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ブログ開設4周年記念特別SS SSs(ショートストーリーズ) ルミナス編 ~再会~


「…………」

「……ルミナスさん、少々宜しいですか?」

「……エリミーヌ様……?」

 雲海が広がる天上の世界――天界。その中心天界宮殿の執務室に天界筆頭聖女と呼ばれる天界女王ルミナスの姿があった。

「……執務室でお仕事だなんて……」

「……先程ラヴィス様から神界を通じて客人が来ると聞かされましたので……」

「……客人……?」

「はい……ですので私もできれば天界宮殿でお仕事をしていて欲しいと……」

 本来天界女王であるルミナスはSkyBlueの仕事を優先するように配慮がされており、宮殿を空けていることが多い。その留守を預かっているのが前筆頭聖女であり、ルミナスを聖女に推薦し自らは第3聖女となったエリミーヌである。長らく筆頭聖女の位に就き、天界の管理運営の経験も豊富なエリミーヌによりルミナスは安心して外での活動に従事できるのであった。そのためルミナスが天界宮殿の執務室にいるようなことは異例中の異例であった。

「……神界から監査役の方が来る……ということなのでしょうか?」

「……少なくとも私には客人が来るとの連絡は来ていません……」

「……抜き打ちということでしょうか……?」

「でしたらこれまでもそういったことがあってもよかったはずです……今回急にそんな話が持ち上がるのは不自然だと思うのですが……」

 あまりに急の出来事にルミナスだけでなくエリミーヌも困惑気味であった。ラヴィスから与えられた情報もただ単に客人が来るとだけの簡単なものであり、それ以降ラヴィスとは全く連絡が取れなくなっていた。

「……とりあえず何があるか分かりません……私も警戒しておきます……」

「お願いします……」

「ルミナス様!」

 そこに天使が何やら慌てた様子で入り込んできた。

「どうなさいました?」

「それが……その……」

「落ち着いて下さい。客人ですか?」

 すぐにエリミーヌがなだめるような口調でそう言った。

「は……はい!それが……その……」

「人数は……?」

「2人です!……お1人はローブ姿で分からなかったのですが……もう1人は……」

「もう1人は……?」

「……精霊界女王ネレイス様です」

「え……?」

 意外な名前が出てきたことに思わずルミナスとエリミーヌは顔を見合わせてしまった。

「……分かりました。精霊界女王が来訪なさったのでしたら私がお出迎えしないといけませんね……」

「私も行きましょう……精霊界女王には大変お世話になってますから私からも直接お礼を言いたいですしね」

 2人はそう言っていたがお互いに本心は別のところにある様子だった。

「では……こちらです」

 そんな2人の変わった様子に気づいていない天使は2人を客人の元へと案内した。



「……急な来訪をどうかお許し下さい」

「……そうですね……ネレイスさんが精霊界女王として天界宮殿へとやってくるとは想像していませんでした……」

 天使に案内された宮殿の前には確かにネレイスの姿があった。その隣にはすっぽりと頭をフードで覆い、体もローブで包まれた謎の客人が立っていた。

「…………」

 エリミーヌはその客人を大いに警戒していた。精霊界女王ネレイスは聡明で精霊たちからの信頼も厚い期待の女王であり、ルミナスとも関係の深い存在でもあることから妙なことは考えていないと思っていた。しかし万一のことを考えて目を光らせているあたりは天界を長らく支えてきた知恵者であることを窺わせていた。

「……で、本日はどういったご用でしょうか?」

「……ちょっとした挨拶に来ました」

「挨拶……ですか?」

 ここでルミナスはローブの客人の方へと目線を移した。ネレイスが連れてくる客人となれば当然精霊の類いであろうことは容易に想像がつく。しかしそれならばここまで姿を隠して会わせようとするのはどことなく不自然である。さらにネレイスの隣に控えている客人からはただならぬ気配を発しているのも気になるところであった。当然エリミーヌもこのことに気付いているはずである。

「……この度精霊界に新しい役職を設けることになりました」

「……役職……天界との交流に関わるものですか?」

「……いえ……天界との交流に直接関わるものではありません」

「……では一体……?」

「……やっぱり見て頂いた方が早いかもしれませんね」

 ますます疑問の深まる展開になったことでネレイスも流石に単刀直入に切り込んでくれるようになったようであった。そして客人の被っていたフードをそっと下ろしてあげた。

「…………!!」

「……え……そん……な……」

 その瞬間にエリミーヌもルミナスも驚きを隠せなくなった。フードの下からは透明感のある蒼い髪をした女性が姿を現した。そしてその顔はエリミーヌにとってもルミナスにとっても良く知ったものであった。

