FC2ブログ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

ブログ開設3周年記念特別SS 魔界鎮圧作戦 ~Chapter EX~

「……これで……」

 魔界王を打ち破ったネレイスはその場で膝をついた。正直出し切るだけ出し切ってもう体はいっぱいいっぱいだった。出せる限りの正の気も出しつくしていたことから魔界の負の気がこれまで以上に負担に感じるようになりできれば早くこの場から立ち去りたいところであったが、そうすぐに体は動くようなものではなかった。

「……っっ……な……何?」

 すると急に地の底から突き上げられるような揺れが起こり始めた。

「……嘘でしょ……まだ魔界王が……」

 一瞬魔界王の復活を考え焦りを見せたネレイスであったが、どうやらそうではなかったようだ。突き上げるような揺れにより床や壁にひびが広がっていき、そしてそれが天井にまで達するとネレイスの頭上に瓦礫となって降り注いでいった。魔界王が支配していたこの宮殿は魔界王の存在により成り立っていたようなものであり、その魔界王が消滅した今この魔界宮殿も形を保てなくなったようであり崩落を始めたようである。まるで魔界王が最期に道連れでもいいからネレイスを始末しようとしているかのようであった。

「……とりあえず……早くここを……」

 魔界王を倒したとはいえここで道連れにされるわけにはいかない。ネレイスは過労で動かない体を無理にでも動かして部屋の外へと飛び出していった。





「……おわっ……なんだ……!?」

「……どうやら陛下が破れたようだな」

 宮殿の崩壊が始まったことでレゾーナはベルガザスが破れたことを悟っていた。魔界十二使徒という立場でありながら最終的にレゾーナはクロノスというレゾーナにとっての天敵を差し向けられたことによりその役割を果たしてもらうことができなかった。

「……え、じゃあネレイスがやったってこと?」

「……ああそうだ。だからお前の仕事ももう終わりだ」

「ん?」

「……私の見張りはもうしなくてもいい……この宮殿はじきに崩れ去る。早くここから立ち去るといい」

「……レゾーナ、お前は……」

「……私は魔界十二使徒……秀麗のレゾーナだ。その名における私の最期の役割は……陛下とともにあることだ」

「待てよ、それって……!」

 クロノスが引き留めようとした瞬間にクロノスの頭上に大きな瓦礫が落ちてきていた。クロノスはそれを見て反射的に飛びのいて避けてしまった。

「……わぁぁっ!」

「……これ以上は危険だ……お前は早くここを立ち去れ」

 クロノスにはレゾーナが悪い存在でないことは分かっていたが根が小心者の彼にはこれ以上粘って説得を続けることは不可能だった。やりきれない気持ちのままクロノスは部屋の外へと走り出していく。

