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コワレタセカイ ノ モノガタリ ~ナゲキノセカイ エピローグ~

「……あの世界が……こんなになってしまったのですね……」

 2人は崩壊した崩壊したタビア=ガンナへと降り立った。ラヴィスが最初に訪れた際よりもさらに崩壊は進んでいるようであり、周囲に浮かぶ岩の大きさは先ほどよりも小さく、数も心なしか増えているような気がした。

「……変な場所には落ちないようになってるとは言えさっきより慎重に行かないと危なさそうだな……」

「そうなのですか?……でもあまり慎重に行く余裕もなさそうですが……」

 2人がいる今も少しずつではあるが世界の崩壊は進んでいるようである。この先も足場が確保できる保証はどこにもない。

「……ルミナスから魔力借りてくればよかったな……」

「ルミナス様から?」

「……ルミナスの魔力があればひゅっと飛んで一気に下まで……」

 そう言いかけたラヴィスがふと横を見るとプリローダの背中には淡い虹色の羽が現れていた。

「プリローダ、お前……」

「……私は“淡虹のプリローダ”と呼ばれた理の精霊……普段は一切精霊の力を使うことはありませんが……今日だけは特別です」

「……じゃあ我にも……」

「……すみませんが私の力は他人に分け与えられるほど強力なものではありません。自力でお願いします」

「……おい」

 そう言うとプリローダは一足先に下に向かって飛び立っていった。

「……ハァ……もっとしっかりルミナスに甘えておけばよかったか……」

 そしてその後をラヴィスが足場に飛び降りながらついていった。





「…………」

「……追いついた……」

 先行していたプリローダは律儀にラヴィスを待ってくれていたかのように立ち止っていた。

「……ここは……あの時の……」

 2人が立っていたのはラヴィスが先ほど降りていく途中に降り立っていた小さな木の生えた足場であった。先ほどよりもその面積は明らかに小さくなっており、水辺は地面が割れたことにより干上がってしまい木が生えていたところも大きく地面が削られ半分根が露出してしまっていた。

「……先ほどもここに来たのですか?」

「ん?ああ……」

「そうでしたか……」

 プリローダはラヴィスの方ではなく小さな木の方を向いたままそう言った。

「……記憶にあるのか?」

「……この木の前……水辺のほとり……ここは恐らく私がこの世界に流れ着いて最初に目を覚ました場所です」

「……そうか……」

「……ここの精霊は見知らぬ私のために手を尽くしてくれました……」

 そしてプリローダは自らの過去を少しずつ話し始めた。この世界に来る前のプリローダは周囲からいじめを受け居場所をなくしていた。そしてあの日、プリローダは河原でいつも以上に暴力的ないじめを受けてしばらくその場に横たわっていた。そこで次第に意識は薄れていき気がついた時にはもうこの世界へとやってきており精霊たちに看病されていたという。

「……精霊に好かれる人間は何かしら特別な力があったりするもんだが……」

「……なかったと思いますよ。それか……私だけ気付いていなかったか」

「……そういうことか」

「……私の気付かない力を疎んじていじめられていたかもしれませんからね。もっとも今となってはもう分かりませんが……」

 そう言うプリローダの口ぶりはどことなく寂しげであった。

「……さ、まだまだ下ということですよね。あまりのんびりもしていられないのでしょうから先を急ぎましょうか」

「そうか、じゃあ行くか……」

 今度はラヴィスが先に下へと飛び降りていった。その後にプリローダが降りようとしたがその前にもう一度後ろを振り返った。プリローダにとって思い出の木になるこの小さい木にはもう1枚しか葉は残っていなかった。その葉も今にも散ってしまいそうであった。

「……あの時はここしか居場所のなかった私ですが……今では大切な主と支えて下さるたくさんの方々に出会い新しい居場所を頂けました……」

 プリローダはその木に小さく頭を下げてからその場を後にしていった。プリローダが飛び立つと同時に残っていた葉がひらりと散っていき、その後その木は地面から崩れ落下していきながら消えていった。





「……凄い高さですね」

「……だろ?これを飛び降りるのは大変だったぜ……」

 長い長い道のりの果てに再びラヴィスとプリローダはここまでやってきていた。見下ろす遥か下にはこの世界の根幹を司る精霊と遭遇した大きな足場が見えていたが、先ほどとは違いどことなくうっすらと赤みががったような霧に覆われているようであった。