「……精霊界女王……この方はもしや……」

「……この度精霊界の新役職……八理を守護する新たな存在……八理竜の1体……雪姫竜に任命させて頂いた……」

「……マーキュリー……私の……娘です」

「……お久しぶりです……お母様……」

 ルミナスの面影が見られる大人びた印象の顔は依然冷静さを保とうとしていたが、久しぶりに母と会う事の出来た喜びがやはり隠しきれないようであった。

「…………立派に……なりましたね」

「……はい……もう……何百年も経っているのですから……」

「……そんなに……ですか……」

 喜びの様子を見せる娘に対して母であるルミナスは未だに驚きと戸惑いが入り混じった複雑な表情を見せていた。

「……ひとまず場所を移しましょう」

「はい……」

 それを見たネレイスがすかさず場所の移動を提案した。この時には既に何故ネレイスがマーキュリーを極力表に見せないようにしてきた理由がなんとなく分かっていた。マーキュリーのことは天界内部では伏せられていた事実であった為に、ここまでルミナスに似た女性が天界内の多くの天使達に知られるのはまずいと思ったネレイスの配慮なのだろう。ネレイスは再びマーキュリーにフードをかぶせると先導するエリミーヌに続いて宮殿内へと入っていった。



「…………」

「……お母様……」

 貴賓室に通されたマーキュリーはフードを外しローブも脱いでいた。ルミナス譲りの美しい髪は先程までは一部しか見えていなかったが、全てを見せたマーキュリーの髪は床を引きずるほど長いものであった。体は細く、腕も脚もルミナスより華奢であり一見するとあまり丈夫そうな子には見えないのだが、ネレイスが紹介した通り彼女はネレイスによって精霊界の新しい役職、八理竜の雪姫竜に任命された氷竜なのであった。本来であれば人間同士だったラヴィスとルミナスとの間に竜の娘が産まれることはないはずだが竜の血に侵食されていたルミナスの娘であれば不思議ではないことである。

「……お母様……やっぱり……まだ竜はダメですか……?」

「……ごめんなさい……私の娘だというのに……」

「……無理もないですよね……お母様の竜の血は望んだものではなかったのですから……」

 ルミナスが竜の血に侵されたのはラヴィスとルミナスが出会い将軍たちと合流する前、仕事の依頼で祭壇に巣くう竜の討伐をしていたときのことだった。ラヴィスが仕留めそこなった竜の一撃からラヴィスを庇った際に負った深手の傷から竜の血が入り込んだことによって始まってしまった。それ以来ルミナスは度重なる竜化の症状を引き起こすなど苦しめられており、竜の気配を感じると体が思うように動かなくなってしまうといった症状が出るようになってしまったのである。
 一方でそのルミナスから生まれた双子の妹、マーキュリーは産まれながらにしてルミナスの竜の血を濃く受け継いでしまった影響で自然の声が聞こえたりと特別な力を持っていた。成長を続けるマーキュリーはやがて自らの竜の力に気付き出し、ちょうどそのころ乱獲によって氷竜が数を減らしているという話を聞いたマーキュリーは自らの竜の力をその氷竜たちのために使ってあげたいと考えるようになったのである。その努力が実り、今回ネレイスによって八理竜へと選ばれたのである。

「……本当に立派になりましたね……」

「……はい……」

「ところで……何故ネレイスさんがマーキュリーの居場所を……?」

「……まぁ……精霊のネットワークを使えば……ね。それに氷竜の住処はある程度掴めていたし……」

「……ラヴィス様から連絡があったのですが……」

「……お父様にも会いました……何だか嬉しそうでした」

 ラヴィスとの再会を思い返しマーキュリーが嬉しそうな表情を見せた。それを見たルミナスが少し申し訳なさそうな顔をしていた。

「……お母様は……嬉しくないのですか?」

「え……?そんなことありませんよ……?」

「……でも……これからは会おうと思えばいつでも会えるのですから……」

「…………」

 娘との再会は当然喜んで然るべきなのだが、素直に喜べないのがルミナスにとってとても歯がゆかった。

「……ネレイス様……ひとまず今日はこれで失礼しましょう」

「……いいの?」

「……急に来る私も悪かったんだと思います……今度は……お父様とお母様揃って会いたいですし……」

 そう言って再びマーキュリーはフードを被りローブに身を包んだ。先程まで強く感じた竜の気配が一瞬にして薄らいでいったあたりこれもルミナスや天界の人々に配慮したものだったのだろう。

「…………」

「それでは……また……」

 最後にマーキュリーはルミナスの方を向いた。しかしルミナスが視線を合わせてくれることはなかった。そのままマーキュリーはネレイスと共に部屋を出て行った。

「…………」

「……よかったのですか?」

 部屋に残されたルミナスにエリミーヌがそう切り出した。

「……あまりに突然で……気持ちの整理ができなかっただけ……です」

「……そうですか……」

「……エリミーヌ……すみません、少し1人にさせて頂けますか?」

「畏まりました……ごゆっくり……」

 ルミナスの求めに応じエリミーヌはそっと部屋を後にしていった。

「…………ごめんなさい……マーキュリー……私は……」

 久しぶりに再会できたと言うのに抱きしめてあげることはおろかろくに話をすることもできなかった。その後しばらく部屋の中からはルミナスの泣く声が絶えず聞こえたという。


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