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ブログ開設3周年記念特別SS 魔界鎮圧作戦 ~Chapter21~

「……ここだね」

 アモンに言われたとおりに進んだ先には立派な大扉があった。アモンの言葉が正しければここに魔界王がいる。もちろん嘘の可能性はあるのだが、アモンの言葉の信憑性はここまでで十分確認されていた。

「……」

 ネレイスはゆっくりと大扉を開けた。その直後猛烈な負の気に襲われ膝をついた。

「……間違いないね……この感じ……絶対……」

 大扉は強力な負の気の圧力を受けていたこともあり非常に重かったが、それでも隙間を作り部屋の中へと入り込んだ。部屋に入ると大扉は負の気の圧力で勢いよく閉められた。

「……来たな……」

「……魔界王……もうおしまいよ」

「……精霊界の忌々しい小娘め……その体で我に立ち向かえるとでも……」

「……なぁに?随分とぼろぼろじゃない……そういうあなたこそあたしと戦えるの?」

「貴様……」

 ネレイスを睨みつけるベルガザスの鎧は剥がれ落ち、体はボロボロであった。精霊界でアドヴェルサーから受けたダメージはまだまだ全然回復していないようである。

「……あたしが無策で精霊界を空けるわけがないでしょ?部下に止められなかったの?」

「……ぐぬぬ……」

「この分なら楽勝ね」

「……甘く見るなよ小娘……この体でも……貴様をひねりつぶすことはできる!」

「……あたしが終わらせてあげる……魔界をあるべきに姿に戻すのが……あたしの仕事だから!」

 ネレイスが剣を構えたところでベルガザスはその巨体で押しつぶしにかかってきた。鈍重な動きであったためネレイスは悠々と避けられるものだと思っていた。

「……っっ!!」

 しかしベルガザスの体から発せられる強力な負の気の圧力に押されたのか思うように体が動かず、避けるのだけでも思いの外苦労したようである。

「……チィ……だが苦しそうだな……」

「……これくらい慣れてるよ」

 強大な負の気を抱えながら戦うことはネレイスもよく経験したことであった。感覚がやや鈍ることを計算して立ち回ればネレイスの技術力で十分にカバーをすることができた。

「だが……いつまでもつかな!」

「……っ……」

 しかしその技術力をねじ伏せるほどベルガザスの力はすさまじかった。アドヴェルサーによって体力も力も相当削られたようであるがそれでもなおネレイスを寄せ付けないほどのものは残っているようだ。

「……フン……避けてるだけでは話にならんぞ」

「……こんなにきっついとは思わなかったなぁ……」

 ネレイスも攻勢に移りたいところであったがこの強力な負の気のオーラが障壁となり近付くこともままならなかった。

「ふんっ!ぬぅんっ!」

「くっ……こんな圧力じゃ……やっぱり……」

「威勢がいいのは口だけだなぁ小娘ぇ!!」

「……っく……・ぁぁぁっ!」

 負の気の圧力で動きを制限されたネレイスはついにベルガザスの攻撃をかわしきれずに直撃をして吹き飛ばされた。

「ふん……口ほどにもない」

「……流石にもう限界かな……」

 壁に激突する前に受け身を取りなんとか激突は免れたが、負の気の圧力もまともに受けたこともありネレイスは一気に体力を削られていた。

「……話にならんな……」

「……そうね、これじゃあ話にならないよね」

 しかしまだまだネレイスには手があるようだった。左手に構えていた盾を背中に背負うと空いた左手を前へと翳した。するとその手には赤黒い気のようなものが集まっていった。

「……あんまりやりたくはなかったけどさ……やっぱりやらないと無理だよね……」

 赤黒い気はやがてネレイスの体全体を包んでいった。その赤黒い気は次第にネレイスの姿を変化させていく。

「……何をしている?」

「……アタシを負の気で押しつぶせると思ってるんだったら……大間違いだからね」

 姿を変えたネレイスの周囲にはベルガザスほどではないにしろ強力な負の気が渦巻いていた。紫の髪はより赤みを帯び、綺麗なエメラルドグリーンの瞳はルビーのように真っ赤に染まり、その姿は精霊から一気に悪魔へと変貌してしまった。

