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コワレタセカイ ノ モノガタリ ~ナゲキノセカイ 真相編~

「……えーっと、とりあえず状況を整理するね」

「ああ……」

 ラヴィスは神界の病室のようなところで横になっていた。世界の理を司っていた精霊の力だったのかは不明だがその攻撃をもらったことにより起きたラヴィスの体の異変は幸いルミナスが早期発見をしてくれたために大事に至ることはなかった。ただひとまずは静養しておこうと横になっていたところでラヴィスが探索報告をするためにネレイスを呼び寄せていたのである。

「まずラヴィスの会った精霊の姿は健在だった」

「ああ」

「人間に対する負の感情に取り込まれててラヴィスを襲ってきた」

「ああ」

「キーワードは“あの子”。その“あの子”は人間である可能性が高くて、別の人間によって殺されちゃったと思われる」

「そうだな」

 ラヴィスの調査報告からネレイスは簡単にそうまとめていた。

「……でもその精霊は人間を憎んでいたんでしょ?でもその精霊の拠り所であった“あの子”がなんで人間だって分かったの?」

「……“他の人間”なんか来なかったら、と言っていた……“他の人間”ってことは別に人間がいたってことだろう。その人間が精霊の言う“あの子”にあたる可能性が大いにあるだろう」

「なるほどね……それなら確かに人間の可能性あるよね……」

「……おそらくはそいつでないと話は聞いてもらえそうにないんだが……そんなヤツに心当たりあるか?」

「……んー、人間かぁ……」

 ネレイスは考え込むもののそのような人間に心当たりはなさそうだった。

「……仕方ない、ランディを呼んでくれ」

「あ、分かりました……」

 このままでは埒が明かないと分かったラヴィスはルミナスにランディを呼びに行かせた。ランディはラヴィス出発前に“ラヴィスが行くに相応しい場所”というように言っており、確実に何か知っているようであった。

「……どうだい?何か分かったかい?」

「ランディ……それなりに酷い目に遭ったんだが」

「……はは、流石にそこまでは想定してなかったからね」

 ランディは悪びれるような様子もなくそう言ったがすぐに表情を変えた。

「……ラヴィス、君を向かわせたのはその世界が“精霊界にまつわるところ”だったからだよ」

「精霊界にまつわるところだったら我ではなくネレイスの方が適任じゃないのか……?」

「……ネレイスは忙しいだろ?前回の件でも精霊を使った調査に奔走してて大変だったみたいだからね」

「あはは……まぁそれはそうかもしれないけど……精霊界のことなら……」

「……正直な話ネレイスには他に行ってきてもらいたいところがあったんだ」

「他に行ってきてもらいたいところ……?」

「そうだよ。……でもとりあえず今はこっちの方をなんとかしないとね」

 そう言ってランディは1冊の本をラヴィスへと差し出した。

「ん……?」

「ノエル様にあらかじめお願いして気になる文献を探してもらったんだよ。多分これだと思うんだけど……」

 ランディが差し出した本には次のような記述があった。



――かつてこの世界は自然の恵み溢れる世界であった。そこに住んでいたのは様々な精霊たちだけで長らく人間の姿はなかったようである。そんなある日、この世界に1人の人間が流れ着いた。傷だらけで倒れていたその人間をその世界の精霊たちは手厚く看病し、無事に一命を取り留めたその人間は精霊たちに大変感謝をし彼らと長らく一緒に暮らしていたようである。



「……人間が流れ着いた……か」

「偶然だったんだろうね……別の世界から偶然流れ着くなんてことは僕たちみたいな存在以外にほいほいと起こるはずはないだろうし」

「……それが1度ではなく2度も起きた……」

「……その2回目に問題があったってことだろうね」

「……恐らくは2回目にやってきた人間が最初にいた人間を殺したんだろう……精霊たちが助けた人間を殺されたことで精霊は怒りあの世界は崩壊した……」

「その“精霊が助けた人間”が一体誰なのか……だね?」

「……ああ、……それも精霊界にゆかりのある人間だろ?」

「そうだね」

「……恐らくは精霊になっているはず……」

「…………」

「ネレイス、精霊界に行くぞ」

「え?あ、うん。分かったよ」

 ラヴィスは軽く考え込むとすぐにネレイスを呼び精霊界へと向かった。





「ネレイス様、それにラヴィス殿。本日はどういった御用で……?」

「ちょっと調べ物を……時期的には多分精霊界に負の気の呪いがかけられるちょっと前のこと……人間から精霊へと生まれ変わった子について……」

「……少々お待ち下さい」

 ラヴィスとネレイスは精霊界宮殿の書庫にやってきていた。基本的には精霊について様々な資料が並べられている場所であるが、この書庫の地下には精霊界女王のみが入れる極秘資料や貴重な書物が所蔵されている特別書庫があるのだった。そこの司書をしている精霊に要件を伝えるとこの書庫内の資料を熟知している精霊はすぐに目的の書物を探し出してきたようである。

「こちら……でしょうか」

「ありがと」

 ネレイスはその書物を受け取るとすぐに内容を確認していった。今でこそネレイスによって有名となった人間から精霊へと生まれ変わった存在であるが、当時はまだまだ数少ない存在であり調査や監視の対象となることも多かった。さらにその精霊は当時精霊界にも数多く存在していた理の精霊であり、周りの精霊たちとも仲良く暮らしていたということが分かった。

