スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

ブログ開設4周年記念特別SS SSs(ショートストーリーズ) ラヴィス編 ~遠き日を思いて~


「…………」

 天界宮殿内に設けられた私室にラヴィスは1人で静かに時を過ごしていた。神界八将として神界所属であるラヴィスは神界宮殿内に私室を与えられているが、天界女王ルミナスの夫として天界宮殿内にも特別にラヴィスは私室を与えられていた。この天界宮殿の私室へは滅多に人を通さないようであり、1人になりたい時や特別な時に利用しているようである。

「ラヴィス様……?いらっしゃるのですか……?」

「……ルミナスか、入って構わんよ」

「はい、失礼します……」

 その私室に天界女王ルミナスが訪れノックをし許可を得てから中に入ってきた。神界宮殿内の私室ではノックもなく入っているルミナスがここまですることからラヴィスはこの部屋によほど人を近付けたくはないのだろう。

「……ルミナス、どうかしたか?」

「いえ……神界のお部屋にはいらっしゃらなかったので……」

「……そうか……」

「…………」

 時間はまだまだ昼間であり、この時間この部屋にラヴィスがいる時は大抵1人になりたい時である。ルミナスも特別用件があって来たわけではなく、ラヴィスの素っ気ない対応から邪魔をしてしまったのではないかと少しずつ不安になっていた。

「……そういう顔をするな」

 ラヴィスもそれに気付きやや気まずく思ったのか少し表情を崩しルミナスを隣へと座らせた。

「お邪魔でしたら……」

「いや……特に用がなくてもルミナスが気になって来てくれたならちゃんと相手にしなきゃまずいだろ」

「……すみません」

 軽く髪を撫でてもらったルミナスはここで先程までラヴィスが見ていたと思われる1枚の写真に目が留まった。

「ラヴィス様……これは確か……」

「……っと」

 ルミナスが気付いたことにラヴィスは一瞬しまったというような反応を見せた。

「……やっぱり1人した方が……」

「……いや、構わん……それに折角このタイミングでルミナスが来たんだしな……」

 その写真は相当古いもののようであり、少年時代のラヴィスと思われる男の子を含めた家族のものと思われた。

「…………」

「……お前にもあんまり喋ったことなかったもんな」

「……はい。……ラヴィス様が家族の写真を見てる時の寂しそうな時は……近寄り難く見ていられませんでしたし……」

「……そうだな」

 長い時を共に経たラヴィスとルミナスの間柄であったとしてもお互いに秘密にしているようなものがある。ラヴィスにとってルミナスと出会う前に暮らしていたラヴィスの家族についてはラヴィスもほとんど語ってこなかったことであり、SkyBlueのメンバー内にもそのことを知る者はごく僅かで、さらに話してはいけないこととして暗黙のうちに避けられていた話題であった。

「……ラヴィス様……」

「……なんだ?」

「後悔しているのですか?」

「……何をだ?」

「……あれから一切会わなかったこと……ですよ」

「…………」

 ラヴィスは今でこそ良家の令嬢だったルミナスと結ばれ不自由のない幸せな日々を過ごしているが、もともとの生まれはあまり裕福とは言えない家の次男坊であった。高齢となり仕事を辞めた父、その父を家事で支え続けた母、そして2つ上の兄の4人家族だったラヴィスは幼い頃から勉学よりも体を動かすことをよしとしてたびたび迷惑をかけることもあった一方で、ラヴィスの兄は両親に少しでも楽をさせてあげようと勉学に励んでいた。このことがだんだんと2人が大きくなるにつれてラヴィスの心境に大きな影響を与えていったのである。

「……顔なんて見せられねぇよ……勝手に飛び出していった挙げ句に我には出来すぎた嫁さんを貰っちまったんだから」

「……やっぱり後悔しているんですね」

「…………」

 ラヴィスなりに考えた家族を少しでも楽にさせてあげる方法……それは家を飛び出すことだった。ろくに勉強もせず遊び回っているような愚かな次男坊にかけてあげる手とお金を全部できる兄へと注いであげれば家族にとってもいいことだと考えたラヴィスはある日その旨を書き残し家を飛び出していった。それ以来ラヴィスが家族の前に姿を現すことはなかった。その後ラヴィスは遊び仲間だった将軍たちとつるみ、そしてルミナスと出会った。ラヴィスの兄は社会に出て大成し両親に楽をさせて家族3人仲良く暮らしたのである。