「……その姿で精霊界女王か、笑わせてくれる」

「……文句ある?もともとは精霊界の者も魔界の者も一緒なのよ?」

 負の気はネレイスの姿だけでなく声や立ち振る舞いをも変えてしまっていた。もはや別人と化してしまったネレイスではあるがその手に握られた精霊界の至宝エンジェルティアの輝きが衰えることはなかった。

「……これでアタシに負の気は効かないわ。ようやくまともな勝負にはなるんじゃない?」

「フン……負の気を止めたくらいで調子に乗るなよ……」

 負の気を纏ったネレイスは先ほどよりかはゆっくりした速度でベルガザスに接近していった。先ほどまで障壁のように立ちふさがっていたベルガザスの負の気も今ではもう全く意味のないものへと変わってしまっていた。

「ふんっ!」

「……遅すぎるわ」

 ベルガザスの豪快な攻撃をネレイスは最小限の動きで回避をしてみせた。巨体から放たれるその一撃は直撃すれば当然ひとたまりもないがその周囲にも強力な攻撃の余波が広がっていく。ネレイスはその余波までを避けようとはしていなかった。

「……その程度?」

 普通であれば吹き飛びそうなほどの衝撃を受けているはずのネレイスだが平然とした様子で剣を振り抜いた。その一撃は頑丈そうなベルガザスの皮膚を易々と切り裂いていった。

「ぬぅぅっ!」

「……本当貴方は愚かね……そんなボロボロじゃなければもっとマシにアタシと戦えたのに」

「……小娘……っ!」

「……全然動けてないじゃない」

 軽く怯んだ隙に今度はベルガザスの足元を狙って剣を振り抜いた。

「ぐぅぅ……!」

「図体がでかいっていいわね、適当に振っても当たるから」

 膝をついたベルガザスにネレイスはさらに追撃を加えた。それもあえて傷を浅くしてじわじわといたぶるようなものであった。

「……貴様……」

「ほらほら、アタシをひねりつぶしてみなさいよ、ほら!」

「……ぬぅん!」

「……貴方やる気あるの?」

 ベルガザスが大きく踏みならした地ならしにより飛び交う衝撃波をまともに受けながらもネレイスはわざと軽い攻撃を入れ続けていった。

「……うぉらっ!」

「……チッ……アタシが攻撃避けないのをいいことに……」

 しかし捨て身で攻撃を続けているネレイスもこれ以上攻撃をもらいたくないようでがむしゃらに攻撃をし始めたベルガザスになかなか攻撃を仕掛けにいけなくなったようである。

「ふんっ!」

「相変わらず動きは鈍重なくせに……」

 ベルガザスの主な攻撃は巨体を生かした体当たりや足踏み、そしてそれに伴って起こる衝撃波、そして大きな牙や角を振り回すものであり巨体故に攻撃範囲は広いもののいずれも単調なものであるため見切るのは簡単であった。そしてそれに伴う隙はいくらでもある。しかしネレイスはすぐに攻撃に移ろうとはしていなかった。

「……ちょこまかと!」

「!!……そういうのもできるじゃない」

 体の大きなベルガザスにしては素早い動きで突きを繰り出されネレイスの体勢が大きく崩された。

「これでも喰らえ……!」

 そこにベルガザスは紫色のブレスを吐きかけた。ネレイスも体勢が崩れた中でもうまく横へと避けていくが拡散していくブレスを完全にはかわすことはできなかった。

「……っぐっ……」

「当たればいい……貴様は今それを治す手立てはないはずだ」

 ベルガザスが使ったのは毒息であった。普通ならば負の気を吐きかけるところであったが今のネレイスに負の気は通用しない。しかし負の気を纏ったことによりネレイスはその最大の能力である“癒しの気”が効果を発揮しなくなってしまっていた。そのため今のネレイスにとってじわじわと命を削られていく毒は致命的な一撃であった。