「……ラヴィス殿、感じていますか?」

「……あいつの放つ負の気か?そりゃ思いっきり感じてるぞ」

「……そうですよね……大分……危険かもしれません」

 それが精霊の放つ負の気であることは2人もすぐに分かっていた。ただでさえ強大な力をもつ精霊であるのに負の気にとらわれ暴走状態になれば手がつけられるはずもない。

「……すぐに私だと認識してくれればいいのですが……」

「……気付いてもらえなかったらいろんな意味で最悪だよな」

「そうですね……ですがルミナスさんやネレイス様のためにも最低限ラヴィス殿は無事に送り返せるよう善処はしますよ」

「……そいつはどーも」

 先ほどは軽く攻撃をもらっただけでルミナスに思い切り泣きつかれたのだ。それ以上のことがあればルミナスはどうなるか……

「……さ、行きましょう。この世界を……解放してあげなくてはいけません」

「……そうだな……」

 2人は意を決して飛び降りていった。最初のうちはどんどんと加速を続けていったが上の世界と下の世界を分けているかのような膜を突き破った瞬間に落下速度は落ち、ゆっくりと地面へと降り立った。先ほどまでは蒼く美しい空間だったはずの下の世界も今は赤いもやが薄く立ちこめ地面はところどころひび割れた状態となっており、この場ももう少ししたら上の世界のようになってしまうことが想像できた。

「……なんという負の気……これはもう精霊界にかけられていたのと同じくらいのレベル……」

「これを1匹の精霊がやってるんだ……すさまじいな……」

「……オマエハ……」

 強力な負の気を放つ存在はすぐに現れた。誰にも入ることのできないはずの空間に侵入を許したのであれば当然すぐにやってくるというものだろう。

「……用があるのは我ではない、こっちの……」

「キエロキエロ!!オマエナンカ……オマエナンカァ!!」

 ラヴィスはなんとかプリローダに話をさせようとするが負の気にとらわれた精霊にはプリローダの姿など全く見えていないようだった。眼前に見えるラヴィスを害悪をなす侵入者として徹底排除する体勢を崩すことはなかった。

「……っっ!!……こんなにも変わってしまうものなのですね」

 ラヴィスに向けて放たれた負の気の波動をプリローダはその身を呈して止めた。

「おい、おま……!!」

「……この場ではもう隠す必要もないでしょう」

 その際にプリローダの服の一部と顔を覆っていた布が吹き飛んでいった。初めてその姿を見たラヴィスは思わず絶句してしまった。顔は皮膚が焼けただれてしまいそのせいで両目ともふさがってしまっており、体のほうも火傷の跡や古傷のようなものが無数に残る非常に痛々しい姿をしていたのであった。

「……ジャマヲシタノハ……ダレ……?」

「……私のことをお忘れですか?怒りと憎しみに支配されて失った存在のことを忘れるなんて滑稽な話ですよ」

「……ア……アア……アナタハ……!!」

「……タビア=ガンナ……この世界の名を持ちし精霊……」

「プリローダ……プリローダ……!!アア……ヨクココヘ……!」

 ようやくプリローダの存在に気付いた精霊はすぐに我に返ったようである。またたく間に負の気は消え失せ辺りも蒼く美しい空間へと戻っていった。

「……プリローダ!ドウシテココヘ……?」

「……崩壊したこの世界の後始末をしに来ました」

「アトシマツ……?」

「そうです。私を失い怒りと憎しみにとらわれた貴女はこの世界を破滅させた……」

「……ウ……ソレハ……」

「……その結果この世界は存在すら消されることになりました。貴女はこの世界を守る立場にありながらそれを忘れ、あまつさえこの世界を崩壊の道へと進ませるなど……」

「……」

 再会を喜ぼうとした精霊ではあったが、その暇すら与えずプリローダは説教を始めた。ノエルの侍女をしている際にもノエルに対して厳しい意見を遠慮なく言うことができるプリローダはここでも遠慮なく物言いを続けていた。

「…………」

「プリローダ……ワタシハ……」

「……もう……この世界には貴女以外の存在はありません……寂しいものになってしまいました……」

「……ミンナ……ニンゲンニ……」

「…………私を手にかけた人間は邪な心を持つ者だったでしょう。ですが……人間がみなそうではないですよ……」

「…………」

「……精霊界の主は今……素晴らしい方が努めておられます。一度損なわれた人間と精霊の関係を……さらには精霊界と魔界の関係を改善しようと奔走し……その成果が実りつつあります……。精霊たちが人を憎む時代は……もう終わりなのですよ」

