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ブログ開設3周年記念特別SS 魔界鎮圧作戦 ~Chapter19~

「来るぞ……」

「ああ、分かっている」

 大広間に陣取っていたレゾーナとアモンが感じていた精霊の力はどんどん大きくなっていた。

「……アモン」

「何だ?」

「……ネレイスはどういう者だ?」

「……どうした、今になってそんなことを」

「戦う前に相手のことを知るのは戦う上で重要なことだ」

 レゾーナはそう言ったもののその本心は違っていた。

「……オレもよく知らんよ」

「……精霊界を襲撃したときに手合わせしたんじゃなかったのか?」

「……お互いに牽制しあってただけだ……しっかり戦ったわけじゃない」

 魔界十二使徒内で唯一アモンだけが精霊界襲撃時に戦闘を行っていた。本人は牽制したと言っていたが実際は“相当強い”という印象を持っていた。銀狼となったアモンは“神速”の名を冠しているように魔界における素早さは随一であったのだが、その速さにネレイスは難なく対応してみせていたのである。

(……だが今度は魔界での戦いだ……地の利がある、負けるはずがない……)

 ネレイスと手合わせしたあの時は簡単にあしらわれてしまった。さらには無防備となっていた時を狙えば先に魔界王が簡単に退けられた“精霊界の亡霊”により自慢の牙をへし折られて散々な目にあったこの雪辱を果たさなくてはならない。

「……」

 レゾーナも口ではそういうアモンの本心は読めていた。精霊界再生を果たし精霊たちの圧倒的支持を得てここまで来たのだから当然圧倒的なまでの力を持っていて然るべきである。

「……レゾーナ」

「どうした、アモン」

「……ネレイスは……オレが殺る」

「……期待しているぞ」

 2人は不安であった。魔界の切り札とも言える存在であるレゾーナだが、その力はその特性上精霊界女王であるネレイスには通行しない可能性があった。さらに魔界王は精霊界で深手を負ったことにより未だ余力を残しているだろうネレイスの勢いを止めることができるかどうか心配であった。よって実質万全な状態でネレイスと戦い勝てる可能性が残っているのはアモンだけであり、アモンが破れるようなことがあれば魔界陥落はほぼ必定と言っても過言ではない。魔界を守る最後の砦のような立ち位置となってしまったアモンには相当の重圧がのしかかっていた。

「…………」

 そこに重い音を立てながら静かに大広間の扉が開かれた。

「……よく来たな」

「レゾーナ、それにアモンだね」

 精霊界の至宝を携えたネレイスがゆっくりと入ってきた。その後ろからまさに用心棒のような風貌をした将軍と魔界側には一切情報のないクロノスが続いて入ってきた。

「……ここまで来るとは大したものだ。それに……このような手勢で」

「……みんながあたしをここまで送るために体張ってくれたからね」

「……だが……これ以上先へは行かせられない……覚悟してもらおうか」

「……あたしは魔界王を倒さないといけないの。……行かせてもらうよ」

 ネレイスがそっと剣と盾を構えたところで一瞬ネレイスの体がぴかっと輝いた。その光が何を示しているのか分かったのはネレイスとレゾーナだけであった。

「アモン、因縁の相手だろう?相手は任せたぞ」

「ああ、構わん」

 念のためレゾーナはネレイスに自分の力を行使してみたものの予想通りネレイスには通用しなかった。それを判断しレゾーナはすぐにアモンに後を託した。

「……まずはアモンを倒してみなさい……それが終われば……」

「そうはいかないわ。レゾーナには相手にしてほしい子がいるの」

 背中を向けて奥へと下がろうとしたレゾーナにネレイスはそう言いながらクロノスの背中を押した。

「……いいだろう、相手になるぞ」

 レゾーナはクロノスの姿を一目見るなりそう簡単に言った。隠し玉とは言うものの今のクロノスからは何も力を感じなかったことから完全に甘く見ているようである。

「……じゃ、いつものようにお願いね~」

「……うぅ……本当に大丈夫なのか?」

「……絶対大丈夫。だから……頑張って」

 そう言ってネレイスはクロノスの頭をぽんぽんと叩いて送り出した。

「さて、じゃあオレは外野を相手にするとしようか」

 そして将軍は大広間の扉を開け放った。まだ敵がやってくる気配はなかったがじきにここにも敵が終結してくるだろう。ネレイスとアモンの戦闘を円滑に進めさせるのが将軍の役目であった。

