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コワレタセカイ ノ モノガタリ ~ナゲキノセカイ 探索編~


「……やれやれ、随分と降りてきたと思うんだがな……」

 示された道をただひたすらに降り続けていくラヴィスだったが一向に終着点は見えなかった。辺りの景色にはあまり変化はなかったものの進む先からはただならぬ気配を感じており、その気配は少しずつではあるものの確実に大きくなっていた。

「……この気配が恐らく星の理を司る精霊のもの……ただ……この気配……やけに……」

 ネレイスほどではないがラヴィスは精霊界でとてもよく名の知れた存在となっていた。その影響もありラヴィスは精霊の気配には非常に敏感であり、その気配から相手の気持ちを察するようなことができるのだったが、今ラヴィスがただならぬ気配から感じ取っていたものは明らかに排他的なものであった。

「……外との関わりを堅く禁じているからこその気持ちか……それとも……」

 それでもラヴィスは怖気づくことなく1段1段岩の段差を降り続けていった。気付けば足場の岩は最初のころよりも大分大きなものになっていた。

「……足場が大きくなるのは安心できるんだが……いちいち端から次の足場を確認するのが面倒なんだよな……」

 これまでは身を乗り出さなくとも下の足場が次はどの方向にあるのか見ることができていたが今ではもう足場の広さは自分の身長2つ分くらいにもなっており、少し端に歩いて下を確認しまた足場のある方へ向かって歩いては降りると少し手間がかかるようになっていた。

「さて、次は……ん?」

 今回もラヴィスは足場の端から下を確認した。すると下にあった足場はこれまでごつごつとした岩だけの殺風景のものから植物の生えた緑色のものへと変わっていた。

「……ここは緑があるんだな……」

 その緑の足場にラヴィスは降り立った。どこの世界にも普通にあるような植物でありこの世界を象徴するような植物ではないのは明らかであったが、この世界がもともとは自然の恵みある世界であったことは把握できた。

「……木もあるし……あれは……水辺?」

 ここから先はこれまでの足場とはまるっきり違い全ての足場に植物や水辺のある綺麗なものであった。しかしその足場もばらばらに砕け散っていることには変わりがなかった。

「……ばらばらになっているとはいえ将軍の時とは違いそれなりに原型は保っているわけか……」

 将軍の立ち寄った世界は白一面で世界の原型はどこにもなかった。そこで会った世界の理を司っていた精霊もずたずたに引き裂かれたような姿をしていたことから精霊の状態が世界の崩壊規模を示しているのかもしれないことが推察できた。

「……よっ……」

 ラヴィスが次に降り立った足場には小さな木が1本生えていた。地面が割れて根の一部は外に飛び出しており幹も若干朽ちてしまっているようだったがしっかりとその木からは自然のエネルギーを感じ取れていた。

「…………」

 そしてここに来てこれまでずっと感じ取っていたただならぬ気が少しずつ離れていっているような気がしていた。

「……我を避けている……か……」

 逃げられているとはいえここは閉鎖された空間である以上逃げ場はない。精霊を追いつめるような変な刺激を与えるのは得策ではないのだが、現状帰る手段がないラヴィスには取らなくてはいけない方法であった。

「……話くらいは聞かせてもらえるといいんだが……」

 そう言ってラヴィスはまた次の足場へと降りていった。小さな木についた葉が1枚ほろりと落ちていった。





「おいおい、待てよ……これを降りろって言うのか?」

 さらに降り続けていたラヴィスの足元には非常に大きな足場が見えていた。しかし降りる距離はこれまでの間隔とはあまりにも違いすぎるほど広いものであった。取りあえず他に降りる道がないことを確認してみたがどこから見てもこの足場の下にはあの大きな足場以外に乗れそうな場所は存在していなかった。

「……勘弁してくれよ……」

 ラヴィスはそういうものの飛び降りる以外に他の手段はなかった。精霊の気配もこの下から感じている。

「……ハァ……何かあったらルミナスやネレイスになんて言われるやら……」

 出発前ルミナスは泣きそうな目で“無事に帰ってきてください”と言って送り出してくれていた。ネレイスも“ラヴィスなら大丈夫!”とは言っていたもののその目はどことなく心配そうであった。ここで何かあった場合ラヴィスは2人から色々と言われ面倒なことになってしまう。

「……しーらねっ!」

 それでも進むしかないラヴィスは覚悟を決めて飛び込んでいった。みるみる落下速度は上がっていくが足場にはまだまだ程遠い。

「…………」

 ラヴィスは目をつぶっていた。流石にこの高さのジャンプは怖かった。

「……・っ……ん……?」

 しばらく落下速度は上がっていたがラヴィスは何か膜のようなものを突き破るとそこから落下速度はゆっくりになっていた。そこでようやくラヴィスは目を開けて辺りを見回すことができるようになった。周りは一面空であり下には大きな湖が広がっており、草木も生えた自然豊かな場所であった。その姿はまるで上で見た砕け散った世界のもとの姿を見ているかのようであった。

「……っと……とりあえず無事に降りてこれたか……」

 ゆったりとラヴィスは湖のほとりの草原に降り立った。足元もしっかりした地面であることを確認するとその草原をゆっくりと歩き始めた。

「……案外すぐに見つかったか……」

 そして歩き始めてすぐにラヴィスの前には見たこともない姿の精霊がいることに気付いた。おそらくこの精霊が探していた世界の理を司る存在なのであろう。既にボロボロであった将軍の時とは全く違いちゃんと原型のある姿であり、この状態では世界がどうして崩壊してしまったのか分からなかった。