「……っと、そうだ」

「おわっ!?な……なんだ?」

「ああ悪い……お前ではなく時の精霊の方だ」

「……ああ、あいつならあんだけ言っておきながら飽きて寝ちゃってるよ……割とこの状況ピンチだってのに……」

 クロノスの頭の上にちょこんと座っていた時の精霊の姿は今はもうなく、クロノスの内へと引っ込んでしまっていたようである。

「……そうか……大事にしろよ」

「え……?」

「……お前はいい主だ……弾かれ者のあいつを頼むぞ」

「……あ……ああ」

「……さぁ、行け」

「……レゾーナ……じゃあな」

 クロノスはその後振り返ることなくその場を後にしていった。

「うわぁぁっ!やべぇよやべぇよ……」

「何だ、どうなってる?」

「あ、将軍!なんか魔界王ぶっ飛ばしたみたいでそれで宮殿が崩れてるとか……」

 大広間も抜け廊下へと出ると丁度散見された魔界軍兵士を捌いていた将軍と合流できた。魔界軍兵士は宮殿が崩落を始めている今も投降することなく向かって来ているようだ。

「将軍……ネレイスは?」

「ん?お前のとこには来てなかったのか?」

「え?オレのとこには来てないからここじゃない部屋に行ったんだと……」

「……オレが見てない間に別の部屋に動いてたのか……」

 将軍とクロノスはさらに奥の方へと向かう廊下を見た。宮殿の崩壊は奥の方から始まっているようであり多くの瓦礫が道を塞ぐようにして横たわっていた。

「……無理だな」

「……うん」

「まぁ……オレらだけでも脱出するか」

 ネレイスのことが少々気がかりではあったが崩落が進んでいる今長居をするのは非常に危険である。仕方なく2人は入ってきた宮殿入口を目指して駆け出して行った。

「…………・」

「クロノス、どうした?」

「……いや……」

「……ネレイスなら心配ないだろ。上手く抜け出してくる」

「え……?そうだね……」

 ネレイスの心配もそうだがクロノスにとってはレゾーナのことが気がかりであった。ネレイスからは時の精霊は貴重な存在であるという簡単な話しかされていなかった。外の世界にいる時の精霊がどんな存在であったのか、その事実を知ったことで時の精霊を事実上使役しているようなものであるクロノスにとってはこのままレゾーナを悪しき魔界王の側近として悪者のまま消えてしまってほしくなかった。

(ネレイスだったら……絶対……)

 自分がネレイスほどの強い気持ちを持てていたなら……意地でも連れ帰っていたのだろう。

(……ネレイスなら……!)

 クロノスはある“予感”を感じていた。もしかしたらネレイスは……





「おわっ……!!」

 宮殿入口で魔界軍兵士を捌いていたファラは突如頭上から瓦礫が降ってきて慌てて外へと飛び出した。

「……宮殿が……崩れる……?ネレイス様がやったんだな……」

 ファラも当然魔界王の存在がこの宮殿を支えているということを知っていたため宮殿の崩落が魔界王の消滅、即ちネレイスの勝利にすぐ結びつけることができた。

「……おいお前ら、魔界王は死んだ!いい加減抵抗はやめろよ」

 ファラはそう呼び掛けたがその呼びかけに応じる者は誰一人いなかった。魔界王が死んだのなら共に死ぬのが本望という歪んだ思想を持っていたのが今の魔界の正規兵たちであった。

「……くそ……どこまでこいつら頭おかしいんだよ……」

 魔界の地でいつもより長く外に出ていられるとはいえほぼ初めてと言っていい本物の死神の姿へと化身したこととここまで暴れ続けたこともありそろそろファラも限界であった。徹底的に抵抗を続ける魔界軍の勢いにも押されて形勢は不利である。

「……くっそ……あいつらが出てきたときのことを考えるとここの敵は排除しておきたいんだよな……」

 ファラはちらりと宮殿の中を向いた。柱が倒れ壁は崩れ天井が落ちていく。将軍やネレイスたちはここから脱出をして……

「……って今のでふさがっちまったじゃねぇか!」

 冷静に考えると魔界宮殿の出入り口は実質この場所しかない。この場所が塞がれると中にいるネレイスたちが脱出できなくなってしまう。

「……ち……どうするか……」

 ネレイスたちのために脱出路を確保しなければならないがそれには向かってくる残党も邪魔になる。そして残党を相手にしていては手遅れになる可能性があった。

「……あの手に賭けるか……」

 ファラはもう一度宮殿の方を向いた。宮殿の向かって右側では崩落が進んでいるが左側ではまだ崩落の度合いが小さい。仮に入口がふさがっていたとして逃れる先は当然向かって左側になる。宮殿の構造も多少なりとも頭に入っていたファラはある1点に脱出口を作れそうな場所を決めていた。

「……ちっと負担増やすことになるが……これくらいは勘弁してくれるだろ」

 ファラは大鎌を振り衝撃波を飛ばすと宮殿の向かって左側の方へと逃げるように去っていった。





「……ここも通れない……くっ……」

 ネレイスは立ちふさがる瓦礫によって思うように脱出できていなかった。これまで通ってきた通路に通じる場所は全て瓦礫によって塞がれており、とりあえず通れるところを選んで進む遠回りを余儀なくされていた。

「…………」

 しかし時折崩れた壁の隙間を縫って行けば外に出れそうな場面にも遭遇したのだがネレイスは見向きもしていなかった。それはネレイスが“脱出”ではないある明確な目的を持って進んでいることが窺えた。

「……ここも通れない……ん……」

 またもネレイスの前には瓦礫が立ちふさがっていた。頑張れば通れるかもしれないがその前にネレイスの目には大きな窓のようなものが見えた。外に通じるものではないことは確かだが普通の部屋に使われるものでもない、即ち目指している場所に近付いたのかもしれない。