「……さ、これで勝負できそうだね」

「そうだな……お前には借りがある」

「……“神速”があんなはずないもんね」

「……そうだな……魔界慣れしちまって外の世界じゃ調子悪かっただけだ」

 ネレイスの言葉は明らかに挑発の意味が込められており、アモンも一瞬反応してしまったがすぐに冷静になって切り返した。

「……こっちなら本調子で戦える。見ていろ、精霊界女王」

「魔界王を倒しに来たんだもん、あなたに負ける気はないからね」

 ネレイスが構えを取った瞬間に銀狼となったアモンが飛びかかっていった。






「……押され始めてるね」

 ヘリオスの戦況を見ていたランディはそうつぶやいた。ヘリオスの活躍ぶりは見事なものであった。ヘリオスは“陽光”の名を冠する自慢の槍の効果を存分に使い多少無理に攻撃をしてもそれにより受けた傷を回復させながら戦い続けることにより足止めと戦力ダウンを図るには十分すぎるほど戦っていた。しかしそれも体力的に厳しくなってきたのか動きは鈍り槍の輝きも薄くなってきていた。

「……これなら大丈夫かもね……」

 飛行できる敵の一部は地形を飛び越えてそのまま首都方面に向かっていったが、飛行生物は宮殿内での活動に制限がかかるため戦力としては落ちることから素通りさせてしまっても問題ないと考えていた。

「……ヘリオス、本当によく戦ってくれたね」

「……もう何体捌いたのか分からんくらいに戦った……そろそろ限界だ……」

 息も上がり苦しげなヘリオスに帝の集中攻撃が襲いかかった。それを何発も攻撃を喰らいながら捌いていく。

「陽光の力ももう使えない……手詰まりだ」

「……とりあえず言ってみるけど……下がるかい?」

「……答えが分かり切った質問をするとは……ランディらしくない」

「……はは、そうだよね」

 なんともない攻撃であっても今のヘリオスに回避する力はほとんどなかった。愛騎のフォルカークも馬鎧がはがれ体には傷が目立ち立っているのもつらそうな状態であった。しかしそれでも最期まで戦場に立ち続けることを選んでいた。

「……役目は十分に果たせたはずだ……エミリオも文句は言うまい……」

 フォルカークに当たった攻撃でついにフォルカークは膝を折るようにして崩れ落ちた。バランスを崩し落馬したヘリオスにもさらに攻撃が向けられていたがヘリオスは避けようとも防ごうともする様子はなかった。攻撃の受けざまにヘリオスは3体の敵をまとめて薙ぎ払っていった。そしてその敵と同時にその場に倒れ込んだ。最期の瞬間までヘリオスは戦い続けたのであった。

「…………」

 その場を見届けたランディは小さくため息をついた。また1人自分の前で仲間がいなくなった。

「……人を動かす立場って辛いなぁ……」

 そしてそうぼやいた。智神とうたわれ数々の戦いで勝ちにつながる策を講じ続けてきたランディであったが、SkyBlueにおける戦闘能力では決して高いものではなかった。そのため自分は後方から戦況を眺めることが多く、時には将軍よりも後ろに立つような布陣も少なくなかった。将軍がかつて率いていたSkyBlueの前進組織による不敗神話はもちろんランディが立てる策によるところも大きかったが、何より将軍やラヴィスを始めとした高い戦力を持つ優秀な戦い手に恵まれていたことも大きかった。

「……それを考えると……ネレイスも……」

 ネレイスは今回の魔界鎮圧作戦における総大将を務めており、これまでにSkyBlueのメンバーたちや天界、精霊界の援軍が戦い傷ついていくところを目の当たりにしてきただろう。人一倍仲間たちや精霊たちのためになろうと努力を続け、囮や殿を務めるなど危険な役割を率先してやるネレイスにとってもかなりつらいだろう。それでもネレイスは強い精神力で一切つらいような素振りを見せることはなかった。

「……僕もまだまだだね……」

 真に智神の名を冠する者であれば時には勝つために手段を選ばない非情な采配をしなくてはならないが、それがランディにはできなかった。自分が智神としていられるのも周りの力によるところが大きいと思っているからこそ味方を切り捨てるような采配をできれば取りたくはなかった。しかし結果として非情になれなかったランディはミディアもヘリオスもそして多くの仲間たちを失うこととなってしまっていた。

「…………ミディア、待っていてくれ」

 今も非情になれれば自分一人生きてのこのこ帰ることを選ぶだろう。しかし非情になれないランディにとってはここで退くことは論外であった。結果として他のみんなを死なせてしまった責任を取るかのようにここで死ぬことを選んだ。槍を握る手にはもう力が入らずろくに足止めをすることもできない。それでもランディにとってこれこそが自分の果たす最期の役目だというように敵の前へと立ちふさがった。

「……僕も……もうすぐ……」

 ヘリオスが大分減らしたとはいえまだまだ数の残る敵を前にランディはあっけなく打ち倒されてしまった。ようやく障害となった敵を排除し終わり魔界の部隊は予定よりも大幅に遅れて首都方面へと進軍を再開していった。



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