「……ソンナコトガ……?」

「……私も人間のことは信頼しています。もちろん……この人も」

 プリローダはラヴィスの方を向いた。そのラヴィスはゆっくりとプリローダの横へと並ぶ。

「…………」

「我はラヴィス。第10代精霊界女王ネレイスの契約者だ……」

「ラヴィス……ワタシハ……」

「……今の精霊界は本当にいいところだ……それこそ……かつてお前がこいつと過ごしたような時間がずっと続いているようなものだ」

「…………」

「……ネレイスにこの話をしたら……なんと言うか……」

「……きっと残念がることでしょう……」

「ワタシハ……」

「……だが今のお前は自分のやったことの大きさが分かっているだろう……それなら……」

 ラヴィスとの話を続けていくうちに精霊の体からは徐々に光が漏れ出始めていた。

「……ワタシ……ハ……」

「どうした……?」

「……私と再会し……人間に対する憎しみが薄らいでいったことで気持ちが解放されたのでしょう」

「……コノセカイハモウホロンダ……ワタシノヤクメモオワッタ……ダカラドウカ……」

 精霊の体から漏れ出ていく光の量はどんどん多くなっていた。

「……プリローダ」

「分かりました」

 この精霊の最期の幕引きはこの精霊の拠り所となっていたプリローダが受け持つこととなった。プリローダの手には淡い虹色の光が集まっていた。

「……もう……いいのですね?」

「……アナタニアエテ……スクワレタカラ……」

「……貴女の役目は終わり……あるべき場所へと貴女は還れることでしょう……そしてこの世界も失われあるべき新しい世界へと生まれ変わるでしょう……」

「……プリローダ……コレカラモドウカ……ゲンキデ……」

「…………」

「……ラヴィス……アナタモ……ドウカ……ソノスバラシイセイレイカイヲコレカラモ……」

「……大丈夫だ。ネレイスいる限りずっと……な」

 そう言ったラヴィスに精霊は優しくほほ笑んだような気がした。ラヴィスに対して見せた最初で最後の友好的な姿勢であろう。

「プリローダ……」

「……タビア=ガンナ……私は貴女に救われました……この世界の存在はこれで失われ忘れ去られていくことでしょう……ですが私はこの世界を……そして貴女を絶対に忘れることはないでしょう」

「……アリガトウ……」

「……さようなら……私の……恩人……」

 そう言うとプリローダの手から無数の虹色の光弾が放たれた。その光弾は精霊の体を覆い尽くしていき、最終的にその光弾が弾けると精霊も一緒に虹色の光となって消え去っていった。

「…………」

「……プリローダ」

「……帰りましょう。精霊を失ったこの世界はじきに崩壊するでしょうから」

「あぁ、でも何か忘れてるような……」

 そう言ったラヴィスが何かの気配を感じ上を見ると上空から何かが降ってきていることが分かった。大きさはあまり大きくはなく、降ってくる速度もゆっくりであったことから軽いものなのであろう。

「……あれは……」

「……葉っぱ……?」

 降ってきていたのは1枚の葉であった。恐らくは上空で見た小さな木に残っていた最後の1枚の葉っぱなのだろう。それがラヴィスのところまでぶれることなくここまでゆっくりと落ちてきていた。

「……確か世界の欠片……とかいものを回収しないといけないんだが……」

「……ではあれがそうなのでしょうね……」

 そして葉っぱはラヴィスの手のひらの上へとおさまった。木はとうの昔に枯れていたように見えたが、この葉だけは何故かみずみずしい緑色のままであった。それにどことなくあの精霊の力が残っている、そんなようにも感じられた。