「……なるほど……ちょっとは頭回るじゃない……」

「……このままお前が朽ち果てるまで見ているのもいいが……貴様には精霊界でやられた分をやり返さねば気が済まん……」

「……アタシにあたっても仕方ないじゃない……」

「……貴様をひねりつぶしてあの精霊界の亡霊だかいうふざけたヤツに目に物見せてやるんだ……」

 そこでベルガザスは大きく息を吸い込んだ。それを見てこれまで守りの姿勢を見せなかったネレイスは珍しく負の気を正面に集めて障壁を作り身を守った。そしてベルガザスは地を揺らし猛烈な衝撃波を発生させながら大音量で咆哮を放った。負の気の障壁によりしっかり身を守れたネレイスだが強力な圧力により壁際にまで押し込まれていた。

「……覇厳の咆哮……この力で……貴様をひねりつぶす!!」

 ベルガザスの体からは黒炎のオーラが発せられベルガザスの戦闘能力は格段に上昇していた。これまでよりも早い動きで牙で突き薙ぎ払ってきたがそれをネレイスは負の気の障壁でなんとか防ぎきった。

「…………」

 毒に蝕まれていくネレイスの体ではベルガザスの猛攻を捌ききることは不可能であった。しかしいつまでもベルガザスの攻撃を防いでいられるわけではない。

「…………」

 ネレイスは負の気の障壁の後ろで詠唱を続けていた。これまでまとっていた負の気を身を守る障壁に流すことで時間を稼ぎつつ精霊界言語で紡がれるその言葉は大きな力をネレイスへと授けていた。

「無駄な抵抗を……消え去れぇ!!」

 脆くなった負の気の障壁を打ち破ろうとベルガザスは勢いよく突進してきた。その一撃は易々と負の気の障壁を粉砕しそのまま後ろにいるネレイスを吹き飛ばそうという勢いで迫ってきていた。

「……精霊界砲ガラティーン……出力十分!発射っっ!!」

 障壁の向こうにいたネレイスの姿はもう先ほどまでの負の気を纏った姿ではなく最初に相対したいつものネレイスの姿に戻っていた。それだけでなく背中には大きな花弁のような翅が展開されており突進してきたベルガザスを体の前に集めた魔力を放つことによって迎え撃った。

「ぬぅぅ……このくらいぃぃ……!!」

「はぁぁぁぁっ!!」

 精霊界砲はベルガザスにも当然有効な一撃になるものであったがそれでもベルガザスの勢いはまだ残っていた。それでもネレイスの放った光砲は次第にその出力は上がっていき、次第にベルガザスを押し返しっていった。そして最終的にはネレイスにこれほどの魔力が残っていたとは到底思えないほどの威力にまで増大した一撃でベルガザスを打ち抜いていった。

「ぬぅぅ……ぐぅぅ……」

 しかしその圧倒的な力で魔界王の座に君臨しているベルガザスはまだしぶとく立ち上がっていた。しかし先ほどの咆哮によって纏っていた黒炎のオーラは消え去っていた。

「……まだだ……その一撃で勝った気になるなよ……!」

「……もちろん……今の一撃は決着をつけるための攻撃じゃない……貴方の厄介なオーラを消すためだったんだから」

 辺りを包んだ激しい光が晴れるとネレイスの姿はさらに変わっていた。

「……ぬ……貴様……その姿……!」

「……もしかして精霊界の亡霊って……こんな姿だったりした?」

 ネレイスの体は虹色の光に包まれていた。その姿はベルガザスがいいようにあしらわれ、屈辱を味わわされたあの精霊界の亡霊にとてもよく似ていたのである。少し違うところと言えば亡霊の方はその名の通り存在そのものが光でできたような実体のない姿であったのに対し、ネレイスは虹色の光の強さは亡霊のように強くはないもののしっかりと実体のある存在としてその圧力をじかに感じることができていた。

