの最期の瞬間になるということである。その瞬間は刻一刻と迫ってきていた。





「……おらっ!」

 ラヴィスの振りかざした剣は人形を正確に捉えていた。しかし強力な魔界の加護を打ち破るまでには至らず、効果は限定的なものであった。

「……くっそ……ルミナスの魔力纏ってても破れないのかよ……」

 人形の動きにはもう目が慣れており、敵の攻撃をかいくぐり攻撃をするチャンスは増えていた。次第にラヴィスが押し気味に展開し始めていたが、魔界の加護の想像以上の堅さを前に苦戦は続いていた。

「ラヴィス、大丈夫?」

「悪い、格好つけて相手するとか言っておきながら……」

「仕方ないよ……」

 声をかけたネレイスはラヴィスの方を向いていなかった。いよいよ背後からちらほらと魔界の兵士が姿を見せ始めており、散発的ではあるがネレイスと将軍が戦闘を始める始末となっていた。

「…………」

 ラヴィスは今一度集中し直した。ルミナスから託された魔力を集めてラヴィスの握る大剣へと纏わせていく。

(ルミナス……)

 ルミナスは自分に相当量の魔力を遺してくれていたのにそれを扱いきれていないような気がしてラヴィスは申し訳ない気持ちでいっぱいであった。この場面、これだけの量の魔力を持ったルミナスがいればこの程度の魔界の加護は簡単に破れているはずである。

(……お前の魔力……我には……)

(……遠慮……しないでください)

(……!!)

 その時にルミナスが託した魔力にわずかに残っていたルミナスの思念がラヴィスに伝わってきた。

(……私の魔力がなくなるの……恐れてるだけ……)

(……そういうことか)

 ラヴィスはルミナスが託した魔力を大事に使おうとしていた。その気持ちがルミナスの魔力を扱ううえで大きな障害となっていたのである。魔界の加護を打ち破るにはルミナスの魔力を思いっきりぶつける必要があり、そのためには託された魔力を全部つぎ込む気持ちで臨まなくてはならない。

(……ルミナス……感謝する)

 ラヴィスの握る大剣にはこれまでにないほどの光が集まりその輝きは大きくなっていた。そして人形はその光を嫌うように暴れ始めた。

「……この一撃で……打ち破る!」

 人形が振り回す大剣を軽くあしらい、飛ばしてくるティーカップやスプーンを弾き飛ばしながら距離を詰めていった。

「おらっ!!」

 そしてラヴィスは光り輝く大剣で人形を両断した。これまで何度も弾かれてきた魔界の加護であったが、今回は人形全体にルミナスの魔力が生み出した激しい光に包まれ、その光は魔界の加護を打ち払っていった。強力な光の魔力に包まれ人形は痺れてしまったように動かなくなってしまっていた。

「決まりだっ!」

 その直後にラヴィスは大剣を真横に振り抜くとその一撃は人形の体の中心を正確に捉えた。その体は非常に頑丈な素材で作られていたのか、両断することはできなかったものの壁に向かって吹き飛ばすことはでき、そのまま人形は思いっきり宮殿内の壁に叩きつけられた。

「オマケっ!」

 さらに真横に振り抜いた勢いを利用しその場で回転しもう一度真横に振り抜いた。今度は人形が鎮座していたアタッシュケースを捉えると人形目掛けて思いっきり吹き飛んでいき、壁に激突した人形に勢いよくぶつかっていった。この連続攻撃が効いたのか人形は地面に転がると動きを止め、人形の周りを浮遊していたティーセットや大剣も地面に落ちて転がった。

「……やれやれ、やっと片付いたか……」

「お疲れ、ラヴィス」

 ラヴィスはルミナスから託された魔力を使い切りもとの姿へと戻っていた。

「……しっかし……こいつのこの剣、立派だよな……」

「んー?なんかこんな怖そうな人形が使ってる剣にしてはシンプルでなんか似つかわしくないよね」

 ラヴィスは先ほどまで人形が遣っていた大剣に目を移していた。ほのかに青い光を放つこの大剣はシンプルなデザインでラヴィスが拾い上げると重量もほどよく、普通に扱うことができるようなものであった。

「……ま、戦利品としてもらってくか」

「大丈夫……?呪われたりするんじゃない?」

「ルミナスの魔力ぶつけたし大丈夫だろ、それよりネレイス、道はできたからお前は急げ!」

「あ……うん……」

 これでようやく障害は排除された。いい戦利品が手に入ってやや上機嫌となったラヴィスの横をネレイスは駆け抜けていく。

「さて、じゃあここはオレが……」

「いや、我が相手をしていく……この剣の使い心地を確かめたいからな」

「……随分気にいったんだな、その剣……まぁいいか、行くぞクロノス!」

「あ……待って!」

 さらにその後を追って将軍とクロノスが駆け抜けていった。

「……さて、んじゃ試し振りと行こうか!」

 そしてラヴィスは新たに手に入れた大剣を握りしめ、散見される敵兵の各個撃破に努めていった。



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Author:ラヴィス
パソコン使えないくせにブログに手を出した愚か者。
……温かい目で見てもらえるとうれしいです。

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