「…………」

「やっと見つけたぞ……我は……」

 後ろを向いたままの精霊にそう声をかけ歩み寄ろうとした瞬間にラヴィスは精霊が急激にただならぬ気配を放ったことによりすぐに距離を取った。この気配はラヴィスも前に感じ取ったことのあるものであった。

「……ニンゲン……ワタシノホシニ……ナニシニ……」

「お前、聞く気ないだろ」

「……アノコヲ……カエシテ……!!」

「……完全に負の気に取り込まれてやがる……」

 精霊は真っ黒な気を振りまきながら怨嗟のような声を上げ続けていた。この状態では到底人の話を聞いてくれるような状況下にないことは精霊界でも活動を続けているラヴィスにはすぐに分かっていた。

「アァァァァァ!!」

「!!うぉあっ!!」

 精霊の嘆きの声から発せられた波動は軽くラヴィスを吹き飛ばすほどの力があった。

「ニンゲンガ……コワシタ……アノコモ……コノセカイモ……ゼンブ……!!」

「ち……それでも説得しろとか言うのかよ……」

 ラヴィスは異世界の扉の状況を見ているがまだ反応はない。この世界でやるべきことがまだ終わっていないということの表れなのだが、話を聞かない相手に憎んでいる人間の姿で説得するのはネレイスであっても非常に難しい状況であるだろうに、それでもやれと言われているのならば非常に酷なことである。

「アノコヲカエシテ……!!」

「……さっきからその一点張りだな……!!」

 ラヴィスは精霊から放たれた見えない気をなんとかかわしながら相手の要求が何なのかを聞きどう説得しようかを考えていた。先ほどから繰り返す“あの子”が誰なのかは分からないが、それを人間によって奪われてしまったためにこの精霊は狂いこの世界は崩壊したということは推察できた。

「一応我は神界から来た“創造主”の使いだぞ……?」

「……タスケテクレナカッタ……ソンナヤツガ……イマサラオソイノ……!」

「話す気は一切ない……と」

「アノコヲコロシタ……ニンゲンハテキ……」

「……“あの子”とは何者だ、精霊か?」

「ウルサイウルサイ……!!ダマレダマレダマレェ……!!」

 会話を続けていくごとに精霊の負の気の力は増していた。これ以上続けても無駄であることをラヴィスはもう悟っていたがそれでも異世界の扉が開くような気配はなかった。

「くっそ……これ以上何をしろって言うんだよ……」

「キエテヨ……ハヤクイナクナッテヨ……」

「そうだな、いなくなれたらとっとといなくなってる」

「……ココハワタシトアノコノセカイ……モウジャマモノハ……ゼッタイニイレナイ……!!」

「……げ、空間をひずませてる……クロノスじゃねぇとこんなの凌ぎきれねぇぞ」

 負の気のレベルが頂点に達した精霊はついに自らの力で世界の理を歪め始めた。その力は自らの居場所として用意したこの空間もろとも破壊してでもラヴィスを消し去ろうとしているようであった。

「アノコダケダッタラ……コンナコトニハナラナカッタ……」

「……っ……やっとか、遅ぇんだよ……」

 空間のひずみが大きくなる中でようやく異世界の扉は起動した。

「……ホカノニンゲンナンカ……キタカラ……アンナコトニ……!!」

「他の人間……?」

「モウ……ダレモイレナイ……ココハアノコトワタシダケノセカイ……」

「……ち、限界だ。撤収!!」

 ラヴィスが異世界の扉を起動させたのと空間が崩壊し出したのはほぼ同時であった。ラヴィスの入った異世界の扉を消し去るようにして周囲の空間は一気に崩壊していった。



「……コレデ……ココハモウアノコトワタシノセカイ……」



「……ふぅ、間一髪ってとこだったな……」

 ラヴィスは神界宮殿へと戻っていた。なんとか脱出できたことに安堵していたがギリギリまで待たされたことには非常にひやりとさせれられたようである。

「あ、ラヴィス……ラヴィス様っ!?」

「ルミナスか、今……」

「大丈夫ですか!?ラヴィス様っ!?」

「る……ルミナス!?」

 そこにラヴィスの帰還を感じ取ったルミナスがすぐに駆けつけてきた。そのルミナスがラヴィスを見るなり非常に心配した様子で抱きついてきたことにラヴィス自身が驚きを隠せずにいた。

「嫌ですよ……ラヴィス様……っ」

「……確かにあそこの精霊から攻撃もらったがそんな大したこと……」

「大したことですよ……!!ラヴィス様の体……おかしくなってるんですから!!」

「え……?」

 ラヴィスは冷静になって自分の体を見た。負の気によって吹き飛ばされたときにできたであろう擦り傷がちらちら見られたが流石のルミナスでもこれで大騒ぎをするはずがない。

「別になんとも……!!」

「嫌ですよ……ラヴィス様ぁ……」

 そしてついにルミナスが泣きついている左腕のあたりから脇にかけて真っ黒に変色してしまっていることに気付いたのである。

「……すぐにメリアス様のとこに行くぞ」

「は……はいっ!」

 調査報告をまとめたかったところではあったがまずは体に起きている異変を解決する方が先と見たラヴィスは泣きすがるルミナスを連れて自らの転生担当であるメリアスのもとへと急行した。



~ナゲキノセカイ 真相編に続く~


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Author:ラヴィス
パソコン使えないくせにブログに手を出した愚か者。
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