「はっ!」

 ネレイスはその窓ガラスをたたき割った。その奥の部屋にはまだ瓦礫は少なく通れそうだったということもあり、ネレイスは割った窓の隙間から飛び込んで行った。

「……っと……ん……この部屋は……」

 ネレイスはこの部屋にどことなく見覚えがあった。そして転がっている瓦礫の中に1つ獣のような死骸が転がっているのを見て確信をした。

「……ここはアモンと戦った部屋……だからこの奥に……!!」

 ネレイスは迷うことなく奥の部屋へと向かっていった。奥の部屋への扉は歪んでいて普通に開けることができなかったので構わず吹き飛ばした。

「……やっぱりいた……」

「……その声は……!」

 崩れつつある部屋の奥でレゾーナは佇んでいた。レゾーナはもう崩れゆく宮殿と共に自らも滅びゆく覚悟を決めており、そんな中でネレイスが現れたということに驚きの様子を隠せなかった。

「レゾーナ……」

「見事だな、陛下を破るとは……」

「……それはどうも」

「……この宮殿も崩壊している……すぐに立ち去るといい」

「そうはいかないわ」

「……安心しろ……私にはもう抵抗する意志はない……陛下と……この宮殿と共に滅ぶ覚悟だ」

「……悪いけど……それはさせられない……」

「……何故だ?」

「……貴女が時の精霊だから」

「……そうだな、残っていればこの力は脅威となる。しかし私にはもう……」

「……貴女がどういう存在なのか……時の精霊たちに聞かせてもらったわ」

「…………」

 ネレイスはこの魔界鎮圧作戦前にクロノスが使役している時の精霊を介して“時の向こう側”と呼ばれるところに行ってきていた。そこでレゾーナについての話を聞いていたのである。レゾーナが時の精霊たちから見放された存在だと知ったネレイスは最初からレゾーナをどうにかして助けようと画策していたのである。その結果がレゾーナの能力を封じることができ、なおかつ攻撃して倒してしまうようなことがないクロノスを当てることであった。そして思惑通りクロノスはレゾーナに一切傷を負わせることなく動きを封じることに成功していた。これで宮殿が崩壊するようなことがなければ何の問題もなくレゾーナを連れ帰ることもできただろう。

「……あたしは……」

「……人と精霊たちが再び手を取り合って過ごせる世界を目指しているんだったな……」

「……そうよ」

「……そんなものは幻想だと……言いたいが……貴女はその幻想すら現実に変えられそうな力を持っている……」

「……」

「……その力で……新たな魔界を創り出していけ……」

「レゾーナ、貴女もそこに……」

「……私はレゾーナ……魔界十二使徒、第一使徒秀麗のレゾーナだ……陛下が築き上げた今の魔界を象徴する存在だ。その時代は今終わった……だから私もその時代と共に滅ぶのみ」

 ネレイスをもってしてもレゾーナを説得することはできないようであった。この間にもどんどん瓦礫が崩れ落ちてきてもう時間的にも限界であった。

「……私の居場所は陛下の傍だけだ。新たな魔界に時代遅れの存在である私の居場所など……ない」

 この部屋もじきに崩落すると悟ったレゾーナはネレイスに背を向けた。その頭上に一際大きい瓦礫がレゾーナ目掛けて落下していった。

「……陛下……私も……お傍に……」

 そしてその瓦礫は下にいたものを押しつぶしていった。





「……将軍!ここもダメだ!」

「くっそ……」

 将軍とクロノスも瓦礫に阻まれ思うように脱出できていなかった。

「こうなったら……クロノス、突破するぞ」

「えっ!?ここを!?無茶だよ……」

 2人に残されていた道は瓦礫が降り注ぐ廊下であった。いつ崩落するか分からない危険な道ではあるがこう迷っている間にも崩落してしまう可能性があり、そうなればもう行き場はなくなってしまう。迷っている暇はなかった。

「おらぁぁぁっ!」

「待ってぇぇ!」

 2人は瓦礫が降る中上手いことそれをかわしながら進んで行った。幸い2人が走り抜けるまでその廊下が崩落してしまうことはなかった。

「……ふぃ……なんとか切り抜けられたか」

「危なかった……」

 走り抜けた先の廊下は少し広くなっており、ここはまだ比較的崩落が進んでいなかった。

「……多少ゆっくり……できねぇな」

「おいおい……崩れてるんだぜ?何で向かってくるんだよ……」

 しかしそこには魔界軍残党が散見されていた。そして将軍たちの姿を見ると迷うことなく襲いかかってきた。

「クロノス、お前のグローブで撹乱しろ。そして突っ込め!敵の始末はオレがやる」

「突っ込めって……」

「お前ならさっと脱出できるだろ……オレは……まぁ大丈夫だ」

「将軍……」

 クロノスの両手には水をたたえたグローブが現れた。クロノスがそれを振り回すと無数の泡が現れ魔界軍残党の視界を奪い動きを一瞬鈍らせた。クロノスはその隙に一気にその泡の中を突き抜けていった。