「……ラヴィス様……」

「……そうだな。やっぱり後悔してるんだろう……だからこの話をしたくないんだろうな……」

 その気になれば顔を出すことだってできたはずである。でもラヴィスはそれをしなかった。

「……ラヴィス様のお兄様はそれだけ立派な方だったのですね」

「…………ああ、我なんかよりもよっぽどできた人間だ」

「…………」

「……何も言わないんだな」

「……私はラヴィス様のお兄様を知りませんから何も言えませんよ……それともラヴィス様、私に"そんなことありません、ラヴィス様も素敵な方ですよ?"とか言って頂きたかったのですか?」

「……流石ルミナスだな……でも確かにそういう言葉はいらなかった」

「……ずっと一緒にいるんですよ?それくらい分かります」

 ルミナスが少し不機嫌そうに言ったのですかさずラヴィスはルミナスを近くに寄せた。

「……ま、そうだよな……」

「……ラヴィス様……」

 近くに寄せられたルミナスであったがあまり表情は明るくならなかった。普段であればもっと嬉しそうな反応をしてくれるはずである。

「……どうした、ルミナス?」

「……ラヴィス様はお兄様のこと嫌いでしたか?」

「…………」

「……先ほどからラヴィス様はお兄様のことをかなり気になさっている様子でしたから……」

「……いや、嫌いではない……」

「……では単純に"越えられない存在"だということですね……?」

「……そう……だろうな」

 ラヴィスにとって兄の存在は非常に大きかった。無意識のうちに兄と比べ、そして自らを下に見てしまっていた。

「……ラヴィス様……」

「ん?ルミナス……?」

 ルミナスはラヴィスをそっと抱き締めた。それはいつもの甘えるためのものではなく、ラヴィスを気遣った優しい暖かみのあるものであった。

「……お兄様はラヴィス様のことをどう思っていたのでしょうか……?」

「……さぁな?出来の悪い弟だって思ってたんじゃないか?」

「……でもお兄様もラヴィス様を嫌っていたわけではないのですよね?」

「…………」

「……仲が悪いのではなければお兄様と一緒に遊んだ記憶とかも残ってないのですか?」

「…………」

「……お兄様に対する劣等感でいっぱいだから今でもこのことを……」

 ルミナスはラヴィスがいつまでも暗い顔をし続けていたのがとても気になっていた。だから自分がなんとか気持ちを楽にさせてあげようと必死になっていたようである。

「……ラヴィス様……当たり前ですがもうお兄様に会うことはできません。それでも……」

「ルミナス、もういいぞ……」

「あっ……」

 そのことに気付いたラヴィスもルミナスを優しく抱き締めた。

「……あの後家族と会わなかったことには後悔しているが、あの時家を飛び出したことには後悔していないからな。いつまでもそのことを気にしたって仕方ないだろう」

「……ラヴィス様……」

「……さ、この話はおしまいにしよう」

 そう言ったラヴィスの表情はどことなく晴れやかであった。

「はい、そうですね……」

「……そうだ」

「はい……?」

「……この話はこの部屋の外ではしないでくれよ?」

「……はい、分かりました」

「よし、じゃあコーヒーでも淹れるか……」

 そしてすっかりいつものラヴィスに戻るといつものようにコーヒーカップを手にしルミナスと共に午後の一時を過ごすことにしたのである。



(SSs ラヴィス編 完)


スポンサーサイト

コメント

非公開コメント

プロフィール

ラヴィス

Author:ラヴィス
パソコン使えないくせにブログに手を出した愚か者。
……温かい目で見てもらえるとうれしいです。

毎週月曜に大小の違いはあれど更新中です。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
来客者数
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。