「……好都合だ……これをひねりつぶせば……!」

 再び正の気を放つようになったネレイスに魔界王はこれまで抑えていた負の気を撒き散らしはじめた。

「……悪いけど……そんな負の気じゃ……止められないからっ!」

 しかし今のネレイスはベルガザスの負の気の圧力に押し返されるようなことはなかった。多少圧力に押されるような場面はあったもののその圧力を振り切りベルガザスの懐まで入り込むと腹を深々と切り裂いていった。

「ぐぬぅぅっ!」

「これで終わりよ……」

 これまでにない強烈な一撃にたまらずベルガザスがのけぞった。その間にネレイスはベルガザスを踏み台に高々と飛び上がると宙返りをしながら両腕にボウガンを展開し左右4本、計8本の矢を放ち床に突き刺した。床に突き刺さった矢はその下にそれぞれ異なる色の文様を刻み、各々を頂点に虹色の光で結ばれていった。

「ぬっ……体が動かん……」

 この空間が結界のような役割を果たしているのかベルガザスの身動きを完全に封じていた。そしてネレイスはゆっくりと1つの頂点へと降り立った。

「世界を象る雄大なる力よ……」

 その頂点から今度は別の頂点に向かって一気に切り抜けていった。ネレイスが切り抜けていくとベルガザスの下から大地の力が噴き上がった。その後大地の力は剣へと集まっていった。

「世界を漂う柔らかな旅人の力よ……」

 次の一閃は風の刃の追撃をもたらしていった。

「世界を震わす蒼き力よ……」

 ネレイスが放った矢は8本。これは精霊界の八理と一致している。この結界はネレイスが放った矢を頂点として切り抜けていくことで各八理の力がネレイスの攻撃に合わせて追撃をしてくれるようになっていた。今度はベルガザスの周りに無数のつららが現れ突き刺さっていった。

「世界を照らす清らかな力よ……」

 4撃目はベルガザスに無数の光線が降り注いだ。

「世界を潤す恵みの力よ……」

 5撃目には大きな水柱が噴き上がっていった。

「世界を包む紅蓮の力よ……」

 直後の6撃目にはベルガザスを炎が包み水を乾かしただけでなく体を焼いていった。

「世界に響かす怒号の力よ……」

 7撃目には無数の雷が降り注いでいった。

「世界を覆う深淵なる力よ……」

 最後8撃目は闇の魔力による圧力でベルガザスを押しつぶしていった。これで八理の追撃は全部終わったことになる。

「その力我が刃に宿れ……我は八理を束ねし者也……」

 8撃目を終えたネレイスは再び宙返りをするとベルガザスの方に向き直った。構えた剣には八理の力が集まり虹色に輝いていた。

「はぁぁぁぁぁっ……一閃っっ!!」

 八理の力を集めて極限まで高めた精霊剣エンジェルティアは虹色の光を纏ってネレイスの体ほどの大きさにまでなっていた。そのエンジェルティアををベルガザスに振り下ろした。

「ぬぁぁぁぁっ!!」

「…………」

「おのれ小娘……貴様なんぞにぃぃぃ!!」

「……魔界王、貴方の時代はもう終わったの……あたしが……精霊たちが……魔界を立て直す」

「ぐぁぁぁぁぁぁ!!」

 振り下ろされた虹色の刃はベルガザスの体を両断し虹色の光で覆いつくしていった。

「……これで……終わったんだね……」

 ベルガザスを斬り伏せたネレイスの体から虹色の光が消え、背中の羽もいつものトンボ羽へと戻った。精霊界女王の八理の力を集めた一撃により魔界王はついに倒れた。ここに魔界鎮圧作戦は完了したのである。



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