「……ったく……あいつは何してんだよ……」

 将軍は2本の刀を抜き動きの止まった魔界軍残党を次々と切り捨てていった。




「……うわ……視界わっる……」

 クロノスが突っ込んだ先は思いの外崩落が進んでおり、瓦礫が落ちたことで上がった粉塵が舞いあがって視界を悪くしていた。

「……これ使えるかな……」

 水のグローブを扱うクロノスは発生させた泡により粉塵を湿らせ流し去っていった。このグローブは八理守護精霊慈水の女王エメローネの加護を受け、ネレイスに贈られたものをその支援性能の高さからクロノスに与えられたものである。非常に特殊な武装であるもののクロノスはその力を存分に発揮し時の精霊の力と合わせてここまで生き残ってきた。

「……っと……あぶねっ!」

 時折落ちてくる天井や倒れてくる柱をいつものように過剰ともいえるリアクションを取りながら避けていく。

「……で、ここを抜けたら……」

 狭い廊下を走り抜けクロノスは角を曲がった。

「ぎゃーーーっ!!」

 曲がってすぐクロノスは絶叫し飛びのいてきた。角を曲がってすぐに大きな瓦礫が道を塞ぐように落下してきていたのである。

「……死ぬかと思った……」

 なんとか当たらずに済んだものの瓦礫は大きく道を塞いでしまっていた。

「…………」

 しかし道と瓦礫の隙間には人1人がようやく通れそうなほどの隙間が開いていた。しかしそれは小柄なクロノスは通れても将軍は通れないような大きさのものであった。

「……将軍……悪い!」

 クロノスは迷わずその隙間に入り込んだ。その瞬間にさっきまでクロノスがいた空間に大きな瓦礫が落下していった。

「……!!……こえぇ……!!」

 そのことにクロノスは震え上がった。今は力を貸してくれている時の精霊が寝ているようであり、避神の力が発揮できるかは分からなかった。時の精霊の力がなければクロノスの回避能力は神と呼ばれる領域までには達しない。当然今の瓦礫を避けられるはずもなかった。

「……迷ったら死ぬ……!」

 クロノスはなんとか狭い隙間から這い出して先へと進んで行った。その先でもやはり瓦礫は降り注ぎ一瞬も気を抜けない状況であったが生身の体でありながらも上手くかいくぐっていった。

「……確かこの辺が……」

 そしてクロノスは宮殿入口のホールのようなところまで戻ってきていた。ここまで来れば出口はすぐそこだったはずである。

「……げ、出口塞がれてる……!」

 しかし宮殿の出入り口は既に多数の瓦礫が積み重なって塞がれていた。

「……くっそ……ここが塞がれてるともう行き場ねぇぞ……」

 辺りを見回しても他の脱出口はなく、クロノスが来た道以外は瓦礫によって塞がれてしまっていた。

「……これで何とか……!!」

 クロノスは入口を塞ぐ瓦礫の山に水のグローブで発生させた水流をぶつけていったが、支援用の武装であったため威力には乏しく瓦礫を除けそうにはなかった。

「……もしかして……詰んだ?」

 やれる手は尽くしたものの今のクロノスの力では脱出不可能となっていた。





「……将軍……ちゃんとそこにいろよっ!!」

 ファラは周囲の状況を確認し残党の攻撃がまだ来ないのを確認すると軽く力を溜めた。構える大鎌にその力が伝わり鎌の形状が変化した。

「流月・飛翔!!」

 ファラは鎌を宮殿の壁に向かって振り抜くと鎌から複数の衝撃波が飛んでいき宮殿の壁を粉砕していった。

「……おい将軍!とっとと出てこいよ!」

 周辺を瓦礫の山へと変えたがそれと同時に壁や天井に多くの穴を作っていた。ここを通れば十分に脱出できる。

「……くっそ、読みを外したか……」

 しかし将軍はなかなか出てくる様子はなかった。ファラも別の場所に脱出口を作ろうとしたが残党たちが追い付きファラを狙っていた。

「……ったく……あいつは何やってんだよ……」

 ファラは鎌を握りなおした。もう覚悟を決めて相手にするしかないようだ。

「……おいおい……随分乱雑な助け方だな」

「……遅ぇんだよ……」

「お前の一撃で瓦礫が大量に降ってきて動くに動けなかったんだよ」

 ファラの背後には将軍の姿があった。将軍はファラが壁をぶっ壊して穴をあけてくることを見越して比較的安全な場所で待っていたのである。そしてその思惑が見事に的中したのである。

