スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

ブログ開設4周年記念特別SS SSs(ショートストーリーズ) ネレイス編 ~“世界の調和人”~


「……概ね問題はありませんでした」

「ありがと、ノエル」

 神界宮殿内のかなり奥。神界の者でも普通は立ち入ることを許されていない高機密区域にある病院のような施設にノエルとネレイスの姿があった。無数の機械がつなげられている診療台のような場所に検査着のようなものを身に付けたネレイスが横になっており、つい先ほどまで精密検査のようなものを受けていた。というのもネレイスはノエルによって“創造”された存在であり、ノエルは“創造者”としてネレイスの状態を確認し常に万全の状態で出撃できるようにする責務があるのである。

「……最近は調子がいいようですね……」

「……んー……そうだね~、負の気の呪いも大分落ち着いてきてるみたいだし……」

「……私も安心です……」

 ネレイスは消えない負の気の呪いを抱えたままでありこうして定期的にノエルによって精密検査を受ける必要があったのだが、ここ最近は負の気による症状も落ち着いているようであり、これまで何度かあった深刻な状態にまで陥るようなことはなくなっていた。

「……まぁここのとこいろいろあったしね」

「そうですね……」

 ネレイスは診療台から下りるとその場で検査着を脱いで着替え始めた。見る者を魅了するような華麗で鮮やかな剣さばきが特徴のネレイスだが、その体つきも周囲の視線を集めるくらいに魅惑的なものである。これもネレイスが日々体調管理などを行っているためもあるのだが、ノエルによって体つきのバランスなどを設計されたことによるところが大きいのだろう。

「……ところでこの後はおでかけですか?」

「んー?いやー、今日はゆっくりしてこうかなーって思ってるけど」

「そうでしたか……」

 着替え終わったネレイスはそのまま診療台の上へと腰かけた。精霊界の仕事からSkyBlueの任務まで毎日忙しそうにしているネレイスが今日はゆっくりすると言ったことは非常に珍しいことであり、そしてまたノエルにとても嬉しいことであった。

「たまにはこうやってノエルとおしゃべりするのもいいかなーって。ノエルもたまにはこういう時間欲しいでしょ?」

「はい……」

 親しげに話しかけてくれるネレイスにノエルは安心感と幸福感を感じていた。公の場面ではノエルを様付けで呼ぶネレイスであったが、2人きりの場面ではネレイスはノエルのことを呼び捨てで呼んでいる。ネレイスはノエルが精霊界を安定させるために創り出した存在であったが、それと同時に現状神界の頂点に立つノエルを精神的重圧から解放してくれるような友達とも言える存在として創り出されてもいたのである。そしてその願いにネレイスが応えるような形でノエルの心の支えとなり、時折こうしてノエルとの何気ない会話でノエルの精神的な負担を和らげていたのである。ただノエルも最近はSkyBlue創設者として各地に出向く場面も増え、そこで出会った多くの人々からは気兼ねなく“ノエル”と呼んでもらい話し相手になってくれることも増えたようだが、それでもノエルにとって一番大事な存在はネレイスであることに変わりはないようだった。

「ささ、何の話しよっか?」

「どうしましょうか……」

「……んー……あ、そうだ」

 お互いに話す内容を考えていたようであったが、先に口を開いたのはネレイスだった。

「……これまであまり気にしたことなかったんだけどさ、あたしのフルネームってなんなのかな……?」

「……フルネーム……ですか……」

 ネレイスの素朴な疑問にノエルは少し困惑したような顔をしてみせた。

「……んー、聞くのまずかった?」

「……いえ……誰かに聞かれたのですか?」

「うん、ちょっとね……」

「……そうでしたか……」

 ノエルも事情を知っているからかそれ以上深く詮索する事はなかった。

「……もちろんありますよ……ネレイスさんのフルネーム」

「やっぱりあるんだね……」

「……私が……創ったのですから」

「……ノエル……?」

 ノエルの表情が一瞬にして今にも泣き出しそうなほどになったことにネレイスは動揺していた。ノエルはまだまだ精神的に不安定な部分も多く、あまり負担をかけると過熱状態となって倒れてしまう特有の症状を引き起こすことが多かった。今回もその前触れではないかと考えてしまったネレイスはすぐにお水を準備していた。

「……大丈夫ですよ……」

 しかしノエルは比較的落ち着いた様子でそれを制した。

「……ネレイス……ヴェルタルモニア……」

「……ヴェルタルモニア……?」

「……世界の調和を司る者となって欲しい……私のそういう願いが込められた……」

「ノエル……」

 その言葉でネレイスにはノエルが泣きそうになっていた理由が分かった。込められた名前からもノエルはどういう思いで自分と言う存在を創り出していたのか……そしてその思いの通りに職務を全うしてくれる自分のこと……それを考えれば無理も無い反応である。

「世界の調和人……ってところかぁ……そうだね、あたしに相応しい名前かもね」

「はい……」

「エヘヘ……ありがとノエル」

「……あぅ……」

 ネレイスにお礼を言われてノエルは少し照れくさそうにしていた。

「そうだ、いい機会だしもっと色々聞いておこかな……」

「……こ……答えられるものでお願いしますよ……」

 その後もネレイスとノエルは仲良くおしゃべりを続けたようである。精霊界女王にして世界の安定を司るSkyBlueの頼れる戦い手ネレイス・ヴェルタルモニア。世界の調和人の名を冠したその存在はこの先もその名に恥じない働きぶりを続けてくれることだろう……



(SSs ネレイス編 完)


スポンサーサイト

コメント

非公開コメント

プロフィール

ラヴィス

Author:ラヴィス
パソコン使えないくせにブログに手を出した愚か者。
……温かい目で見てもらえるとうれしいです。

毎週月曜に大小の違いはあれど更新中です。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
来客者数
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。