「……世界の欠片って別に石とかに限らないってことなんだな」

「そのようですね」

 世界の欠片を手中に収めたことで一気に世界は崩壊を始め、それに合わせて異世界の扉も自動的に起動した。

「……さぁ、帰りましょう」

「そうだな……」

 2人は異世界の扉の中に消えていった。そしてその異世界の扉は崩壊していく世界と一緒に消滅するようにして消えていった。





「……ん……ここは……」

「新しい世界……でしょうか」

 2人がたどり着いたのは自然あふれる世界であった。綺麗な水辺のほとりに小さな木が1本ちょこんと植わっているこの世界は非常に長閑な場所であった。

「座標軸A790-62……さっきの世界の上にできた新しい世界だな……」

「……無事に新しい世界がお目見えとなったわけですね……」

「…………ん?」

 しかしラヴィスにはどことなくこの風景の見覚えがあったような気がしていた。

「……ラヴィス殿?」

「いや、何でもない」

 ラヴィスはそう言ったもののラヴィスは確信していた。この景色は最後にタビア=ガンナと会ったあの場所と全く同じであったのである。恐らくもともとタビア=ガンナと呼ばれていた世界は外側の崩壊していた世界だけであり、精霊と出会った空間は新たに作られていたこの世界だったのだろう。この世界は元のタビア=ガンナに覆い隠されていたために表に出なかったのが、元のタビア=ガンナが消失したことで表に出てきたのであろう。

「……そうか……」

 目の見えないプリローダにはこの景色は見えていないので分からなかった。気配も元のタビア=ガンナとは異なっているために気付くことはないだろう。ラヴィスは少し考えたがそのことを伝えようとはしなかった。

「……ラヴィス殿」

 しばらく無言の時間が続いたがプリローダが先に口を開いた。

「何だ?」

「……あの世界に行けてよかった……」

「……どうした、急に」

「……私も少々心残りがあったのでしょう……これで私も心おきなくノエル様のとこへと戻れるでしょう」

 皮膚がただれ表情も崩れてしまっていたプリローダであったが、それでもラヴィスにはプリローダがどことなく吹っ切れて落ち着いたような表情をしているように見えていた。

「そうか……ま、そのノエル様がネレイスに厳しく追及されてなければいいんだがな」

「ふふ、そうですね。……ちょっと心配なので早く帰りましょうか」

 プリローダのその言葉に促されラヴィスは異世界の扉を起動した。今度は神界宮殿の座標が入力されており、2人は扉の先に広がった光の海へと飛び込むとその扉は静かに閉じ、ゆっくりと消えてなくなっていった。2人が去った新しい世界には柔らかな風が吹き込み、その風にのった精霊たちがふわふわと舞い踊っていた。



コワレタセカイ ノ モノガタリ ~ナゲイノセカイ編 完~



(近日追記にオマケが……!?)



「あ、ラヴィス、それにプリローダもおかえり~」

 神界宮殿に戻って出迎えてくれたのはネレイスだけであった。

「ネレイス様、ノエル様は……」

「……あはは、ちょーっときつく言いすぎちゃったみたい。少しそっとして欲しいってさ」

「畏まりました」

 あの後ネレイスはノエルを徹底的に追及していたようであり、その追及にノエルは耐えられなかったらしい。

「……お前がノエル様をいじめてどうするんだよ……」

「あはは……でも……やっぱりノエル様は今回のことは知ってたみたい」

「……そうか……」

 ノエルはやはりプリローダがコワレタセカイの鍵を握る存在だということを知っていてどこかはぐらかしていたようである。

「何で黙ってたんだ?」

「……んー……」

「……私がお願いしたのです」

「プリローダ……?」

 ラヴィスの疑問に答えたのはプリローダであった。そのプリローダが堂々とノエルにその事実の口止めをさせていたことを告白した。

「何故そんなことを……?」

「それは……」

 プリローダはネレイスの方に顔を向けていた。そのネレイスが軽く頷くとそれが見えていたかのようにラヴィスの方へ向き直った。

「……貴方には話しておいても大丈夫でしょう」

「ん?どういうことだ?」

「……コワレタセカイの探索は……ただ単に神界の仕事だからというだけではありません」

「……そうだね……これはノエル様のためでもあるんだよ……」

「……さっぱり分からないのだが」

「とにかく今回の一件はこれで片付きました……ただこれで終わりではありません……まだ2つ……あのような世界があるとのことですから……その真相を明かしていけばいずれノエル様も……」

 プリローダもネレイスもノエルに非常に近い存在である。そして彼女たちはノエルもまだ知らない何かを知っていたようだった。今回のこの世界の探索は単純に神界の者としての役割を果たしているだけではなかった。この神界に隠され続けていた大いなる謎にも挑んでいたのである。その謎を解き明かすための1歩だったことは間違いないのだが、そのことをラヴィスが理解するにはまだもう少し時間が必要なようであった。


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Author:ラヴィス
パソコン使えないくせにブログに手を出した愚か者。
……温かい目で見てもらえるとうれしいです。

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