「……そりゃ悪かった、そしてもう1個」

「……もうへろへろなんだろ?引っ込んでろ」

「……そうさせてもらうよ」

 そして疲れ切っていたファラはその姿を消した。残った将軍がファラを追いかけてきた残党と向かい合う。

「まーあいつもよくこれだけをひきつけながらやってくれたもんだ。ほめてやらんとな」

 これまで常に戦い続けていた将軍であるが疲れた様子は一切なかった。魔界の残党相手に後れをとるようなことはなく次々と切り捨てていった。

「……よし、片付いたか……やれやれ……」

 幾分も経たぬ間に将軍は残党を片付け終えていた。その圧倒的な戦闘能力はこの段階においても健在だった。

「さて、クロノスは……っと」

 辺りの安全を確認したところで将軍は宮殿入口の方へと向かっていった。クロノスは恐らくここを目指していったのだろう。

「入口は……やっぱり崩れてたか……」

 宮殿入口は瓦礫が積もってふさがっていた。入ってすぐのホールも大分崩れており瓦礫の山と化していた。

「お、大丈夫かぁ?流石の避神もこれはピンチだろ」

 将軍は面白おかしくそう言った。その口ぶりは全く心配をしてなく、絶対生きて出てくるということを確信しているかのようなものであった。

「わぁぁ!!ぎゃぁぁ!!」

 そしてその通り瓦礫の山の中からクロノスの大げさな叫び声が聞こえてきていた。あれだけ元気に絶叫しているのなら全く心配はいらないだろう。

「……ゼェ……ハァ……マジで……今回は……死ぬかと思ったぁ……」

 そしてしばらくしてクロノスは崩れかけのホールの上にできていた穴から身を乗り出してきた。

「よぉ、よく生きてたなクロノス」

「おー将軍!よかった将軍も無事だったか~」

 瓦礫につかまりクロノスは将軍へと手を振った。

「……ってわぁぁぁぁっ!」

 その時にさらに体を乗り出してしまったために脆くなっていた瓦礫は外側に向かって崩れた。クロノスはその瓦礫の欠片と一緒に瓦礫の山を一緒に転げ落ちていき将軍の前まで行って止まった。

「いててて……」

「クロノス、最後にそれはだっせぇぞ」

「……んなこと言われてもよ……」

 クロノスは軽い擦り傷や打撲をしたものの命に別状はなかった。

「ま、いいさ。お互い無事でなによりだ」

「……まぁそうだけどさ、なーんか忘れてる気がするんだよなぁ」

「そういやネレイスがいねぇな……すいっと出て来てると思ったんだが……」

「……いや、ネレイスじゃなくて……」

 確か魔界宮殿内に突入した味方は4人だったはずである。

「「……あ」」

 冷静に思い返してようやく2人同時にその味方のことに気付いた。

「ラヴィスがいねぇぞ!」

「もしかしてまだ中に……」

 宮殿内で魔界人形をなぎ倒し宮殿内の兵を相手にしていたラヴィスのことを2人は完全に忘れていた。宮殿内から脱出する際にその姿は見られなかった。既に脱出をしているのか、まだ宮殿内にいるのか、それとももう崩落に巻き込まれてしまったのかは分からない。

「……ひとまず……帰還しよう」

「まぁ……そうだね」

 将軍にもクロノスにも宮殿内を捜索する余裕はなかった。そして仕方なく2人は神界へと帰還していった。その後宮殿内からはネレイスもラヴィスも出てくることはなかった。



←Chapter21     後日談→


スポンサーサイト

コメント

非公開コメント

プロフィール

ラヴィス

Author:ラヴィス
パソコン使えないくせにブログに手を出した愚か者。
……温かい目で見てもらえるとうれしいです。

毎週月曜に大小の違いはあれど更新中です。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
来客者数
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。