「……んー……」

「どうだ、ネレイス?」

「……これだけじゃなんとも言えないかなぁ……」

 その書物にはそれ以上のことについてはあまり詳しくは書かれていなかったようである。その書物の中で他に気になるようなことがあったと言えば“目が不自由だった”ということくらいであった。

「……その方がどうかしたのですか?」

「んー……ちょっとその子を探してるんだけど……」

「……確かその方でしたら……」

 手詰まり感があったところに司書の精霊はまた別の書物を持ってきていた。その書物はネレイスも前に見たことのあった書物であった。

「あれ……それって……」

「転生の儀……その手法や転生を行った方についてが書かれたもの……以前もお見せしましたよね」

「それに載ってたの……?」

「……恐らくは……この方だと思いますが……」

 ぺらぺらとめくっていった先は転生された精霊についてのことが書かれている部分であった。以前この書物を読んだときは最初に転生された存在――その後8代女王となるネレイスの母親、フェリアについてを調べていたのだった。その先の方のページにも転生をされた精霊についてがつらつらと書かれており、そこにその精霊の名前があった。

「……え……これって……本当?」

「……はい、混乱の最中私が転生させた方なので間違いありませんよ……」

 その精霊の名前はネレイスもそしてラヴィスも知っていた。2人とってその名前が挙がることは非常に意外であった。

「……ネレイス」

「ラヴィス……神界に戻ろうか」

「そうだな……」

「……お役に立てましたか?」

「……うん。ありがとね……グラキエス様」

 2人は司書の精霊――かつて精霊界の2代女王を務めたグラキエスに丁寧に頭を下げると再び神界へと戻っていった。その名前の精霊が今どこにいるのかも既に分かっていたようである。





「ノエル様!」

「ネレイスさんにラヴィスさんですか……何か分かったのですか?」

「うん、バッチリだよ。そのことでノエル様に話をしに来たんだから」

 ラヴィスとネレイスはノエルの部屋へとやってきていた。

「そうですか……どういった御用でしょうか?」

「……プリローダを借りれる?」

「プリローダ……ですか?」

 ネレイスはノエルの侍女を務めているプリローダの名前を出した。そのことにノエルは少々困惑気味のような反応を見せた。

「うん、多分……何か知ってると思うから」

「……別に……構いませんけど……」

 ラヴィスはノエルの応対がどことなくぎこちないことが気になっていた。精霊界で得られた情報からすればプリローダが今回の鍵となる精霊であることには間違いない。レミエルの時はノエルも知らなかったようなそぶりを見せていたが、今回のノエルは明らかにおかしい。プリローダを自らの侍女として傍に置いているのは事情を知っているから、もしくは傍に置いているうちに事情を知ってしまったかのどちらかである可能性が大いに考えられた。

「……私に御用ですか?」

「あ、プリローダ。ちょっといいかな……?」

 そこにプリローダが姿を現した。目も口も布で覆い隠されており、どんなに暑くても一切肌を晒すことのない服を身につけているその姿は最初に会った時からどことなく特殊な存在であることを予感させていた。

「いかがなさいましたか、ネレイス様」

「……タビア=ガンナって世界のことを知らない?」

「……!!」

 世界の名がネレイスから発せられるとノエルは明らかに慌て出していた。

「……それを何故私に……?」

 しかし当のプリローダ本人は全く動じる様子を見せなかった。

「……ちょっとその世界に所縁のあった人を探してたんだけど……」

「……それで私に?」

「そそ、ねえ……」

「分かりました、お力お貸ししましょう」

「え?あ、ありがと」

 そして慌てるノエルを尻目にあっさりとプリローダは協力を申し出た。あまりにも簡単に話がついてしまいネレイスにとっては非常に拍子抜けしてしまうものだった。

「……私はどうすれば……?」

「……続きはラヴィスについていって。あたしは……」

 ネレイスはここでようやくノエルの方を向いた。その視線に気づいたノエルがびくっとした。

「ノエル様とお話があるから……」

「はわわわ……」

「分かりました……ラヴィス殿。よろしくお願いします」

「ああ、じゃあ場所を移すか」

 話をつけたネレイスとノエルを残しラヴィスはプリローダを連れてノエルの部屋を後にした。

「……随分あっさりと協力してくれたな」

「……先日レミエル様から話を聞いたので……じきに私のところにも来るだろうことは分かっていましたから」

「……やはりお前があの世界の……」

「はい、私がタビア=ガンナに流れ着いた最初の人間……」

 2人が廊下を歩いている間に異世界の扉の鍵は既に反応を示していた。やはりプリローダを招きいれようとしていたのであろう。

「……続きは後でゆっくり聞かせてくれ……多分向こうの移動時間が退屈だ」

「……分かりました……」

 神界の転送装置まで2人はやってくるとすぐに座標軸を入力した。ラヴィス単独では時間のかかった接続もプリローダと一緒ならば一瞬で済み、転送準備は完了した。

「……よし、じゃあ……行こうか」

「……はい」

 2人は転送装置の上に乗ると座標軸A790-62、タビア=ガンナに向けて転送されていった。崩壊したこの世界の真相を知るため、そしてこの世界を救うために……



~ナゲキノセカイ エピローグに続く~


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Author:ラヴィス
パソコン使えないくせにブログに手を出した愚か者。
……温かい目で見てもらえるとうれしいです。

毎週月曜に大小の違いはあれど更新中です。

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